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故郷を失った少年、最強絵画の少女とともに冒険者をする (打ち切り)  作者: いちかわ
昆虫族の里~恩返しのために~
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第41話 恩返し

「この方たちの実力は私が保証します。決して代行はしていないと胸を張って言えますよ」

「クロイツさんがそういうのであれば……」


喫茶店を後にした俺たちは魔石の報酬を貰うため、冒険者ギルドに来ていた。

クロイツさんは俺たちが疑われることを想定し、潔白を証明するためについてきてくれたのだ。

クロイツさんはなんとAランク冒険者であり、二つ名も持っている。

そんなクロイツさんが実力を保証すると言えば、疑いは意外と簡単に晴れた。

クロイツさんには本当に頭が上がらない…………

どうにかして恩を返せないだろうか。



--------------------



「お世話になりっぱなしで……本当にありがとうございます!」

「いえいえ、困った時はお互い様ですから」

「困ったことがあったらなんでも言ってください。ここまでされてなにもしないというのは流石に……」

「…………では、その時は頼らせていただきます」


…………?

一瞬クロイツさんが迷うような、悲しそうな表情を浮かべた気がした。

あまりに一瞬だったので、確かではない。


「……もしかして、今がその時ではないんですか?」

「……え?」


クロイツさんはとても驚いた表情を浮かべる。


「うまくは言えないんですけど……なんか、そんな気がして」

「…………」

「本当に困っているのであれば、俺たちがなんとかしてみせます」

「うん! 貰いっぱなしっていうのは……なんだかムズムズするし!」

「ベルたちは強い。危険なことでも構わない。」


クロイツさんは俺たちの言葉を聞き、震える。

そしてしばらく葛藤して、クロイツさんは口を開いてこう言った。


「……あのっ! …………私の母を、助けてくれませんか!?」


俺たちは目を合わせ、にかっと笑う。


「「「俺たちに任せてください!(私たちに任せて!)(ベルたちに任せて。)」」」


クロイツさんは目にいっぱいの涙を浮かべ、こちらを見る。


「ありがとう……ございます……!!」



--------------------



クロイツさんが落ち着くのを待ち、一度話し合うために宿屋に移動した。


「それで……母を助けて、っていうのは……」

「はい、詳しいことを説明しますね」


クロイツさんはコホン、と咳払いをして話し始める。


「私の母はとある病気にかかっていて……もう十年間目覚めていません」

「十年間……!?」

「私の母は『魔女』なので、病気にかかっても問題ないはずなんですが……」

「目覚めない……と」

「はい」

「エル、魔女ってなに? 魔法使いと違うの?」


メアリスがこちらを見てそう尋ねる。

確かに、ずっと美術館に居たメアリスにはよく分からないだろう。


「そうだな……端的に言えば、魔女は老いないんだ」

「老いない?」

「本来なら、人間には寿命が尽きれば死んでしまうだろう? 時間が経てば、いつしか人間は例外なく死んでしまう……だが、魔女は別だ。特別な魔法薬を使って、寿命を止めているんだ」

「つまり、魔法使いは死ぬけど、魔女は死なないってこと?」

「少し違うな。正確に言うと……魔女は寿()()()()死なないんだ」

「……! あー! そういうことね! 寿命を止めているだけで、魔物に殺されたりはしちゃうんだ!」

「そうだ。よく分かったな」

「えへへ~」


俺はメアリスの頭を撫でる。


「……あれ?」

「どうした?」

「魔女は寿命を止めているところ以外、人間と同じなんだよね?」

「あぁ、そうだな」

「なら、病気にかかったら人間同様危ないんじゃないの? さっきのクロイツの説明だと、魔女だから病気にかかっても問題ないって……」

「それは母が特別だから、っていうのもありますね」

「というと?」

「母は、とある精霊族からもらった秘薬で魔女になったのです。その秘薬のおかげで、病気になることはなかったんです」

「精霊族から?」

「ベルたちが人間と関係を断ったのは何百年も前」

「そうなんですか……母から詳しい歳は聞いていませんでしたが……かなり長い時を生きてきたようですね」


魔女というのはそんなに長生きするものなのか……。

寿命を止めているとはいえ、薬の効果が切れればそこで終了。

止めていた寿命が一気に押し寄せ、死んでしまう。

歴史上では、三百年生きていたのが最長らしい。


「……ベルならなんとかできる。かも。」

「ほ、本当ですかっ!?」

「その魔女さんが飲んだ秘薬を作ったのは誰?」

「…………! せ、精霊族……!」

「ベルも精霊族。クロイツの母上。救ってみせる。」

「お願いします……!」


確かにベルも精霊族だ。

ベルの魔法ならば、クロイツさんの母親を救うことも可能かもしれない。

そうと決まれば、早速俺たちはクロイツさんの母親がいる家に向かう。



--------------------



「どうぞ、上がってください」

「ひ、広い……」


外観はそうでもなかったのだけど、中に入ってみれば…………


「うわぁ……! 走り回れそうなくらい広いよ!」

「二階もある。そして……自然豊か。すごくいい。」

「ありがとうございます。母の部屋はこちらです」


そうだそうだ、家を見にきたわけじゃない。

クロイツさんの母親を助けに来たのだ。

俺たちはクロイツさんに案内され、一つの部屋に入る。


「この人が……」

「魔女さん?」

「なんていうか……若いな」


何百年も生きているというから、こう……老婆の様なものを想像していたのだけど…………すごく若い見た目だ。

メアリスよりも、ベルよりも若い。

……ここまで来ると、幼いの方が正しいかもしれない。


「母は普段の魔力消費を抑えるために小さくなっているんですよ」

「じゃあ実際は怪しげな鍋をかき混ぜながら腰を曲げてイッヒッヒって言ってるんだ!」

「メアリス。古い。」

「んなっ!?」


メアリスには悪いが……俺も同じ考えを抱いた。

メアリスはこちらに助けを求めるように視線を向けるが、気づかないフリをする。

……ごめん、これは擁護できない…………


「早速検査を始める。メス。」

「ないよ」

「おふざけは控える。……それじゃあ。ほんとに始める。」


メアリスはクロイツさんの母親に近づき、手をかざす。

ふわふわと魔力の粒子が浮かび上がり、暗い部屋が明るくなる。


しばらくベルがそうしていると……表情ひとつ変わっていないが、困っていそうな感じが伝わってくる。


「……むぅ。」

「なにか分かりましたか……?」


恐る恐る、というかんじでクロイツさんはベルに尋ねる。


「これは……良くない。邪悪なものが邪魔する。」

「そ、そんな……」

「べ、ベル……そんな不安になるようなことは……」

「嘘をつくわけにはいかない。本当のことを言わないと失礼。」

「……はい、ベルさんの言う通りです。はっきりお願いします。」


クロイツさんの目には、確固たる覚悟が宿っていた。


「……結論から言う。ベルに治すのは不可能。」

「……」

「でも。治せる者は居る。」

「…………!」


クロイツさんの顔がパァァっと輝き、ベルの方を見る。


「だよね? アナ。」

「キュイ!」

「なんて言ってるんだ?」

「治療魔法による魔力的干渉で治すことは不可能なのだ。自身の身体による免疫で治すしかないのだ。って言ってる。」


そんなにのだのだ言ってるのか…………


「それなら、どうしたら……?」


クロイツさんが我慢できないという感じでベルに詰め寄る。


「キュキュキュ! キュイー。」

「薬による治療……毒を操ることに長けた者に頼るのだ。昆虫族の毒蜘蛛種(ポイズンスパイダー)ならばこれに対抗する薬が作れるかもしれないのだ。って言ってる。」

『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。

毎日投稿してますので、是非また次の日に見に来てください!

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