第43話 洗脳?
「それで、勢いで魔法の森まで来たけど……」
「結局どうしようか?」
「「「うーん…………」」」
「キュ!」
アナが小さな手を挙げる。
なにか案があるのだろうか?
「キュキュ……キュ!」
「ベルの拡声魔法でわがはいの声を森中に届け、昆虫族に反応させるのはどうなのだ? だって。ちなみにベルは反対。」
「キュ!?」
「俺も反対だな」
「うん、私も」
「ギュ……」
「そうですか……? 今の頼りはアナさんですし、実行しても良いと思いますが……」
「あー……そうだな……」
俺たちが反対しているのはなぜか。
この森に魔族が居たからだ。
他の魔族が潜んでいた場合、その魔族まで呼び寄せてしまいかねない。
もしくは、こちらを警戒して潜伏し、奇襲を仕掛けてくるかもしれない。
この前の魔族レベルならメアリスとベルがいる時点で負けることはほぼないと思うのだけど……それ以上の魔族が潜んでいる可能性もある。
これをクロイツさんに言ってもよいものだろうか……
……そもそも、なぜ魔族が居たんだろうか。
そこも気になることではあるが、今はこちらに集中しよう。
ベルもメアリスもこちらに任せる、という感じで視線を向けてくれている。
「……実は、この森には魔族がいたんです。」
「はい……? 魔族……ですか!?」
「うん、弱かったけどね」
「ベルが怪我したのはそいつのせい。」
「それは……魔族が人間の街の近くに出現したということは……魔王の復活…………?」
「その可能性もありますね。それもあって、アナの作戦は反対です」
「そういうことなら……そうですね、私も反対です」
「キュウ~……」
「次がある。発言はいいこと。」
ベルが落ち込んでしっぽが沈むアナを慰めながら撫でる。
……本当に神獣なのだろうか…………?
(最近わがはいの威厳がめちゃめちゃ損なわれてる気がするのだ……)
「……仕方ない。ベルが一肌脱ぐ。」
「お、作戦あり?」
「ありありのあり。精霊族は昆虫族と交流がある。精霊族の里に行って昆虫族の里の行き方を教えてもらう。」
「おー! なんか良さそう!」
「……それ、大丈夫なのか?」
「なにが?」
「精霊族って、人間を嫌っていますよね……? しかも、かなり酷い縁の断ち方をしてますし……」
「そんな精霊族がクロイツさん……人間のために動くとは思えないけど…………」
「一肌脱ぐと言った。ベルがなんとかする。」
精霊族と人間には深い溝がある。
大昔の話とはいえ、精霊族はまだ人間を嫌っているだろう。
全く、大昔の人間たちはなんてことをしでかしてくれたんだ…………
「……分かった、ベルに任せるよ」
「ありがとう。」
そんな事情があっても、ベルが……仲間がなんとかすると言っているのだ。
なら、それを信じるのもまた仲間の役目。
「エルさんがそう言うのであれば……ベルさんにお任せします」
「うん。任せて。」
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精霊族の里は魔法の扉で繋がっており、各地にそれがあるらしい。
魔法の扉は精霊族にしか開けられないらしいので、人間が見つけても意味は無いらしい。
「ん……」
突然ベルが立ち止まり、その場に静止する。
なにかあったのだろうか?
「サラ。出てきて?」
「カタストロフィ!」
「マジックバリア。」
突然どこからか魔法の攻撃が仕掛けられた。
しかし、ベルの防御魔法によってそれは防がれる。
「なんでいきなり攻撃する?」
「……そこの人間ども!!」
姿の見えない者はベルの言葉をスルーし、俺とクロイツさんに向けて怒気の含んだ声を放つ。
「ベルを洗脳したのね!? 今すぐ洗脳を解除しなさい!! 痛い目に遭いたくなかったらね!」
「えーっと……俺たちは洗脳なんてしてないぞ?」
「そんな嘘をつくなんて……やっぱり人間は愚かね! 早くベルを解放しなさい! フラッシュインパクト!」
頭上に大きな魔法陣が出現し、そこから大量の魔力が叩きつけられる。
「全部、お返しするよ」
メアリスは手のひらを上に向け、薔薇の刻まれた魔法陣を作り出す。
何者かの魔法はメアリスの魔法陣にぶつかる……が、全て受け止められた。
魔法を全て受け止めると……
「散って!」
「ううっ!」
魔法陣から先程の魔法が周囲に飛び散る。
ただ、その威力はかなり抑えられているようだ。
「……そこっ!」
「ひゃっ!?」
メアリスは魔法が衝突したことによる僅かな空間の歪みを見逃さず、そこに向かって突撃する。
「隠れてないで、出てきてよっ!」
「ちょ、やめっ」
メアリスは虚空に向かってなにかを引き剥がすような動作をした。
すると、そこには……
「やっぱり……サラだ。久しぶりー。」
「そんな言葉に騙されないよ! 魔法が解除されたからって、ワタシは負けてないんだから! イリュージョン……」
「イリュージョンアロー。」
「ちょ、ベル!?」
ベルは魔力の矢を大量に生み出し、サラと呼ばれた精霊族に向ける。
「くっ……やっぱり洗脳されてたのね! 人間、覚悟しなさいっ!!」
「あぁもうっ……ブリザードバレット!」
「ウィンドカッター!」
俺とクロイツさんはサラに向けられた魔法を迎撃する。
正直、隙だらけでサラ本人に攻撃し放題だ。
だが、俺たちはそれをせずにただ魔法を迎撃した。
「…………?」
彼女が怪訝な表情を浮かべる。
俺たちがサラへの攻撃を防いだのが余程不思議だったのだろう。
「これで分かった?」
「はっ、これはワタシを油断させる罠で……」
「しつこい。アナ。」
「キュウ……イッ!」
「ひゃん!?」
ベルの頭からアナが飛び出し、サラの頬にビンタした。
結構痛そうだ。
「あ、アナ様!?」
『わがはいとベルは洗脳などされていないのだ』
「うん。その通り。」
「え……? じゃあ、そこの人間どもは……?」
「ベルたちの仲間。自分の意思でこの二人と行動している。」
『うむなのだ』
「人間が……仲間……?」
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