第22話 家族に
「「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
突然大きな歓声が上がり、俺とアンドリューはビクリと肩を震わせる。
歓声の聞こえた先を見つめると、キラキラとした視線を向けてくる作品たちが。
「あのアンドリューに勝つなんて、どんだけ強い人間なんだ!」
「それだけじゃ、ない……あの、大の人間嫌いのアンドリューと、握手までした」
「われはお前たちについてゆくぞー!」
どうやら作品たちは俺たちを認めてくれたようだ。
これをきっかけに俺たちだけでなく、他の人間との溝が埋まってくれると嬉しいな……
「みんな、注目して」
メアリスは手をパンパンと叩いて視線を集める。
「美術館でも聞いたけれど……改めて、問わせてほしいの。エル・シュラインとアクス・マーティン。この二人の人間に導いて……いや、家族として助け合うことに、異論がある子はいるかしら?」
俺は作品たちの反応が気になって、彼らの顔を見回してみる。
笑顔だったり、目を閉じて頷いていたり……そこには美術館から助け出した直後のような、圧力は微塵も感じられなかった。
「……では、異論がないみたいなので……ここで正式に、二人と家族の契りを交わそうと思うわ」
メアリスはそう言いながら、紅の魔石を掲げる。
あれは確か……ソロウの手紙にあった魔道具の一つだ。
あの魔石を砕けば、人間と守り守られる関係になると、手紙にはそうあった。
「二人も、構わないかしら」
メアリスがこちらに振り向いてそう確認する。
「ここまできて断るやつがいるかよ」
「あぁ、その通りだな」
それを聞いてメアリスは子どもっぽく微笑む。
「それじゃあ……砕くわよ」
メアリスが強く、震えるほどに拳を握りしめた。
グググと魔石の軋む音が聞こえ……そして、そのまま静かに砕けた。
その瞬間、世界が白に染まるような光がメアリスの手から放たれる。
けれど不思議と眩しくなくて……俺はその光を真っ向から見つめていた。
アトリエに色が戻る時と似たような光だな。
なんとなくそう思った。
そうして何事もなく世界に色が戻っていき……辺りがしんと静まる。
それと同時に、右掌がなんだか熱くなる。
気になって手を反してみると、白い薔薇の柄が刻まれていた。
アクスとメアリスも同じなのか、掌を注意深く観察している。
指で撫でてみても、つるつるすべすべで凸凹が全くない。
「……綺麗だな」
手のひらが見えるように腕を天に伸ばし、じっと見る。
指の隙間から夕陽の朱色が漏れ出てきてなんとも幻想的だ。
「ねぇ、なんだか繋がりを感じない? うまくいえないんだけど……」
「俺も……分かる。一本の糸で繋がってるみたいな……」
「それを、僕らも感じるのはおかしいかな?」
そう声を発したのはザック。
カレットと二人で、掌をこちらに見せてくれた。
ザックの掌には青い薔薇、カレットの掌には赤い薔薇が刻まれている。
「私は黄色い薔薇よ。エルとアクスは白色なのね。ザックとカレット以外に薔薇がある子はいる?」
……。
「いないのね。これ、どんな効果があるのかしら」
「さっぱりだな」
「追々探っていけばいいだろ。それよりも空を見ろよ。こんな時間に森を進んで帰るのは危険だぜ?」
見上げてみると、遠くの空はもう既に闇だ。
橙色の空が端っこから浸食されている。
「どうして?」
「どうしてって……暗い森を進んだら魔物から不意打ちされやすいし、夜に近い方が強い魔物多いんだよ」
「ふーん……魔物ごとき敵じゃないけれど、安全第一っていうのも大事よね。それじゃあ美術館で夜を越しましょう」
「いいのか?」
「えぇ、二人の分のベッドも創ってあげる」
「今からか? 流石に大変なんじゃ……」
「そんなことないわよ。だって……」
メアリスは空中にまた指を走らせる。
虹色の軌跡が残り、徐々にその軌跡が形を成していく。
そして、ひとつのベッドが空中に出現した。
ぼふんと音を立てて地面に激突し、砂煙が舞う。
「すぐできるもの」
「なっ……」
「なにが起きた……?」
「これが私の能力、思い描いたモノを顕現させる能力よ。どう? 便利でしょ?」
メアリスは事もなげに笑ってそう言う。
便利とか、そういう次元ではない。
俺たちが衝撃で口を開けない中、カレットが困った顔でメアリスに近づく。
「ちょっとメアリス、ここでベッドなんて創ったら運ばなきゃいけないじゃん。それに家族をこんな土でまみれたベッドに寝かせる気なの?」
「確かに。砂煙で汚れちゃったわ」
「いや、そういう問題じゃないんだけど……」
こんな能力……あってもいいのか……?
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