第49話 突入! 昆虫族の里
「──────ぉゎぁぁぁぁぁぁあああああ!!?」
ドサッ、と俺は上空から地面に叩きつけられる。
「いたた……ここはど────」
「─────ぃゃぁぁぁぁぁぁああああああ!!?」
「ふぎゅ」
「いたた……ここは一体どこでしょ────」
「─────ぃゃっほぉぉぉぉぉぃいい!!」
「ふぎゅ」
「あぐ」
「……あれ? もう終わり? もっと楽しみたかっ───」
「─────…………っと。」
「あれ? ベルは落ちてこなかったの?」
「魔法で飛んだだけ。メアリスは?」
「私? 私は下に柔らかいものがあったおかげで助かったんだー!」
「…………メアリス。それはエルとクロイツ。」
「え?」
メアリスが下を見ると、そこには悶えているクロイツとエルがいた。
「お、降りてください……」
「…………俺からも……頼む……」
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「ふぅ……無事で良かった」
「エルは無事じゃなかった。」
「キュ」
「す、すいません……私もベルさんのように浮くべきでした……」
「私も……ごめんね? 私は飛べないけど……」
「いや……大丈夫です、軽かったので」
「そうですか……? なら良かったです」
実際に二人は軽かったが、落下の衝撃が辛かった。
落下のエネルギーが加わっていたため、ものすごく痛かったが…………俺の身体は至って正常だ。
骨も折れていない。
「……エルが怪我をしていないのは……ベルたちとの契約の影響かも?」
「どういうことだ?」
「長の話を思い出して。」
長の話…………?
……!
なるほど、分かったぞ。
「長は言った。肉体と魔力は密接な関係にあると。つまり……」
「二人の契約で魔力が向上した俺は……怪我をしにくい、ってことか」
「多分。」
ベルとの契約の恩恵のメインは魔法の習得、そして連鎖魔法の習得。
それ以外にも、おまけというべきか、魔力も向上した。
どうりで身体が軽いと思った。
しかし、魔法の威力はメアリスと契約した時と変わっていない。
その理由はベルによると……
『魔力量と魔法の出力は比例しない。ベルとの契約で魔力量が増えても。魔法の出力は向上してない。例えるなら……バケツに入っている水が増えても。それを掬うコップのサイズは変わらない。そんな感じ。分かった?』
とても分かりやすい説明だと思う。
ベルの例えでまとめると、メアリスとの契約ではバケツとコップの両方が大きくなった。
ベルの契約では、バケツのみが大きくなった。
こんなところだろう。
ベルが言うには、バケツが大きくなればなるほど身体能力が上がる……らしい。
なら、何故精霊族の身体能力は低いのだろうか……?
という疑問をベルに聞いてみたが、よく分からないらしい。
…………考えてみても分からない、今はこちらに集中しよう。
「……エル。誰かが戦ってる。」
「…………確かに……戦闘音が聞こえるな」
耳を澄ませると、微かに音が聞こえる。
「行ってみる?」
「……どうしようか…………」
「ここは私に任せてください」
「なにか策があるんですか?」
「えぇ。私の魔法で音を運び、戦っている者たちの会話を聞きましょう」
「そうしたら、どうするの?」
「なにか困っているようであれば……助けましょう」
すごい。
いつ命を狙われるか分からないこの状況で、助けるという選択肢を視野に入れているのか。
まぁ、かく言う俺も……
「賛成です、困っている人……いや、人じゃなくても放っておけませんね」
「私もそれに賛成ー!」
「異論ない。」
皆、同じ考えみたいだ。
困っている人は助けてあげたい。
どんな状況であろうと。
クロイツさんは皆の肯定を見ると、魔法を唱え始める。
「ブリーズ」
クロイツさんが魔法を唱えると、耳に心地よいそよ風が吹く。
少しくすぐったいな。
「────メディアス、一体如何した!? 某は貴殿を傷つけたくなどない!」
「ウグゥゥゥ……ガアァァァァァァ!!」
……勇ましい男の声だ。
なにかと戦っていて……剣で打ち合っているような音。
「ここまで里を破壊し、同胞を傷つける……貴殿の一番嫌いていることではござらぬか!!」
「ガァッ……! グ、グガァァァァァァァァァァァ!!」
暴れている方は明らかに理性がない。
それに……苦しんでいるようだ。
戦っている男の声から推測するに…………暴れている方は操られている可能性が高い。
…………なら……
「……やることは決まっているな」
「そうだね! 行こう!」
「ベルはやるべき事をやる。」
「キュキュキュイキュ!」
「えぇ……助けにいきましょう」
◇◇◇◇◇
「…………!?」
(これは…………感じたことの無い気配………同胞ではござらぬ……いや、それに似た気配も一つ……? ……よしんばや、メディアスを操っている張本人か!? くそっ……メディアスの相手にて手一杯だというのに…………)
「氷刃・連打!」
俺はダガーに氷の魔力を付与し、連続で振る。
ダガーから放たれた氷の斬撃は昆虫族を襲っている紫色の線に着弾する。
「これで一旦……」
「覚悟っ!」
「それは禁止。フローズンシールド。」
目の前に大きな氷の盾が出現。
昆虫族からの攻撃を防いだ。
「某の攻撃を防ぐとは……何奴!?」
「精霊族。あなたを助けに来た。」
「……確かに貴殿は精霊族のようだが……後ろにいる人間と人外はいかが説明する?」
昆虫族は俺とクロイツさん、メアリスを睨みつける。
昆虫族は腕を大きな鎌に変化させ、こちらを切り裂く準備は万端のようだ。
この大きな鎌……確か、昆虫族の一種、蟷螂種だったか。
「これ。分かる?」
「それは……確か長の……」
ベルは頭の魔法陣を浮かせた。
反応的に、蟷螂種の男はこの魔法陣が長のものだと分かるようだ。
これは丸く収まるか……?
と、期待したのだけど……
「よもや、精霊族は我らを裏切りしか!?」
「ガアァァァァッ!!」
「くっ!」
紫の線が上空から振り下ろされる。
そして、丸く収まるか、という期待が叶うことはなさそうだ…………
しかも考えうる中で最悪な取られ方をしてしまった。
一体どうすればいいんだ……!!
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