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故郷を失った少年、最強絵画の少女とともに冒険者をする (打ち切り)  作者: いちかわ
昆虫族の里~恩返しのために~
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第40話 初めての冒険者友達

「なんでこんなことに……」

「エルもちゃんと確認すべきだった。」

「た、確かに……元はといえば全て俺が悪いのでは…………」


誤って突然変異種とやらの魔石を提出してしまい、騒ぎがギルド中に広まってしまった。

メアリスが人間でないことも、ベルが精霊族だということもバレたくなかったので、目立つのは避けようと思っていたのに……


「おいおい、こんな弱そうなやつらが突然変異種のラフレシャーラを倒せるわけないだろ? 代行でもしてもらったんじゃねぇか?」

「そうね、こんな弱そうな子たちがそんなことができるとは思えないわ」

「……エル。これって魔法の実験台?」

「今は我慢だ、耐えてくれ」

「……こんなやつらよりエルの方が何倍も強いのに……」


二人とも少なからず怒りを覚えているようだが、我慢してくれている。

しかし……代行の疑いがかけられているのは面倒だ。

一番手っ取り早いのはメアリスとベルの強さを見せつけることだけど……。



『ほらほら、このおっきなキャンディ、すっごく甘くて美味しいよ!』



『奥義。ミラクルウルトラハイパーサディスティックショット。』



そんなことをすれば、あんなに楽しそうだった二人が簡単に外に出れなくなってしまうかもしれない……。

ここは……


「俺が全部倒したんですよ」

「「え?」」


俺の言葉に驚いたのか、メアリスとベルはこちらを見る。


「ぷ、あっはははははははははははははは!!」


すると、一人の冒険者が大笑い。

周りの冒険者もそれにつられるように笑い始めた。


「おもしれぇこというじゃねぇの……それが本当なら、俺なんて楽勝だよなぁ?」


初めに大笑いした冒険者が挑発的な態度をとる。


「……ちょっと、エル? どういうつもりなの?」

「……説明を求める。」

「……こうでもしないと落ち着かないだろう。それに……」

「……なるほど。理解した。」

「……え?」

「……あ、私も分かっちゃった!」


メアリスはニコニコしてこちらを見つめ、ウィンクする。


「……私たちのためでしょ? 今はエルに任せるから」

「……うん。任せる。」

「……ありがとう」

「おい! いつまで無視してんだよ!」


考えすぎたりメアリスたちと話したりして冒険者の方を放置しすぎてしまった。

俺は慌ててそちらの対応をしようとしていると、突然女性の冒険者が割って入る。


「まぁまぁ、落ち着いてください」

「あ、あなたは……!」

「ふふ、お久しぶりですね」


どこか見覚えがあると思ったら……スペリラを訪れた時にベルに応急処置をしてくれた魔法使いだ。


「あんた……もしかして、あ、嵐の魔女か!?」

「そうですよ~。この方を少し借りてもいいですか?」

「あ、あぁ……わかった」


男は大人しく引き下がり、魔法使いは俺の受付をしていた受付嬢に話しかける。


「一度この方と外にでてもよろしいですか?」

「か、構いませんが……報酬をお渡しするので早めに戻って頂けると助かります」

「分かりました。では、行きましょうか」

「あ、はい」


魔法使いは俺に手招きをし、一度共に冒険者ギルドを出た。


「立ち話もなんですし、喫茶店でも行きませんか?」

「喫茶店!? エル、行こう!」

「分かった、それじゃあ行こうか」

「やったー!」

「楽しみ。」

「オススメのパンケーキがあるんですよ~。みなさんも気に入ると思います」

「「ぱ、パンケーキ……! (パンケーキ……。)」」


二人は目を輝かせ、魔法使いについていく。

二人とも……悪い人に簡単に騙されそうだな…………



--------------------



「キュ~!」

「ん~~!! 甘くて美味しい!!」

「ふわ。ふわ。非常に美味。」

「うふふ、お口にあったようでよかったです」


魔法使いはメアリスとベルをニコニコとした顔で眺めながらパンケーキを切り分け、マイペースに食べ進める。


「あの、ギルドでのこと、ありがとうございました」

「いえいえ、当然のことをしたまでです。しかし、魔法障壁を打ち破って来た時は驚きましたよ。えーっと……」

「あ、俺はエルです」

「私はクロイツです~」

「ギルドでのことだけじゃなくて、ベルのことも助けてくれて……本当にありがとうございます」

(なんのことだろう。口の中なくなったら聞こ。美味。)

「私は困った人を助けるために魔法を覚えたので」


クロイツはベルの方を見て優しい笑顔を向ける。


「こんなに美味しそうにパンケーキを食べられるようになって、よかったですね」

「エル。どういうこと?」

「クロイツさんは俺がベルをスペリラに運んだ時、一番に治療を申し出てくれた上、治療院まで案内してくれたんだよ」

「なるほど。ありがとう。」

「ふふ、どういたしまして」

「あの時は大変だったよねー」

「そうだな、本当に色々あった」


ベルを助けるために魔法障壁を壊して、魔物の襲撃があって、有罪になりかけて……本当に大変だった。


「あの時のおふたりの活躍は凄まじかったですね~。私が食事にお誘いしたのは、そのことで話があるからです」

「これで恩を返せるとは思っていませんが、話せることは全て話します」

「それでは単刀直入にお聞きしますが……そちらのお嬢さんは何者ですか?」


クロイツは今までのふわっとした雰囲気から一転、厳しい視線をメアリスの方に向ける。

……どうしよう。

流石に素直に話すわけにはいかないし……

と、そんなことを考えていると、メアリスはフォークとナイフをその場に置き、ハンカチで口を拭いてからクロイツを見る。


「……人間ではないね」

「メアリス!?」

「大丈夫。多分この人なら広めるようなことはしないよ」


メアリスの目は、いつになく真剣だ。

普段からは考えられないほど真面目オーラが出ている。


「今言えるのはそこまでかな」

「その素直な姿勢、すごく好みです。失礼な質問をしてしまってすいません」


メアリスの言葉を聞くと、クロイツさんの厳しい視線は少し優しいものになる。


「ううん、大丈夫。他に聞きたいことがあったら答えられる範囲で答えるよ」

「それでは、そのお言葉に甘えて。次はお三方に聞きたいのですが、魔物を退けた後、なにがあったのでしょうか? これは単なる好奇心ですので、答えていただかなくても大丈夫ですよ」

「そうですね……どこから話しましょうか……」



--------------------



「へぇ、そんなことが」

「あの、この話は……」

「ふふ、大丈夫ですよ~。ここだけの秘密、ですよね?」

「はい、お願いします」


クロイツさんは俺たちが騎士団に囲まれた後、気になって風魔法で音を運んで盗み聞きをしていたらしい。

そのため、ベルが精霊族ということも知っていれば、俺たちの戦闘も大体見ていたと、自分から話してくれた。


「そんな精密な魔法操作ができるなんて。すごい。」

「精霊族に褒められるなんて、光栄です~」

「…………」

「ベル?」

「なんか。母上に似てる。」

「母親に似てる人なんて、たくさんいますよ~。ただの偶然です」

「……キュ」


その後は普通に雑談し、ゆったりとした時間を過ごした。

冒険者になって初めての冒険者友達。

これからも、他の冒険者と友人になることはあるのかな?

『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。

毎日投稿してますので、是非また次の日に見に来てください!

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