第21話 成長
「メアリス、ずっと歩いてるけど疲れてないか?」
「私? 私はまだまだいけるよ。 エルは?」
「俺もまだ歩けるな。なんだか身体が軽いんだ。これなら予定より早く着けるかもしれない」
「それって、私と契約したからじゃない?」
メアリスが手のひらに刻まれた魔法陣を俺に見せるように手をひらひらとする。
「うーん、戦ってみないとなんともだな」
「それじゃああいつで試さない?」
メアリスが指さす先にはオークがいて、こちらに向かってきている。
「そうだな、それがいい。あ、メアリスは極力戦わないでくれ」
「なんで?」
「ほら、いつ人に見られるか分からないだろ? メアリスは見た目が幼いのに強すぎるから、注目される可能性が高い」
「むぅ……私ってそんなに幼いかなぁ」
メアリスがぷくーっと頬を膨らませて自分の身体を捻ったりして自分を見ている。
幼いという言い方ではデリカシーがなかったかもしれない、後で謝っておこう。
「とりあえずは魔物だな」
俺はダガーを鞘から抜き、構える。
まだ距離が離れているのでこちらからも近づいていく。
メアリスは俺の後ろにくっついて進んできている。
「アイスショット!」
まずは牽制のため初級魔法でオークを攻撃する。
小さな氷柱がオークに向かって飛んで……
「……なんか、大きくないか?」
俺が出そうとしていた氷柱は握った手と同じ程度の大きさしかないはずなんだが……出てきた氷柱は顔ほどの大きさだ。
その大きさは普段の二倍以上だ。
戸惑いながらもその魔法をオークに向かって飛ばす。
「ギエェ!」
「……?」
俺の飛ばした氷柱は高速でオークに向かっていき、頭を貫いた。
絶命したオークは魔石と化す。
これで殺すつもりなんてなかったんだけど……そもそも、初級魔法であんなに威力が出るなど有り得ない。
初級魔法はその名の通り、魔法の入門編のようなものだ。
それゆえ魔力消費が少なく、牽制などに使うのが基本なのだけれど……
「今の威力は中級魔法に匹敵する……いや、それ以上だな…………なんでだ……?」
「それ、私との契約の恩恵じゃない?」
「状況から見てそうだろうが…………これはあまりにも……」
実際にアイスショットを使って分かったが、魔力の消費自体は以前と全く変わっていない。
それにも関わらず威力は従来の二倍以上だ。
「むぅ……なんか地味だなぁ」
「メアリス……地味なんかじゃない、むしろあまりにも規格外だぞ、これは……」
「え?」
俺は魔法剣士という特殊なスタイルで戦うので、近接戦闘も、魔法による遠距離戦闘も得意だ。
そんな魔法剣士だが、悪く言えば器用貧乏。
魔法を専門にしている魔法使いよりも威力は落ちるし、魔法を付与することを前提にしているため、剣の質もあまり高くない。
特殊な加工が必要になっているのだ。
そんな魔法剣士にとって、魔法の威力向上はとてもありがたい。
魔法の威力が上がったということは、当然剣に対する付与も強化されている。
そんなことをメアリスに説明する。
「私、エルの役に立てたってこと?」
「そういうことだ、ありがとうな、メアリス」
俺は感謝を示すようにメアリスの頭を撫でる。
なんだか妹みたいで撫でたくなってしまった。
本当はものすごく歳上なんだけどな。
「えへへ、それならよかった。そうと決まったらまた歩こう! エルはまだいける?」
「余裕だ。メアリスこそ無理しちゃだめだからな」
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あれから三時間ほど歩いて辺りも暗くなってきた。
メアリスの案で近道となる森を横切るルートに変更した。
当然危険も増えるのだけど、契約した力に慣れるため、早くスペリラに着くために森を横切っていく。
途中薪をたくさん拾ってブローチに収納したので、火に関しては問題ない。
メアリスには必要ないけど、人間の俺には必要不可欠だ。
「そろそろテントを張ってごはんにするか」
「それじゃあ私が火を用意するよ」
「大丈夫か? 火属性は完全に無効とはいえ……怖いだろう? 劣等種ドラゴンの時だって、跳ね返しながら震えてたし……」
「あ、バレてた……?」
メアリスは舌を少し出しいたずらっぽい笑顔を浮かべる。
「あの時はメアリスを火から守れなかったけど、次からは……」
「いや、私がやる。いつまでもそんなことをしていたらいつまでも火が克服できないしね。今回はただの焚き火だし……これくらいから慣れていきたいの」
「……メアリスがそう言うなら。でも、辛くなったら言ってくれよ?」
「うん、その時は頼りにするね」
メアリスは俺にニコっと笑いかけ、ブローチからたくさんの薪と炎の魔石を取り出した。
「えっと……これを砕くんだよね?」
「そうだよ。薪の上で砕けば炎が広がって焚き火になるはずだ」
「なるほど……」
メアリスはいくつかの薪をピラミッドのように立てていく。
その頂点に炎の魔石を設置し、パレットナイフでそれを突いた。
すると火は広がっていき、焚き火となった。
「できた!」
「お疲れ様、偉いぞメアリス!」
「え、えへへ……」
俺がメアリスを褒めると頬を赤らめてかわいらしい笑みを浮かべた。
この調子でメアリスが火を克服できるといいな。
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