第39話 やらかし
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「……って感じ。」
「いい話……って、一番気になるところで終わらせないでよぉ!!」
あまりにいい所でベルが話を止めてしまったため、メアリスが思わず大声で叫ぶ。
これから人間の女の子が救出できるか……!
という所でちょうど止められたらそうなるだろう。
「その後一体どうなったの!?」
「結論は二人とも知ってるはず。アナが女の子を助けて。エルとメアリスを呼んできてくれた。以上。」
「それはそうなんだけど……むぅぅぅ。やっぱり気になる」
「それにしても、そんな理由があったとはな……ベル、次はそんな事にならないように俺たちが守るからな」
「いいや。ベルがエルを守る。」
「エルを守るのは私だよ!」
二人が変なところで張り合い始めてしまった。
「それは今は置いておくにしても……人間を守るために自分の身を投げ出すなんて、私にはできないかも」
「というか、精霊族は人間を嫌っているって聞いたんだけど……なんで精霊族であるベルは人間を助けたんだ?」
「ベルは別に人間のことは嫌いじゃない。精霊族=ベルではある。でも精霊族全体の意見=ベルの意見ではない。それだけ。」
「少し私と似てるところがあるかも」
確かにメアリスとベルは似ている所があるかもしれない。
精霊族は人間に住処を奪われ、それ以来関係を断っているらしいが、ベルは人間を嫌っていない。
作品たちは生みの親であるソロウを人間に貶され、恨んでいた。
しかし、メアリスは人間の力を借りるため、俺の力を求めてきた。
メアリスは人間がまだ嫌いらしいけど……人間を根絶やしにすることを反対していた少数派という点で言えば同じだろう。
それに、二人は早くから親元を離れている。
見た目だけ見れば同じくらいの歳だし……やはり共通点が多いな。
「どこらへんが似てるの? 詳しく。」
「うん! 今から話すね!」
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「め。メアリスが……絵?」
「うん、そうだよー」
「そんな……有り得ない。魔法に精通していると自負しているベルでもそんなことは不可能。無機物に命を吹き込む……そのブローチも……メアリスの父上は凄すぎる。」
「えへへ、そうでしょー」
「それで。お父さんは今どこ?」
「ベ、ベル、メアリスのお父さんはな……」
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「無神経だった。ごめん。」
「ううん、いいの。それに……ベルには知っていて欲しかった」
「それは。なんで?」
「仲間だから……かな?」
「…………。」
ベルはその言葉を聞いた途端静止してしまう。
「ベル?」
「……感激。ベルもメアリスのこと大事にする。仲間として。」
「……! うん!」
二人は仲間として、お互いを大事にすることを誓った。
固く手を結び、その絆を確かなものとした。
「それじゃあ最後は……」
「エルの番。」
「そうだな、そういう約束だ。少し重い話になってしまうんだが……」
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「エルも……親がいないんだ……」
「両親だけでなく。故郷まで破壊された苦しみ……。想像し難い……。」
二人は俺の話を聞いて、とても悲しそうな顔をする。
ベルは無表情に近いが……よく見れば、悲しそうな気持ちが伝わってくる。
人の話を自分の事のように悲しんでくれる、それがとても嬉しい。
「二人とも……ありがとうな。」
「わふっ」
「む。」
俺は思わず二人の頭を撫でてしまう。
メアリスが恍惚と表情を浮かべる中、ベルは少し複雑そうな感じだ。
俺は気になってそのままベルに尋ねてみる。
「ベル? どうかしたか?」
「……なんか。ベル以外みんな重たい。仲間はずれ?」
「そんなこと関係ないよ。そもそも、そういうものはない方がいいものだ」
「うんうん! エルの言う通り。そんな小さな違いばっかり探してたらキリないよ! 私たち、違うところなんて探せばいくらでもあるよ!」
「確かに。納得した。」
意外とすぐに納得してくれた。
メアリスの言う通り、小さな違いばかり探していたらキリがない。
ベルが仲間はずれならば、男である俺だって仲間はずれとも言える。
髪の本数も違えば、これまで歩んできた人生も全て違う。
逆に同じことな方が少ないだろう。
「さて、全員の身の上を知って仲を深めたわけだが……そろそろ移動しようと思う」
「なんか、この街意外と堪能できてないよね」
「そうだな……逮捕やらなんやらで大変だったからな。ベルがいなかったらどうなっていたことか」
「ふふん。流石ベル。」
ベルが胸を張り、誇らしげにする。
「……エル。」
「どうした?」
「小さい、とか思った?」
「? なにがだ?」
「杞憂だった。忘れて。」
「あ、あぁ。分かった……?」
一体なにが小さいのだろうか……?
よく分からないが、忘れてと言われたので忘れることにしよう。
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「はい、確認できました。こちらが達成報酬の銀貨三枚になります」
「ありがとうございます」
色々あって忘れていたが、スペルルキノコの討伐依頼を達成したので、冒険者ギルドに報告しに来た。
本来の報酬は銀貨一枚だったらしいのだけど、魔石の量があまりにも多かったので、報酬を増やしたらしい。
嬉しい誤算だ。
「あの……別の魔物の魔石もあるんですけど……どこに出せばいいでしょうか?」
「このまま私が受け取りますよ。それに応じた報酬をお渡しするため、鑑定する必要がありますので時間がかかりますが」
「それでも大丈夫です。それじゃあ……」
目立たないために魔石は小出しに……とりあえずラフレシャーラの魔石を一つ、あとは適当な魔物の魔石をいくつか出せばいいだろう。
それらを受付嬢に渡す。
「はい、確かに受け取りました。鑑定してまいりますので少々お待ちください」
受付嬢が魔石を持って奥に走っていき、その姿が見えなくなった。
しばらく待っていると──────
「はぁ、はぁ……エルさん!」
「え? あ、はい。なんですか?」
「あの……この魔石の元の魔物はご自分で討伐なされたものですか……?」
慌てた様子の受付嬢はラフレシャーラの魔石をこちらに見せる。
「あ、はい。そうですよ」
「ほ、本当ですか……?」
「本当です。確かにラフレシャーラを倒しました」
「いえ、これはラフレシャーラの魔石ではなく……ラフレシャーラの突然変異種のもので……Aランク相当の魔物なんですよ!?」
「え……」
「確かに。ちょっと見た目が違ったかも。でも弱すぎて話にならなかった。」
「へ……?」
「ちょ、ベル……!」
「大変です! もう一つ突然変異種の魔石が!」
「な、なんですって!?」
「あー……確かに少し強かったなぁ……私の攻撃に二発も耐えてたし」
「に、二発!?」
「あー…………」
……二人は故意でやっているわけではないのだろうが…………
これはかなり目立ってしまったかも……
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