第16話 試験の始まり
「「え??」」
これには俺もビックリだ。
メアリスと冒険者? メアリスはまだ幼な……くはないが、危険じゃないだろうか。
いや、見たことは無いが実力はかなりあるようだし、その心配はないのかな?
「どうだ? やってくれるか?」
「いいよ!」
「え!? 即答!?」
驚いて思わず大声を出してしまった。
「ありがとな、メアリスちゃん。まぁ、本当に冒険者が出来るかは分からないが」
「エルが試験に合格したら、私も晴れて冒険者ってことだね!」
「半分正解、半分不正解だ」
「それはどういう……?」
「メアリスちゃんにも試験を受けて欲しい」
「へぇ、面白いね」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、話の進みが早すぎる……」
「すまんすまん、確かに急に話を進めすぎたな」
急に冒険者になるための試験を受けてもらうなんて言われても……しかもメアリスと一緒に。
いや、願ったり叶ったりだが……ちょっと急すぎる。
まぁ、やるけどさ。
「エルは受けたくないか?」
「もちろん、受けたい」
「いい覚悟だ!」
その返事とこちらの表情を見て決意を感じ取ったのか、気持ちのいい笑みを浮かべガシガシと俺の頭を撫でる。
「それで、どんなことをするの?」
意外にもメアリスは興味津々だ。
「メアリスちゃんもやる気充分だな! それじゃあ二人の同意も得たし、試験の概要を説明しよう」
アクスはコホンと咳払いをし、話し始める。
「二人には力を合わせてドラゴンの討伐をしてもらう!」
「聞き間違いか? ドラゴン、って言わなかった?」
「エル、私もそう聞こえたよ」
「あぁ、聞き間違いじゃないぞ。二人にはドラゴンを討伐してもらう」
「「…………」」
俺とメアリスはぽかんとして顔を見合わせる。
「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!?」」
「ドラゴンって、あの絵本に出てきて炎とか吐いたりするおっきいトカゲのことだよね!?」
「そうだ」
「Sランク上位に君臨する、あのドラゴンの討伐!?」
「いや、それは違うな。すまん、誤解を招く発言をした。ドラゴンはドラゴンでも、お前らが討伐するのは劣等種ドラゴンだ」
「ほっ……いや、あんまり安心できないな…………」
劣等種といえど、ドラゴンはドラゴン。Aランク上位に位置する強力な生物だ。
ただ、普通のドラゴンとは大きな違いがある。
ドラゴンと劣等種では知能にとんでもない差があるのだ。
当然強さも全然違うのだけど、それよりも知能に差がある。
戦闘においてそれは地力よりも重要かもしれない。
知能がなければ、たとえどんなに優れた武器を持っていたとしても、百パーセントの力を引き出すことができない。
だが、だからといって油断はできない。
いくら知能が低くとも、そこらの魔物に比べればその強さは段違い。
「なんでその劣等種ドラゴンとかいうのを倒すの?」
「ちょうどこの町を困らせてる上、エルとメアリスちゃん二人ならちょうどいいだろ。それだけだ」
「そんな簡単なら、もっと早く俺を冒険者にさせて良かったんじゃないか?」
「お、劣等種ドラゴンなんか余裕か?」
「いや、そうじゃなくて……」
「はっはっは、からかっただけだ。言いたいことはわかるぞ。こんなにあっさり冒険者になる許可を出すならいままでここまで渋るこたぁねえってことだろ?」
「そうだね」
「今まではエル一人だったからな。だが、今はメアリスちゃんがいるだろ? 一人と二人じゃあ全然違うんだぜ?」
「まぁ……確かに」
「さて、先越されたらずっこけもんだ。さっさと依頼を受けにいこう。今回は俺の名前で受けるが、行くのはメアリスちゃんとエルだ。覚悟はいいか?」
「私はいいよ」
「俺も問題ない」
「よし、んじゃあ行くぞ」
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「はい、劣等種ドラゴン討伐ですねー……大丈夫ですか? アクスさん一人では少々厳しいかと思われますが……」
「あぁ、大丈夫だ。今回は一人じゃないからな」
「承知しました、では少々お待ちください」
職員さんが依頼の紙にサインを書き込み、アクスの冒険者カードを返す。
「劣等種ドラゴン討伐受付完了致しました。依頼成功時は討伐の証拠となる部位をきちんと回収してくださいね」
「もちろんだ」
「それではお気をつけて」
◇◇◇◇◇
「あ、帰ってきた。おかえり」
「おう、ただいま」
「横取りされてなかった?」
「問題ないぞ。さぁ、ここからはお前ら次第だ。こいつが今回の依頼の概要だ」
アクスから依頼について書いてある資料を渡された。
ふむ……この近くにある丘で目撃情報か。
「メアリス、劣等種ドラゴンは丘で目撃されたらしいから、そこに向かいたいんだがいいか?」
「いいと思うよ」
「よし、それじゃあ行くか」
「エル! メアリスちゃん!」
アクスが俺たちを呼び止める。
「……気をつけろよ」
「ありがとう、気をつけるよ」
アクスは俺たちにそう言い、手を振った。
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「……手当り次第に探すのもなぁ」
「こういうのは地道な作業みたいなイメージなんだけど、違うの?」
「まぁ、間違っちゃいないけど……体力消費を抑えないとそもそも勝てないだろ? 今回の相手は強いからできるだけ万全で挑みたいんだ」
「どれくらい強いの?」
「まぁ、アンドリューより強い、カレット、ザックより弱いって感じか?」
自分で言っていてなんだが、カレットとザックの強さが恐ろしい。
あれに加えて人間並の知能、Aランク最上位に分類されるレベルの実力かもしれない。
「なんだ、じゃあ私一人でも楽勝じゃないの?」
「油断はダメだ。思わぬところで足を掬われるぞ。一つのミスで死に繋がる、それが冒険者だ」
「分かった、そう言うなら気をつける」
「ありがとう、素直に警告を聞いてくれて」
「当たり前でしょ! そんなつまらない事でエルを怪我させたくないし」
俺のために警告を素直に聞いてくれたのか……凄く嬉しいな。
でもまるで、自分なら心配いらないと言っているように聞こえる。
つまり、まだ油断しているのでは?
何が起こってからでは遅いのできちんと身を引き締めてほしい。
そうメアリスに伝える。
「……それって私を心配してくれてるの?」
「もちろんだ、怪我したら危ないだろう。死んだらどうするんだ」
「……ありがと。心配してくれて。私も気をつけるよ」
「俺も、ありがとう。きちんと話を聞いてくれて。お互い危険になったら助け合う、これが大事だ」
「うん、分かった。エルには指一本触れさせない」
「そ、そこまでしなくても大丈夫だぞ……?」
ともあれ、真剣になってくれたみたいだ。
俺の話をちゃんと聞いてくれてありがたい。
「よし、エルにいいこと教えられたし次は私がドラゴンの位置を特定してみせる」
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