第26話 然るべき罰
「リ、リス(?)……いつの間に……?」
「キュ~ン……」
リス(?)はメアリスが抱えている女の子を心配そうに見つめている。
「いや、今はそれよりも……ここから一番近い人間の街に案内できないか?」
「キュ!」
リス(?)は大きく頷き、小さな腕で胸をポンと叩く。
「できるんだな? 急いでくれ!」
「キュン!」
リス(?)はトテテと走り出し、俺たちはそれについていく。
一刻を争う状況なので、敵対する魔物を見つけた瞬間にメアリスがパレットナイフを投げつけて一撃で葬っていた。
接触してくる魔物に減速させられることもなく、順調に走っていく。
十分ほど走り続けていると……
「……! 街だ!」
「急ごう!」
魔法の街、スペリラに到着した。
本当はもっと落ち着いて訪れたかったが……今はそんなこと言ってられない。
俺は難攻不落とも呼ばれた魔法障壁を破壊すべく、短剣を構える。
「吹雪の剣・充填・放出!」
短剣にありったけの氷の魔力を注ぎ込み、一気に放出。
その絶大な威力に耐えられず、魔法障壁が決壊する。
難攻不落と呼ばれた割には脆いな、メアリスとの契約のおかげだろう。
これにはメアリスも驚いていた。
「いきなりですいません! この娘の治療をできる場所はどこですか!?」
「急がないと危ないの!!」
事態は一刻を争う。
俺とメアリスはありったけの声で住民たちに呼びかける。
「え……? 今あの人たちどこからきたの?」
「今、魔法障壁を壊してきたような気がするんだけど……」
そりゃあこの街を守る魔法障壁を壊してしまったら大問題だ。
人が騒ぐのは当然。
例えどんな罰が待っていようと受け入れる。
今はこの娘を治療してもらわないと……!
「わ、私、回復魔法が使えます! その娘を地面に置いてください!」
「ありがとうございます! お願いします!」
「それでは……ヒール」
女性の魔法使いが手をかざすと手のひらから優しい光が溢れ出し、その光に当てられた女の子の傷が癒えていく。
「とりあえず傷は治しました。これでひとまず安心です……ですが、応急処置に過ぎないので、治癒術師の方に見てもらった方がいいです。よければ案内しましょうか?」
「はい! お願いします!」
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「……はい、問題ないですね。衰弱の原因は魔力不足と栄養不足によるものですので、しっかりごはんを食べて療養すれば元気になりますよ。魔力譲渡もしたので不足した魔力は今のところ問題ないと思います」
「本当にありがとうございます……! 案内してくれた方も、ありがとうございます……!」
「いえいえ……これが仕事ですので」
「私は当然なことをしただけですよ、困った時はお互い様ですよね!」
優しい人たちで良かった。
……女の子の問題は解決したけど、魔法障壁の件はどうするか。
「エル、これからどうするの?」
「そうだな……魔法障壁を壊してしまったから冒険者ギルドに自首を……」
──────バタン!
「ここに黄色の髪の少女と緑髪の少女を抱えた男はいるか!?」
勢いよく扉を開けてそう怒鳴ったのは……騎士団の騎士である。
魔法障壁を破壊した俺を探していたようだ。
「なに? あなたたち。私たちに何か用?」
「黄色の髪の少女……! ということはその隣に居るやつが……大人しく我々に同行してもらおうか?」
「はい、抵抗する気はありません。連れて行ってください」
俺は両手を上げて無抵抗を示す。
「ちょっとエル、本気なの? 私が今からこいつら殺しても大丈夫だよ?」
メアリスがパレットナイフを取り出して騎士たちを睨みつける。
騎士たちはその幼い少女から放たれる睨みによって怯む。
恐怖で小さな悲鳴をあげるものもいた。
ただ一人、リーダーのような男を除いて。
「そんな物騒なことしちゃだめだ、それを仕舞ってくれ」
「……分かった。でも、命の危険を感じたら迷わず殺すからね?」
「せめて逃走にしてくれ、殺すのは絶対ダメだ。ソロウさんもそんなことは望んでいない」
「……!」
メアリスはハッとしてパレットナイフを仕舞い、手を上げた。
それを見て怯えた騎士団たちは胸を撫で下ろす。
「拘束しろ」
「「「はっ!」」」
男が騎士たちに命令し、俺とメアリスを拘束する。
「おい、その娘は拘束しないでくれ! 怪我人なんだ!」
「治癒術師に治療を頼んだということは仲間だろう。怪我人だからという理由で容疑者を見逃すことはできない」
「なら、気絶しているし連れていくだけでも……」
「答えはノーだ。話は後で聞く」
「……っく……」
「……このっ……!」
メアリスが拘束を無理やり引きちぎろうと腕に力を込める。
俺はそれを見て慌てて止める。
「メアリス! 今は大人しくしなきゃだめだ!」
「でもっ! あの子が……!!」
「……俺たちにはどうしようもない」
「私が拘束を破れば……!」
「メアリス、ここでそんなことをしたら俺たちの疑いが深くなるだけだ。今は我慢してくれ、な?」
「っ…………」
「ありがとう」
メアリスは拘束を引きちぎるのは諦め、大人しくする。
魔法障壁を破壊したのは俺だ。
だから、俺が罪を被ればメアリスは……
「キャアァァァァァァァ!!?」
「「「!?」」」
外から悲痛な悲鳴が聞こえてきた。
今度は一体なんなんだ……!?
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