第5話 人間……?
「…………え? メアリスが……人間じゃない……?」
俺はアクスの思わぬ発言に、心が整理できない。
いやいや、メアリスが人間じゃないなんて……魔物には見えないし……それ以前にあんな表情豊かで人間味のある少女が人間じゃないなんて、すぐに信じることはできない。
「これはおそらく、の話だ。ただ、直感的に嬢ちゃんは人間じゃない」
「でも、それならなんで家に入れたんだ?」
「邪気は感じなかったからな。こちらから手を出さなければおそらくあの嬢ちゃんはなにもしない」
……アクスは戦闘経験豊富な冒険者だ。
そんなアクスの勘なら、信じてもいい気がする。
それ以前に、俺にとってアクスは父親同然の存在だ。
父親の言葉を疑う子がどこにいようか。
「……分かった。とりあえず今は信じる。でも仮にメアリスが人間じゃないとして……この後どうする?」
「そこなんだよな……困ってそうだから、考え無しに家に連れてきちまったが……」
「うーん……」
アクスも俺も、困っている人を放っておくことはできない。
まぁ、人ではないのかもしれないけど。
メアリスの正体なんであろうと、困っているのなら助けてあげたい。
エゴだとしても、力になりたいと思うのをやめられない。
冒険者とはそういうものだと、アクスから教わった。
「……アクス、メアリスを助けてあげよう」
「そりゃ、助けてやりてぇが……何に困ってるかも分からねぇんだぞ」
「そこはおいおい教えてもらえばいいさ。アクスだってそのままメアリスを追い出すことはできないだろ?」
「むぅ……確かに」
「それじゃあ決まりだ。少しづつ、メアリスに話を聞いていこう」
俺たちはメアリスを助けることを固く決意し、部屋を出た。
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「あ……二人とも、おかえり」
「あぁ、突然席を外して悪かったな」
「ううん、大丈夫。あと、美味しいパンをありがとう。ごちそうさま」
「あぁ、こちらこそ美味しく食べてくれて嬉しいよ。ありがとう」
「…………」
しばしの沈黙が続き、アクスが口を開く。
「あー……なにか困ってるんだろ? お嬢ちゃんの家についてはもう聞かないが、なにに困ってるかぐらいは教えてくれないか? 俺たちは嬢ちゃんを助けたいんだ」
「…………」
また、沈黙が続く。
メアリスはただ下を向いて俯き、暗い顔をしている。
「はぁ、流石にまだ心を開いてはくれないか」
アクスは一つため息をつくが、嫌な顔はしていない。
「俺もエルも、嬢ちゃんから話してくれるのを待ってるからな。もし、話してもいいと思ってくれたらその時は頼むな」
「……いや、今、話すよ……いずれ話さないといけないし…………」
「そんな、気にしなくても……」
「エル、嬢ちゃんが話してくれるって言うんだからここは聞こう」
アクスが俺を手で制止する。
俺はそれに少し躊躇うが、納得してコクりと頷いた。
「……あのね……私……実は…………」
そうして、メアリスは話し出した。
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