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故郷を失った少年、最強絵画の少女とともに冒険者をする (打ち切り)  作者: いちかわ
昆虫族の里~恩返しのために~
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第45話 人間なんて

「─────……と、いうわけなんです。昆虫族の里がどこにあるか、教えてくれないでしょうか……?」

「ふーん、なるほどね」


戦いが終わった後、クロイツさんの母親を助けるために薬が必要なこと、その薬を昆虫族に作ってもらうために里に行きたいこと。

全て説明した。


「答えはノー。なんで人間なんかのために昆虫族の居場所を教えなきゃいけないの? 人間には分からないかもしれないけど、昆虫族と精霊族の付き合いはかなり長いの。そんな昆虫族の信用を裏切るようなマネ、できるの思う?」

「それでも……お願いします!」


サラはキツイ言い方をして俺たちを遠ざけようとするが、それでもクロイツさんは頭を下げてお願いする。


「はぁ……だから、なんで人間のためにワタシたちが……精霊族が情報を与えなきゃいけないの?」

「難しいことは分かっています……それでも、お願いします」

「……仮にワタシが里の場所を教えて、精霊族の信用が落ちたら責任とれるの?」

「はい」

「言葉だけならなんとでも言える。覚悟はあるの?」

「はい、母のためなら命を賭けられます」

「へぇ……」


サラはクロイツさんをじっと見つめる。

クロイツさんも、サラをじっと見つめ返す。


「……はぁ、人間ってのはどいつもこいつも自分勝手ね。……長に話を通すだけはしてあげる」

「本当ですか!?」

「ワタシは嘘はつかないよ。人間と違ってね。ただ、期待しない方がいいね」

「……! ありがとうございます! ありがとうございます!」

「ベルもついていく。頑固な長の説得はサラじゃ無理。アナもいくよ。」

「キュ!」


アナとベルはクロイツさんに向けて親指を立てた。

任せろ、ということだろう。

クロイツさんは涙を目に浮かべながら親指を立て返し、三人を見送った。



◇◇◇◇◇



「ザンティ様! 大変です!」


昆虫族は大きな扉を荒々しく開ける。

ザンティと呼ばれた昆虫族がもう少し静かに開けろ、と言う前に、扉を開けた昆虫族の必死さを見てその言葉を引っ込める。


「何ぞ起きた? 話せ」

「は、はい…………ここから離れた場所で、同胞が襲われています」

「なぬ?」


ザンティは眉をピクつかせ、難しい顔をする。


「場所はいずこじゃ」

「魔法の森ゲート付近です」

「ふむ……魔法の森エリアか」


魔法の森エリアされば……メディアスが在る手筈。

メディアスが居れば死者が出ることはござらぬであろう。

なれど、素早く対応せねば怪我人が増える。


「そこならばメディアスが居るはずじゃ。彼女を治療に度せば被害が減る、至急戦える者を派遣しろ」

「それが……その……」

「如何した、狼狽えてばかりにては分からんぞ。落ち着いて話せ」

「は、はい……それが、同胞を襲っているのは……メディアスだと……報告が入っています……」

「……なぬ?」


メディアスが……同胞を襲う?

なにかの聞き間違いであろうか。


「……真か?」

「はい……複数の種から報告が来ていますので、間違いないかと…………」

「……魔法の森エリアはここから近い、防御を固めておけ」

「は、はっ!」

「某が出よう。戦える者はことごとく防衛に使え」

「はっ!」


昆虫族はザンティに一礼し、飛び去っていった。


「……メディアス…………」



◇◇◇◇◇



「────ふむ、話は理解した。その人間には即刻帰るよう言え」

「だめ。」


樹齢何千年というような巨木を利用して作られた広い建物の中、ベルは精霊族の長を説得していた。

長の髪は全て白髪となっているが、若々しい顔立ちである。

しかし同時に、長く生きている者だけが持つ貫禄といものも備わっている。


「ベル、オリヴィアの娘とはいえそれは聞き入れられない」

「エルたちは長が心配しているようなことはしない。」

「なぜそのような事が言える? 人間は簡単に裏切り、自分のことしか考えていない愚かな種族だ。まだ五十年も生きていない貴様が……」

「エルはベルのことを下心なしで助けた。命を救われた。」

「ほう」


これには長も興味を示したのか、表情が変わる。

横にいるサラも驚いた顔でベルのことを見ている。


ベルはこれをチャンスと見て、その時のことを詳しく長に話した。

以前のように良いところで止めることなく、結末まで全て話した。


「…………」

「エルなら信用できる。メアリスもクロイツもそんなことはしない。」

『わがはいもあいつらは信用できるのだ。長が言うようなことにはならないと断言できるのだ』

「…………いいだろう」

「まじ?」

「なんだその奇怪な言葉は…………しかし、一つ条件がある」

「なに?」

「その人間と人外の少女を連れてこい。儂は他人の言葉のみで判断するほど愚かではない」

「長っ! 人間をここに入れるおつもりですか!?」

「なに、オリヴィアの娘とアナがここまで言うのだ……それに、なにか企んでおるならば地獄を見せるだけよ」


サラは長の言葉を聞き、その場は引いた。


「サラ。戻ろ。」

「……分かった」


三人人は長の部屋を退出し、アナとベルは魔法の森に繋がる扉に向かっていった。


「人間……次こそは儂を失望させるなよ?」

『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。

毎日投稿してますので、是非また次の日に見に来てください!

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