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第55話 自己紹介

「そ、そういえば……あんたらの名前も聞いてへんかったよね? 街に着くまで軽い自己紹介でもしよや」

「それでは、私から自己紹介させていただきますね」


クロイツさんはこほんと咳払いをして話し始める。


「私の名前はクロイツ・フェイクです。小さい頃から冒険者をしていて、今ではAランク冒険者です。恥ずかしながら、嵐の魔女と呼ばれています」

「かっこええ二つ名やん! それならあの威力の風魔法も納得やなぁ!」

「ふふ、ありがとうございます」

「それじゃあ次は私!」


メアリスはその場でくるりと回転し、ニコッと笑顔になる。


「私はメアリス・ローザ! 美術館に閉じ込められてたんだけど、エルのおかげで最近やっと外に出られたんだ! あとねあとね……薔薇が大好きなの! この髪飾りはすっごくお気に入り!」

「確かにその髪飾り、ごっつ可愛ええなぁ。それにしてもでは美術館に閉じ込められてたってどういうことや?」

「私は昔ちょっと色々あって暴れちゃってね……そのせいで閉じ込められてたんだよね……」

「あ、す、すまん……すごい軽々しく聞いてもうた……」

「ううん! いいの! 家族も一緒だったし、寂しくなかったから大丈夫! それに……私は絵画だから美術館は心地よかったよ?」

「ほむほむなるほ…………へ!? 今メアリス絵画っちゅーたよな!?」

「ちゅーたよ?」

「め、メアリスさんが……人間ではないと思っていましたが、まさか絵画とは……」


二人はいきなりのカミングアウトに動揺を隠せない。

カミングアウトした本人はいたっていつも通りだ。


その表情から見るに、口を滑らしたとかではない。

二人を信用に値する人物と判断しての告白だろう。


「家族全員の自己紹介をしちゃうとスペリラに着いちゃうから……次はベル!」

「合点承知之助。」


……………………おそらく俺は今なんとも言えない表情をしているだろう。


「ベルはベル。ベル・フローレス。ご存知の通り精霊族。たくさん魔法を使う。以上。」

「いや、あっさりしすぎやろ!?」

「これがベルの自己紹介。えっへん。」

『威張るとこではないのだ……』


そんなあっさりとしたベルらしい自己紹介を終えると、アナがベルの頭の上で胸を張る。

今は先程の鎧姿ではなく、いつも通りのかわいらしい姿だ。


『あー、あー、マイクテストなのだ……よし! 聞こえているのだな?』

「ばっちりやでー」

『オホン! 刮目せよ! わがはいの名はアナ! 誇り高き神獣であり、ベルの親友なのであーるなのだ! 当然この中で一番強いのはわがはむぎゅん』

「調子に乗らない。」


アナがベルの拳でひしゃげる。

かわいそうだが、いつも通りの光景なのでスルーしよう。


「たはは……アナはおもろい子やね」

『なぜ敬語を使わないのだ! わがはいは誇り高きしんじゅげふぅ』

「メディアス。この誇り高き神獣(笑)のことは気にしないで。」

「そうするわ」

『ひ、ひどいのだ……』


アナが涙目になって丸まってしまう。

正直……拗ねた子どもみたいで可愛い。

しかし、そんなことを言ったらまた拗ねてしまいそうなので心の内にしまっておこう。


「最後は俺だな……えーっと……」


俺は頭の中で少し考え、話を始める。


「俺はエル・シュライン。ついこの前までは居候だったんだけど、最近冒険者になったんだ。武器に魔法を付与して戦う『魔法剣士』をしている。これからよろしくな!」

「ふむふむ、エルやな。っちゅうか戦った時から気になってたんやけど……その武器に魔法を付与するって、見たことも聞ぃたこともないで? 魔法剣士なんて言うのも初耳や」

「え? そうなのか?」

「はい、先程まではそれどころじゃなかったので聞けませんでしたが……武器に魔法を付与するなど、聞いた事もありません」

「確かに。なんか一緒に居たら当たり前だったけど。ベルもそんなの知らない。」

「二人とも……?」


Aランク冒険者で、さらに魔法使いであるクロイツさん、そして、数多の魔法を扱うことのできる魔法のエキスパート、精霊族のベルでさえ知らないとは…………

精霊族の知らない魔法なんて、この世にあるのか……?


「うち、ちょっと戦いを見てたんやけど……それでザンティと正面から斬り合いをしとったんはすごかったなぁ。ただの刃物じゃ、今頃ぽっきりや」

「はい、しかも互角に打ち合っていましたし……すごい技ですね」

「そ、そんな……俺なんて……」

「エールっ」

「いてっ」


メアリスが指でピンとデコピンをする。

なにか怒っているのか、頬を膨らませている。


「こういう時は、へへーん! すごいだろ! くらい言わないと!」

「そんなことしたら……図々しくないか?」

「実際すごいんだからいいの! それに、エルはそうやって俺なんて俺なんてって……もっと自信を持ちなよー」

「同意。そもそも原初の種と契約している時点で普通ではない。」

「はい、私から見てもエルさんは異常だと思いますよ。あ、悪い意味ではないですよ?」


うーん……揃ってそう言われると…………

それでも、俺は別に特別じゃないと思うけどなぁ。

原初の種と契約できる人だって……珍しいだろうが別にそれだけじゃないか?


「え? ベルはエルと契約しとるん?」

「ベルだけじゃなくて。メアリスとも。」

「えぇ!? それホンマ!?」

「あ、あぁ……そうだけど……」


急に大きな声を出されたのでびっくりしてしまった。

しかし、なんでそんなに驚くのだろうか?


「魔法に精通してるベルなら知っとるやろ? 複数の者と契約したらどうなるか……」

「うん。知ってる。でも……なんでか分かんないけど。エルなら出来る気がした。」

「……? どういうことだ?」

『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。

毎日投稿してますので、是非また次の日に見に来てください!

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