第24話 旅の仲間が困っているなら
「それにしても、まだ居たのか」
ラフレシャーラとの戦いで逃げたものと思っていたが……リス(?)はまだ残っていた。
「生きてて良かったねー」
「キュイ!」
「さてと……一度休憩しようか。流石に走って、強い魔物と戦ったら疲れた」
「そうだねー、一回休もっか」
メアリスがなにかをなぞるように指を走らせると、フカフカのソファが出現した。
メアリスがソファに座って隣りをポンポンと叩いてこちらを見る。
「座ろ?」
「あ、あぁ。分かった」
俺はどうやってソファを出したのかという疑問を一旦抑えてメアリスの隣りに座る。
リスも俺が座ると腕に飛びついてきた。
「かわいいな」
「キュ~……」
軽く撫でてやると今にも消えそうな鳴き声を出してこちらに身を委ねてくる。
かわいすぎる。
……はっ! そうだ、このソファは一体どうやって出したのだろう。
こいつがかわいすぎて忘れるところだった。
「メアリス、どうやってソファを出したんだ? ブローチから出した様には見えなかったけど……」
「これは私の固有魔術で出したんだよー。これが出ろ~……ってイメージしてどーんってやれば出てくるの!」
「そ、そうなのか……」
説明はよく分からなかったが、すごい魔法だと言うことは分かった。
固有魔術とは、魔導書などで覚えられる一般的に出回っている魔法とは違う。
長い研究の末、使用魔力量、効果、代償に至るまで全て自身で構成するものだ。
数多の魔法式を崩れることなく構築し、発動の際の正体不明のバグに対処……それらをこなすことで固有魔術は完成するのだ。
思い描いたものを出現させる魔法……歴史上でもそんなものは存在しないだろう。
物質創造、もはや神の領域である。
「キュウ~!」
リスは俺の腕から降りると急かすようにその場をくるくると回り始める。
「メアリス、いけるか?」
「うん、私は大丈夫だよ!」
「それじゃあまたこいつについていこう。ここからは歩かせてくれないか?」
「キュ~……キュ!」
こちらの言葉を理解したのか、少し悩んでから頷いた。
人間の言葉を理解するなんて、ものすごく頭の良いんだな。
「よし、じゃあ行こうか」
「……うーん、それはちょっと困るわねぇ」
「「!?」」
今度はさっきの笑い声よりもはっきりと聞こえた。
俺とメアリスは警戒を強める。
「そいつ、置いていきなさいよ」
「そいつ……?」
「そこの小動物よ、そいつを寄越しなさい」
「キュ……」
リス(?)はその声に怯えて身体を硬直させる。
「嫌だと言ったら?」
「あなたたちを始末するわ」
「始末……ね?」
「そうよ、始末よ」
「この子は渡さないよ。 逆に私があなたを始末してあげようか?」
メアリスはパレットナイフを取り出して恐ろしい程の圧を発する。
「交渉に応じる気はないと……そういうことね?」
「そうだな、こいつは渡してやれない」
「愚かな人間共ね」
しばらく警戒していたが、その言葉を最後にその女は居なくなったようだ。
俺たちは警戒したままリス(?)に近づく。
「大丈夫か?」
「キュ……」
「大丈夫だよ、私たちがあんなやつボコボコにしてやるから!」
「キュウゥ……」
……こいつを狙ってる……なんのために?
特に特別な力は感じないし……珍しい動物を狙った密猟者? いや、それならわざわざ俺たちに声を掛けることなどないだろう。
となると……
「俺たちをこのリス(?)の目的地に行かせたくないから、と思うのが妥当か?」
「それならそこに行けばさっきの奴に会えるんじゃない?」
「そうだな。だけど多分……いや、確実に危険な目に合うだろうな」
なんとなくだが、すごく嫌な予感がする。
邪悪なものが関わっているのは間違いない。
「それでも私は行きたいな。だって、きっとこの子は困ってるよ」
「キュ……」
「きっと、この子は私たちに助けを求めにきたんだよ」
メアリスはリス(?)を抱き上げて俺の方を見る。
「エル……この子を助けてあげよう?」
「もちろんだ」
「!」
もちろん声の主を放っておけないというのもあるが……一時的とはいえ、旅の仲間が困っているのになにもしないリーダーはいない。
「何があるか分からないけど、今はこいつについていこう。何か起きたなら俺たちでなんとかすればいい」
「……うん! それでこそエルだよね!」
「キュイ!」
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「進む度に魔物が強くなってるな。ラフレシャーラクラスの魔物は出てこないけど……」
「この程度なら問題ないよ。いざとなったらみんなに出てもらって数で押すから」
「お、恐ろしい作戦だな……」
ただ、その作戦を実行すれば大抵のことは大丈夫だろう。
メアリスたちが味方で本当に良かった。
「キュっ!」
リスが立ち止まり、静かに! というように指を口に立てた。
俺とメアリスはコクリと頷き、慎重にリス(?)についていく。
「……開けた場所が見えるよ」
「……ここがお前が連れてきたかったところか?」
「……キュ!」
ここになにがあるのだろうか…………
特になにかがあるようには見えないが……
「……! あれは……」
目を凝らして奥を見ると、手錠のようなものでつるされている女の子がいる。
見た目はメアリスと同じくらいの歳の少女で、綺麗な緑色の髪が短く結ばれている。
こんなに幼い子に手錠をつけるなんて……許せない。
細い腕についているからか、手錠がとても痛々しく見えた。
メアリスも同様の怒りを覚えたようで、とても怖い顔をしている。
「……許せない」
「……同感だ。こんなろくでもないことをするような奴は許せない」
「……キュウ…………」
リス(?)はとても悲しそうな顔で女の子を見つめる。
俺はそんなリス(?)を優しく撫でる。
「……安心してくれ、あの子は俺たちが必ず助ける」
「……危ないから、あなたは遠くに離れてて」
「……キュイ……」
「……ほら、早く」
「……キュ」
不満そうな顔をしていたが、最後には納得したようで遠くに走り去っていった。
「……さて、ざっくりと作戦会議だな」
「……どうするの?」
「……まず、最優先事項はあの女の子の救出だ。人質にされたらこちらの負けがほぼ確定する」
「……なるほど」
「……だから、回り込んでメアリスが女の子を助けてあげてくれ。俺よりも確実に女の子を救出できるだろう」
「……了解。エルはどうするの?」
「……俺はあえて正面から突入する。俺に注意を向けて確実に女の子を助ける」
「……分かった」
メアリスは俺の作戦に即答してくれた。
それだけ信用されているということだろうか?
だとしたら、とても嬉しい。
「……3、2、1で行こう。準備はいいか?」
「……行けるよ」
「……よし、それじゃあ……3、2、1……ゴー!」
俺とメアリスは合図で同時に走り出した。
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