第54話 新たな仲間
「答えは……ノーだ」
「「「え?」」」
全員の視線がこちらに集まる。
「……せやね、うちみたいな迷惑者なんて、連れてきたないよな……」
「なに言ってるんだ?」
「え? だってあんた断って……」
「連れていくのを断っただけだ。俺はメディアスを連れていくんじゃなくて……仲間として、一緒に、共に冒険したいんだ」
「……たははっ」
メディアスが耐えきれない、という感じで吹き出す。
「うち、疑いが晴れたらいぬんやで?」
「いぬ……?」
「あぁ、帰るってことや」
「……そんなの関係ないだろう? 一時的だとしても、共に冒険する以上は仲間だ」
「私も一時的なメンバーですしね」
「そ、そうなんか……随分仲良さそうやったけどなぁ」
メディアスはコホンと咳払いをして俺に笑みを向ける。
「……うち、人間はごっつ嫌いやけど……あんたなら信用できる気ぃするわ。せやから……」
メディアスは手を差し出し、優しい顔でこちらを見つめる。
「自分らの仲間として……うちと冒険してくれませんか?」
「もちろんだ、これからよろしくな」
俺はメディアスから差し出された手をしっかりと握り、メディアスに笑みを向けた。
「……っ」
メディアスはなぜか顔を赤くして目を逸らしてしまう。
な、なにか悪いことをしてしまっただろうか……?
メディアスに謝ろうとしたその時……
「戦いの音が止んだな……一度様子を見に行こう」
「「「!!」」」
「……急げ」
俺たちはコクリと頷き、扉の方へと走る。
数分走れば……すぐ扉に着くはず。
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「……あ! 扉見つけた!」
「ベルが開ける。ちょいまち。」
しばらく走ると、すぐに扉を見つけられた。
ベルは扉に手を突っ込み、なにかを唱え始める。
しばらくして……
「……開いた。」
扉がぐにゃりと歪み、空中に空間の歪みが出現した。
「私が一番乗りー♪」
「メアリス、危ないからゆっくり……」
そんな感じで無事に全員が扉に入る。
それからしばらく経ち、その場は静けさに包まれた。
……そんな場所の様子を見ている影がひとつ。
「……ふむ、まさかあの毒蜘蛛種がやられるとは……あの薬は強化作用もあったはずなのですが……あっさりとやられてしまいましたね」
黒い影は非常につまらない、という顔をする。
「やはり、素体が弱かったのでしょうか? こうなれば当方が直接…………」
……いえ、ここまでくればそれは自惚れというもの。
当方だけでは彼らに勝つことは難しいでしょう。
ならば……
「再び強い者を堕としますかね。クフフ……クフフフフフフフ」
男は醜悪な笑い声を残し、影にどろりと溶けるように姿を消した。
◇◇◇◇◇
一度精霊族の里に戻った俺たちは、すぐに長に会いに行った。
昆虫族の里に行ってザンティとメディアスと戦っていたこと、そのメディアスは何者かに操られていたこと、ザンティと和解して戻ってきたこと、昆虫族の里が少し大変になっていること、メディアスが一時的に仲間に加わったこと……とにかく、全てを話した。
長はすぐに昆虫族の里へ精霊族を向かわせ、用があると言って奥に消えてしまった。
なので、俺たちは一度スペリラに帰ることにした。
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「そうだ、メディアス……その……六本の足は消すことができるか?」
「え? もぐの?」
「そんなわけあらへんやろ! …………ちゃうよね?」
「……では切除を開始する。」
「ひゃあああああ!!?」
「しないから」
賑やかなのはいいことだが、話が進まないな。
時間はたっぷりあるから普段ならいくらでもふざけてもいいんだけど…………
解決策がないままスペリラに着いてしまえば、メディアスが昆虫族だとバレてしまう。
「それは人間には無い部位だし……背中から足がたくさん生えてたら目立つだろう?」
「なるほどな……せやけどこれを消すんは難しいかなぁ」
「そうか……昆虫族が人間の街に降りてきたとなると騒ぎが起きそうだな……どうしようか……」
「ん。」
ベルがパチンと指を鳴らす。
すると、メディアスの六本の足が消えた。
メディアスは突然のことにびっくりしているのか、背中を触ったり辺りを見ましたりする。
「え? うちの足……もがれた?」
「エルさん……あなたがそんな人だとは思いませんでした…………」
「え!? ちが……」
「エルがもいだ。」
「ちょ!?」
「冗談。ベルが光の羽を消してるのと同じ。それをメディアスに使っただけ。」
「最初からそう言ってくれ……」
「ベルが他の魔法を使うと解除されるから注意。自分の意思で解除することは可能。」
「了解や! おおきに!」
つまりベルは今二つの魔法を行使し続けてているということだろうか?
改めて思うが、やっぱり原初の種はデタラメだな。
「ほんで、今どこに向かってるん?」
「あれ? 言ってなかったか?」
「うちは何も聞いてへんよ?」
「あー……さっきまで慌ただしかったからな」
「私が説明します。実は……──────」
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「────……というわけなんです。引き受けてくれないでしょうか……?」
メディアスはその様子を見てにししっと笑う。
「ええで! うちも助けてもろたし……これであんたの母親助ければうぃんうぃんやな!」
「あ、ありがとうございます……!」
クロイツさんは泣きながら頭を下げる。
メディアスは照れているのか、少しだけ頬を赤らめている。
こんな風に昆虫族と人間が、また交わる日が来るといいな。
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