第44話 連れ戻される！？
「……本気なの？」
「うん。男に二言はない。」
「ベルは女だろう」
「…………なさい」
「え？」
「そこの人間二人、ワタシと勝負しなさい！ そこの……人間じゃない奴も！」
サラは俺たちに指を指し、真剣な顔になる。
「ベルの仲間だって言うなら、その強さを見せなさい！ もしワタシに負けたら、ベルは里に置いていってもらう！」
「それは……」
「その勝負、受けた」
「うん！ 私たちに勝負を挑んだことを後悔させてあげるよ！」
「お二人とも、本気ですか！？ 相手は原初の種ですよ！？」
「そうですね」
「うん、原初の種だね」
「か、軽いっ！？」
クロイツさんは驚きのあまりズッコケる。
そんな反応をしようと、どんなに反対しようと、俺とメアリスは戦う。
だって、ここで戦わないとサラに認めさせられない。
ベルとのパーティを解消されてしまうかもしれない。
なら、選択肢は当然決まっている。
「俺たちはやりますよ」
「クロイツは臨時パーティみたいなものだし、下がっててもいいよ？」
「……いえ、私もやりましょう。お二人の覚悟を無駄にはできません」
クロイツも杖を構え、戦闘準備バッチリだ。
それを見た俺とメアリスも構える。
「少し揉めてたけど……原初の種であるワタシに億さず構えるその姿、少しは認めてもいいね。けど……ベルは置いてってもらう！ ボルテクスランス！」
サラがこちらに手を向け、そこから雷の槍が放たれる。
全員軽々しくと避けるが、次々と魔法が放たれる。
「大地の刃・残留！」
俺はダガーに土属性を付与し、サラの雷魔法を迎撃する。
その隙にメアリスとクロイツさんが攻め込む。
「いくよーっ！」
「マジックバリア・チェイン・アイスショット！」
サラは防御魔法を展開しつつ、メアリスとクロイツさんに攻撃をしかける。
「ドロウ・インテリア！」
メアリスはソファを出現させ、魔法を全て受け止める。
「くらえっ！」
「なっ！？」
メアリスはソファをサラに向けて投擲。
ソファは勢いを落としながらもサラの魔法を貫通していき、サラに接近する。
「邪魔っ！ カタストロフィ！」
七色の光を放つ魔力弾が一つ放たれ、ソファは爆散する。
「残念♪ 壊しても無駄だよー！」
「影からっ……」
破壊されたソファの後ろから着いてきていたメアリスが不意をつき、パレットナイフを振る。
マジックバリアの切られた箇所は爆発し、紫の魔力波に飲み込まれる。
「ウィンガランス！」
「ショックウェーブ！」
「マジックバリア・チェイン・エレクトリックスパーク！」
メアリスのこじ開けた防御魔法の隙間目掛けて攻撃魔法を打ち込むが、相手は精霊族。
魔法の早さでは勝てない。
俺たちの魔法は全て迎撃、及び防がれた。
「次はこっちから行くよ！ クエイクエッジ！」
地面から岩の柱が次から次へと出現し、俺たちに牙を剥く。
全員余裕を持って躱すことができているが……なにか、違和感が……
「！ しまった！」
俺たちは柱に囲まれ、脱出できなくなってしまった。
サラはこれを狙っていたのか！
「ウォーターアックス・チェイン・サンダーアックス！」
巨大な斧が出現し、振り下ろされる。
このままだと一掃される！
「ここは……カレット！」
「はいはーい！ 出番ね！」
「え、突然人が！？」
メアリスがブローチからカレットを呼び出した。
カレットはメアリスと背中を合わせる。
突然出てきたカレットにクロイツさんは驚きの表情を浮かべているが、今はそれどころではない。
「「タイズストライク・橙色の薔薇」」
そう二人が息を合わせれば、オレンジ色の巨大な薔薇が顕現。
それは花弁を散らせながらサラの魔法を受け止める。
「置き土産にもらっていってね！ ブーゲンビリアのさくらんぼ！」
紫みのある赤色の果実がいくつか出現した。
それらはサラに接近するが……それだけだ。
サラの近くにふよふよ浮いている。
「それじゃ、私は帰るねー！ がんばって！」
カレットはそう残し、メアリスのブローチに吸い込まれていった。
クロイツさんもサラも驚いていて動きが止まっている。
卑怯かもしれないが……今がチャンスだ。
「業火の剣・残留！」
ダガーに火属性を付与し、サラに切りかかる。
俺が動き出すとサラは正気に戻り、迎撃の準備をする。
「させないよ！ グラヴィティウォール！」
サラが魔法の名を叫ぶ。
…………しかし、辺りに変化は見られない。
「え！？ なんで魔法が発動しないの！？」
「よく分からないが……チャンスだな」
「っ！！」
俺は全速力でサラを追いかける。
サラも全力で逃げるが、精霊族の運動能力は一般人並。
追いつけないわけが無い。
「う……やっぱり魔法が発動しない……となると……これのせいね。はぁっ！」
「うっ」
サラは一気に魔力を放出し、カレットの出した魔力の果実を破壊した。
「これで魔法が……」
「発動出来ると……」
「思っているのですか？」
いつの間にか接近していたメアリスとクロイツさんが構える。
「サーロテンペスト！」
「串刺しフォーク！」
全てを飲み込む嵐が、貫かんとするフォークがサラを襲う。
俺はそれらに誘導するように切り込んでいく。
「マジックバリア・チェイン・ディスペルマジック！」
「くぅ！」
「なっ、私の魔法が……」
俺の刃を防ぎつつ、妨害魔法でクロイツさんの魔法を消した。
「えっ！？ どうして……」
しかし、メアリスの攻撃は消えない。
地面から突き出るフォークはマジックバリアを突き抜け、サラに突き刺さる……
「マジックバリア・チェイン・マジックバリア。」
ことはなく、ベルの作り出した二重の防御魔法で防がれた。
「あれが当たったらサラは死亡。よってエルたちの勝利。」
「そんな！ ワタシはまだ……」
「往生際が悪い。それとも。この攻撃をくらってみる？」
ベルはメアリスの攻撃を受け止めながら言う。
「う……ワタシの負けでいいよ…………」
「はい。エルたちの勝利。ぶい。」
「やったー！」
「ふぅ、なんとか勝てたな……」
「お二人ともお強いですね……私も鍛えてきたつもりなんですが、まだまだみたいです」
「俺なんてまだまだですよ。クロイツさんの大規模魔法はすごかったですね」
「ありがとうございます。しかし、一番すごいのは……」
「？」
「メアリスさんですね」
「一番とか、そんなの関係ないよ！ 勝ちは勝ち！」
俺たちはなんとかサラに勝利することができた。
これで、ベルが連れ戻されることはなくなった。
あとは、昆虫族の情報だが……教えてくれるだろうか？
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