第63話 運命
メディアスと契約してすぐ、他のみんなも起き始めた。
ベルとミレーユさん以外頭痛が酷いようで、頭を抱えていたので、メディアスが俺に渡してくれた薬と同じものを作ってくれた。
薬のおかげで頭がすっきりしている今のうちに真剣な話をしておこうということになり、全員真面目な体勢をとる。
というのも、ひとつミレーユさんに聞きたいことがあったのだ。
「……それで、妾に聞きたいこととはなんじゃ?」
「俺の故郷のことなんですけど……」
「ほう、故郷とな?」
「はい、通称魔法剣士の里という場所なんですが……知っていますか?」
「……お主はそこの出なのか?」
ミレーユさんはずいっと乗り出して俺にそう尋ねた。
そんな態度に少し動揺してしまうが、首を縦に振り肯定する。
それを見てミレーユさんは目を閉じ、俺に優しく声をかける。
「…………そうか。辛い運命を背負っておるのじゃな」
「…………?」
どういう……ことだ?
そんな俺の疑問を放出する間もなく、ミレーユさんは口を開く。
「その里のことなら知っておる。なにを知りたい?」
「あ、はい……どこに里があるのかを知りたくて……」
「もう送ったのじゃ」
頭に違うものが入ってくるこの感覚……メモリーズシェア……記憶を共有する魔法だ。
ベルに一度使われたことがある。
しかし、いつ魔法を使ったのだろうか?
「じゃが、里に行くのはやめた方がよいぞ」
「それは……なぜですか?」
「……それは、お主が一番分かっているはずじゃが?」
「…………!」
もしかして……ミレーユさんは……俺の故郷が破壊されたことを知っているのか……!?
そんな気がする。
今すぐにその情報が欲しい…………けど……
俺の頭で警戒信号が鳴り響く。
まだ、俺には早いと。
「どうしてもそこに行きたいならば、強くなることじゃな。今言えるのはそれだけじゃ」
「…………はい、分かりました」
ミレーユさんも警告してくれている。
まだ、俺には故郷の謎を解明することはできないようだ。
ここまで話していて、みんなの頭にはハテナが浮かんでいる。
……故郷のことはまだ言いたくないな…………
「……じゃが、備えはいつしても早くはない。次の目的……妾は場所の記憶を見ることの出来る魔道具を手に入れることを勧めるのじゃ」
なんと、そんなものがあるのか。
いつか故郷に行った時にそれがあればなにか手がかりが掴めるかもしれない。
「それはどこにあるんですか?」
「……妾の情報は十数年前で止まっておるが……まだ残っていれば、海の秘宝としてどこかに隠されているはずなのじゃ」
「海の秘宝……ですか」
「うむ。シャイレーツ海の孤島に隠されていると言われておる。知っているのはこれだけじゃ。役に立てなくてすまんな」
「いえ、本当に助かりました。ありがとうございました」
「…………達者でな」
その一言には重々しいなにかが込められていた。
そのなにかの正体は分からないが……悪いものではない……と思う。
俺の聞きたいことはこれで全てなので、お礼を伝え、また旅に出るという話をした。
「また頼ってくださいね! エルさん! エルさんに頼まれたことなら、なんでもします!」
「そんな簡単になんでもするなんて言っちゃ……」
「いいえ、簡単に言ったつもりはありませんよ」
クロイツさんは正座し、頭を下げる。
俺は突然のことに戸惑い、狼狽えることしかできない。
「エルさん、あなたは私の母を救うため、命を賭けてくれました。ならば、次は私がエルさんのために命を賭ける番です」
その言葉とそれに込められた気持ちを感じ取ったので、狼狽える自分を抑えて真っ直ぐ向き合う。
「その時は頼らせてもらいますね、クロイツさん」
「……えぇ、待っていますよ~」
俺とクロイツさんはがっちりと握手をする。
次いでクロイツさんは笑顔でこちらを見る。
ミレーユさんを助けてから、クロイツさんの雰囲気がかなり柔らかくなった気がする。
一緒に戦っている時や道中ではキリッとした感じだったのだけど……
オンオフの切り替えがしっかりしているんだな。
そんなことを考えていると、クロイツさんは少しいたずらっぽい笑みを浮かべてこちらを見る。
「……共に戦った仲です。さん付けはやめませんか~?」
「……そうだな、もどかしいと思っていたところだったからな。これからもよろしく、クロイツ」
「はい、よろしくお願いしますね~、エル」
俺たちは握っている手の力をさらに込め、確かな縁を結んだ。
きっと、この先も共に戦い、助け合うことになるだろう。
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