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第119話 シャーロット号発進!

「さて、それじゃあ出発しようか」

「ゴーゴーレッツゴーだね!」


勇者日記の情報を共有して一夜明け、俺たちは希望の鎖を求めて宿を発った。

シャイレーツ海には多数魔物がいるらしいので、ギルドで魔物討伐の依頼を複数受けてから向かう。

パーティメンバーも増えてきて出費がバカにならないのだ。


「ブローチにストックされてる魔石はまだそこそこあるけどね」

「魔石は換金以外にも活用法が色々あるからな、できるだけとっときたいんだ」

「魔法薬にも使える。武器にも使える。新しい魔法の開発にも使える。魔石はすごく便利。」

「魔石と言えばさー、ベルちゃんの持ってるその紫色の石! ピカピカジュンジュンでめっちゃ親近感湧く雰囲気なんだけど!」

「これのこと?」


ベルは懐から紫色の魔石を取り出す。


「うんうん! それ!」

「これはとある街で助けた女の子からもらった。綺麗でしょ。」

「すっごい綺麗! なんだかものすごく興味がある!」

「そういえばこれをくれた子……。なんとなくクティと喋り方が似てたかも。」

「確かに言われてみればそうやな。思わずリピートしたくなる効果音を口にしてたわ」


ふむ……スペリラでベルが魔人から救出した少女か。

クティの記憶喪失改善に繋がるだろうか?

シガーの件が一段落したらスペリラに戻ってみるのもありだろうか。


『ふむ……確かに今思えばあの少女は妙な力を放っていたような……しかしあまりにも微弱……』

「今はこっちに集中しよ! もちろんクティのことも助けたいけど、色んなものを追いすぎたら全部取りこぼしちゃう。二兎追うものは一兎も得ずってやつだよ!」

「おー、そんなことわざ知ってるなんて偉いやんメアリス。飴ちゃんいる?」


メディアスは事ある毎になぜか飴を渡そうとしてくる。

性なのか?


そんなことを考えていると、いつのまにやら俺の足は砂浜を踏みしめていた。

するとメアリスのブローチが輝きだし、シガーが飛び出す。

そのまま海に飛び込んだ。


「話してる間に着いたみてぇだな。あたしの大嫌いな場所に」

「あぁ……悪いがそこに入っていくことになるぞ」

「問題ねぇよ。元は暮らしてた場所だし、あたしのために来てくれてんだ。どの口が文句なんか言えるものか」

「この口ー! ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ!」

「おまえは黙ってろめんどうくせぇ」


シガーはため息を吐きながら大の字に浮かび上がる。


「海の中ならあたしは動ける。お前らは船に乗るだろうが、あたしは泳いで着いていかせてもらう。魔物の処理は任せとけ」

「心強いよ、ありがとうシガー。俺たちもできる限り助力する」

「それじゃあ船出すよー? おっきいからシガーは離れた方がいいかも」

「わかった」


シガーは尾ヒレで海面を叩き、頭を下に潜っていった。

メアリスはそれを確認すると、ブローチに力を込める。

すると今までにないほどブローチが輝き出し、そのあまりの眩しさに目を瞑る。

光が止んで目を開くとそこには……


「相変わらずでかいな……」


シャーロットからもらった船、『シャーロット号』が浮かんでいた。


白とオレンジを基調にした爽やかな色に、ガルーダを思わせるような雄々しい羽のようなパーツがこの船が超高速であることを瞬時に理解させる。


「……やっぱ、こんなかっこいい船がシャーロット号なんて名前なんは違和感しかないわ」

「どうして? ベルは素晴らしい名前だと思う。」

『まじで言ってるのだ……?』

「いいんじゃないか? シャーロット号。とりあえず乗ろう」

「かっくいー! バビューンって発進するのに期待!」

「こりゃすげぇな……」


俺とクティが先導して船に乗り込み、残りの四人も船に乗り込む。

シガーは頭だけ海面から出して、目でOKサインを送ってくる。

もう発進しても問題ないということだな。


「えーっと説明書によると……このレバーを前に倒せばいいんだな」


俺は黄色いレバーを前に倒す。

レバーを倒すといつぞやメアリスが乗っていたバイクの発進前になっていた音に似たものが辺りに鳴り響く。


『発進なのだ!』


アナの掛け声と同時に、シャーロット号が発進した。


「結構はえぇな……めんどうくせぇ……」


シガーはそれを見て心底嫌そうな顔でシャーロット号後ろにつく。


「わぁー! 風が気持ちいいね!」

「びゅおーな風がぶおんぶおんですっごいよー!」

「なにを言っとんのかは分からんけど楽しいのは同意や」


確かに風が気持ちいいな……

馬車とは違い高速で、髪が揺れる感覚が心地良い。

光を反射して輝く水飛沫はまるで宝石のようだ。


「……ところでエル。どうやって希望の鎖を見つける?」

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