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故郷を失った少年、最強絵画の少女とともに冒険者をする (打ち切り)  作者: いちかわ
魔法の街スペリラ~感情豊かな精霊さん?~
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第37話 連鎖魔法

スペルルキノコの討伐をし、魔石を回収し終えた俺たちは魔法の実験も兼ねて魔法の森を散策することにした。


「エル。次は連鎖魔法(チェイン)をやろう。」

連鎖魔法(チェイン)?」

「ベルたち精霊族の固有能力(こゆうスキル)。二重詠唱とも言える。異なる魔法を同時に発動させるもの。」

「そんなことが……?」

「魔法を同時に放つことによって魔力がどかどかーんってなる。」


……威力が高まるということだろうか?


「ベルが今できるのは三つまで。ベルのママは十以上の魔法を同時に行使してた。」

「ベルのお母さん、すごいんだねー!」

「すごい。化け物。」


実の母親に向かって化け物なんて……と思ったけれど、それは化け物だ。

十以上の魔法を同時に行使する?

考えただけで……いや、想像すらできない。


「話が逸れた。エル。次はあれが的。」

「あ、きもいお花さんじゃん」


二人の目線の先には……ラフレシャーラだ。

あの時は苦しめられたな……。


「エル。連鎖魔法。やって。」

「どうやるんだ?」

「んー……こう。」


ベルは両手を広げ、ぱちんと叩く。


「分かった?」

「……なんとなく?」


異なる魔法の魔法式を同時に構築し、それを合わせる…………こんな感じか?


「ウィンドカッター・チェイン・ウォーターガン!」


上級魔法や中級魔法を二つ同時に撃つのは中々に難しそうなので、初級魔法二つで試してみた。

放たれた水魔法が風魔法によって拡散され、広範囲を攻撃する。

初級魔法としては破格の威力だが、ラフレシャーラを倒すには物足りないな。


「キシャアァァァ!!」

「綺麗な魔法だねー」

「うん。でもエル。若干失敗。」

「え? そうなのか?」

「蓮様魔法は……こう。」


ベルは光の羽を顕現させ、魔法を唱える。

ベルは手のひらを交差させ、それをラフレシャーラに向けて……一気に放つ!


「レッドクリムゾン・チェイン・ヘイルスピア。」


炎、氷の上級魔法が同時に発射された。

炎と氷、矛盾する二つの属性が合わさる。

熱い氷、冷たい炎。

本来交わることのない二つの性質が、ラフレシャーラを襲う。

ラフレシャーラは声をあげることすら許されず、氷漬けになって消えていった。


「……凍った……?」

「すごーい! 焼き氷になるかと思ったよー」

「これが連鎖魔法。エル。分かった?」

「…………」

「エル?」

「……あぁいや……凄い威力だな……」


…………炎と氷の連鎖魔法を使ったはずなのに凍った?


……いや、それよりも…………


なんなんだ……あの威力は…………?

見たことはないが、超級魔法に匹敵するのではないか……?


「うー……! 今の見てたら私も暴れたくなっちゃった! エル! 連鎖魔法の練習ついでにここらの魔物殺し尽くそう!」

「いや……いい案だとは思うが……」

「が?」

「これ以上大量の魔石をギルドに持ち込んだら、今以上に注目されそうだ」

「小出しにすればいい。原理は分からないけど。メアリスのブローチなら保存できる。」

「流石ベル、あったまいいー!」

「それほどでもある。」


二人は相変わらず仲がいいな。


……確かに小出しにすれば怪しまれることはないだろう。

それに実戦で成功する確証のない技はあまり使いたくない。


「よし、じゃあ連鎖魔法の練習のためにもうちょっと散策しよう」

「「賛成ー!(賛成。)」」



--------------------



原初の種(オリジン)との契約……厄介ですねぇ……やはり今すぐに始末するのがベスト…………」


しかし……百パーセント勝てるかと言われたら即答はできませんし……


「ここは駒を使いましょうか。確かこの森の近くには……昆虫族の里がありましたね。クフフフ、歪んだ顔をたくさん見せてくださいねぇ…………?」


男は邪悪な笑みを浮かべ、影に溶けるようにドロリと消えた。



--------------------



「連鎖魔法の精度も上がってきたし……この辺りで帰るか」

「えー、まだ戦いたいよー」


まだ戦いたいって……薄々気づいていたけど、メアリスは少々バトルマニアなところがあるのかな?

美術館で殺し合いなんて起きるはずもないので、新鮮なのだろうか。

戦うのが怖いと思ったりしないのだろうか……?

……まぁ、それは今は置いておこう。


「ほら、そろそろお昼時だろ? 美味しいごはんを食べにいきたくないか?」

「美味しいごはん……! 食べたい!」

「よし! じゃあ帰ろうか!」

「ベルもお腹空いた。」


三人で意見が一致したので、一度スペリラに戻ることにした。

今日はなにを食べようかなぁ。



--------------------



「エル。今日のお昼は紅蜜飴にしよう。」

「ダメだ。あれはお菓子であってごはんじゃない」

「けち。」

「エルのけちー。」

「そ、そんな事言われても……ごはんはごはんだ。……デザートに食べたいなら……まぁ……」

「やったー!」

「エルは押しに弱い。」


仕方なく承諾する俺を見て二人はハイタッチをする。

ちゃんと断れるよう少し厳しくなった方がいいだろうか…………


「! お姉ちゃん!」

「わふっ」


そんな考え事をしていると、一人の少女がベルに飛び込んできた。

……それにしても、お姉ちゃんと言ったか……?


「やっぱり! あの時のお姉ちゃんだ! 怪我はないの!? きゅわわわわぁーん?」

「ベルは問題ない。あなたも無事でよかった。」

「ベル……この子は?」

「耳。」

「?」


俺はベルの言う通り耳を貸す。


「魔族に捕まった理由。」

「……!? どういうことだ……?」

「後で。」

「……そう言って毎回聞き逃してるような……」

「気のせい。」


ベルは軽く誤魔化すように俺の言葉をあしらい、少女の方と目を合わせる。


「約束。守れてる?」

「うん! ばっちりがーどなー!」

「偉い。森は危険だから入っちゃだめ。」

「でも、お姉ちゃんは森から出てきたよ?」

「……ベルは大人だから大丈夫。」

「じゃあ私も大人になったら入っていいの?」

「…………。」


ベルが助けを求めるようにこちらを見る。


「あー……このお姉ちゃんは俺たちが守ったから森に入れたんだよ。一人で森に入るのは危ないからね。強い冒険者さんと一緒になるか……このお姉ちゃんくらい強くならないとね」

「わかった! お姉ちゃんくらい強くなれるようにがんばる! 私も誰かを守れるくらい強くなる! ずばばばばって、虹色のレーザー出す!」

「応援してる。フレー。フレー。」


ベルは気の抜けるような応援をする。

これを聞いてがんばろう! と思えるだろうか……?


「ありがと! それじゃあね、お姉ちゃんたち!」


少女はこちらが見えなくなるまで手を振り、走り去っていった。


「いいなぁベル。私もお姉ちゃんって呼ばれてみたいなぁ」

「メアリスもすぐ呼ばれるようになる。かっこいいから。」

「……! ありがと! 連鎖魔法をしてる時のベルもすっごくかっこよかったよ!」

「あぁ、一瞬で魔物が倒すベルはすごくかっこよかったな」

「当然。」


そんなことを言うベルだが、少し頬を赤らめていた。

最初は心情が読みづらく、気持ちを察するのが難しかったが、今なら分かる。

ベルは本当はとても感情豊かなのだ。

仲間の本当の顔を知れたようでとても嬉しいな。

『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。

毎日投稿してますので、是非また次の日に見に来てください!

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