第57話 薬屋の実力
「……はい?」
クロイツさんは思わずそう聞き返してしまう。
メディアスは唸りながら喋り始める。
「アホやから……いわゆる合理的? っていうのができんのや。やから……うちは目の前におる患者を放っておけへんのや」
「メディアスさん……」
メディアスの気持ちは痛いほど分かる。
俺も……目の前で困っている人を見つけたら行動せずにはいられない。
「クロイツさん……ここはメディアスに治療してもらいませんか? 俺は……メディアスの言ってることがよく分かります。動かずにはいられないんです。……そうだよな? メディアス」
「せや。エル、よぉ分かっとるやん」
メディアスは笑顔でグーサインをする。
なんだか気持ちが通じあったようで嬉しいな。
メディアスとはすぐに打ち解けられそうだ。
俺もメディアスに笑顔でグーサインを返す。
「ただし、約束した通り無理は厳禁だぞ」
「分かっとるって」
「本当かなぁ。メディアス、エルと同じ匂いがするよ」
「うん。ドンと来い無茶。って感じ。」
確かにメディアスにはそういうところはあるかもしれないけど…………
俺は無茶をしているつもりはないな。
「確かにそうかもしれへんな……って、今はおしゃべりタイムやないんやで。クロイツ、あんたのママんところまで案内してや」
「……分かりました、ご案内します。ついてきてください……それと、ありがとうございます」
「お礼を言うんは助けてからや。それまでとっとき」
「……っ……はい」
クロイツさんはまた泣き出してしまいそうになったが、ぐっと堪える。
強い人だな。
クロイツさんは扉に手をかけ、今度はしっかりと開ける。
メディアスは扉が開くなりすぐにクロイツさんの母親が寝ているベッドに近づく。
「おお……? クロイツママ、人間とはちゃうものが入っとるで? うちらと同じような……何かが入っとる」
「それはおそらく……」
クロイツさんは説明した。
母親は精霊族の秘薬で魔女になったこと。
その秘薬のおかげで病にはかからないこと。
何年も起きていないこと。
何百年も生きてきたこと。
「なるほど、精霊族の秘薬でな……確かに、クロイツママは病気とちゃうで」
「え? そうなんですか?」
「うん、これは……呪いみたいなもんや。多分な」
「ちょっと待って。呪いならベルが解呪できるはず。」
「あー、勘違いさせてもた。これは呪いみたいなものであって、呪いとちゃうんや。正確に言い表すことは出来ひんわ。すまんな」
「謝ることじゃない。ひとまず呪いではないことは理解した。……なにかベルたちにサポートできることは?」
「せやね……集中したいから一人にしてほしい、かな?」
「了解。みんな出よう。」
ベルは素早く扉の前に立つ。
メディアス以外の三人もそこに行き、扉を開けた。
クロイツさんは最後に振り返り、涙ぐみながら口を開いた。
「母を……お願いしますっ……!」
「おう、天才薬屋、メディアスちゃんに任しとき!」
「……はい、信じてます」
クロイツさんはそう言い残し、部屋を後にした。
「……ふぅ、やるか」
うちはベルに隠してもらっとった六本の足を出現させる。
両手の指十本、背中の足六本からそれぞれほっそい糸を出し、クロイツママの喉から体内に侵入させる。
合計十六本の糸を操っとるわけやから、ごっつ集中せなあかん。
「……ん?」
早速違和感を発見したわ。
他の場所にもそれぞれ似たようなものが……
そのどれもみな邪悪なもの、っちゅー共通点がある。
うちが操られとった時に感じたものと似とるな。
「……そもそも、誰がうちを操ったんや……?」
いや! 今はそれところちゃうわ!
こっちに集中せな……
「……確かにこれは魔法での治療は厳しいやろな……ベルの言っとった通りや」
この違和感……ウイルスとでも呼ぼか。
このウイルス、なぜかいっちょ前に魔法耐性を持っとる。
目に見えへんほどちまいくせに……精霊族であるベルの魔法を弾くほどに強力な耐性や。
「こんなん、誰がなんのために……」
遊び半分で入れていいようなもんやない。
精霊族の秘薬でなんとかなってるようやけど……普通の人間やったら間違いなく死んどる。
「さて……これをどう治療するかやな……」
ウイルスは今この間も増え続けている。
なんぼ強い薬を飲ませたところでウイルスの処理が間に合わん…………
直接ウイルスを潰すような……そんな手があれば……
「…………せや! 閃いたわ! 体内で薬を作って……それをウイルスにぶつければ……!」
うちの毒なら……うちの持つ全ての種類の毒を使えばこれに対抗する薬を作れるはずや!
それを体内で作って……ウイルスにぶつける……これを繰り返したら体内からウイルスが全て死滅する!
「そうと決まれば……調査と調合や……!」
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あれからどれくらい経ったやろか…………もう……今にもぷっつり糸が切れるみたいに倒れそうやわ……
薬の調合は終わった。
ただ……身体中に広がったウイルスの処理が…………量が……ごっつやばいわ……
せやけど……
「あと……ちょっと……なんや…………」
うちは十六本の糸を器用に操ってウイルスに薬をぶつけ、そこの近くにあるクロイツママの体内にもそれを注入しぃ……身体での治療も促しとる……
それ以外でもなぜかウイルスが死滅していっとるし……
もうじき……
「あと……これだけ……!」
うちは力を振り絞って、最後のウイルスに薬をぶつける。
ウイルスはどんどん小さくなっていき……やがて消えた。
「終わ……った……!」
うちはそのまま床に倒れ込み、意識を投げ出した。
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