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第116話 記憶の破片

「エルー、どうどう? 目キラリンで見つけられた?」

「クティか」


忙しなく羽を動かし、クティが俺に向かってくる。


「信憑性は不明だが……なんとかできるかもしれない魔道具について書かれた本を見つけた。怪我を治すなどの記述はないが……手がかりが無い今これを狙うのもありかもしれない」

「ほんとに!? わたしにもその本見して!」

「あぁ、いいぞ」


俺はクティに本を渡す。

クティは本を持つと片方の羽に本を持ち替え、もう片方の羽でページをペラペラと捲る。

まるで人間みたいだな。

すごく器用だ。


「……ふむふむ、希望の鎖…………なんだか聞いたことがあるような?」

「本当か? なにか希望の鎖について知っていることはないか?」

「うーん……なにかのおとぎ話で読んだかも。これとは違うやつで。なんか、どかどかーんって暴れる最もやばい魔王を倒すために作られた魔道具」

「最も? 魔王は一体しか居ないはずだぞ?」

「あれ? そうなの? うーん……ごめん、記憶が曖昧で分かんないや」

「無理しないで大丈夫だぞ。クティの記憶もいつか取り戻せるといいな」


俺はクティの頭を撫でる。

シガーもクティも訳ありで……お互い助け合ってきたのだろう。

とても苦労しただろうな…………シガーを治療できたら、次はクティの記憶喪失もなんとかしたいな。


「…………おにい……ちゃん……?」

「うん? クティ?」

「うっ…………あれ……」

「うわっ!?」


突然クティから目映い光が放たれる。



◆◆◆◆◆



「よーしよし、良い子だぞ、クティ」

「えへへー、ありがとお兄ちゃん! わたしはカミサマもドンドンパフパフーってするくらい良い子だもん!」

「ははっ、そうだな。そんな良い子なら当然、嫌がらずにお兄ちゃんと戦闘訓練、してくれるよな?」

「えー…………しょうがないなぁ。してあげてもいいよ」

「良い子だ」


男はクティ?の頭に優しく手を置き、頭を撫でた。



◆◆◆◆◆



な、なんだったんだ……?

今のは…………?


「えへへ……エル、ありがと。なんだか大事なことを思い出した気がする」

「クティ……今のは……?」

「うん? 今のってなに?」

「クティって呼ばれた子が、クティのお兄ちゃんらしき人と会話しているところが頭に流れ込んできて……」

「えー、なにそれ? エルってば不思議ちゃんキャラ? 頭ぽあぽあさんだったの?」

「う、うーん……そんなことないと思うけど……」


クティは今のことを見ていないのか…………

クティ?の姿はモヤがかかっていてよく見えなかったが、人型だった。

なんだか見たことがあるような気がする。

もしかしたら元人間だったり……するのか…………?

それとも、もっと別の存在か…………


……今はシガーのことを優先しよう。

俺はそう考え、その答えの出ない問題を一度放置することにした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「うーん……結構探したけど、もう無さそうかなぁ」

「あぁ、人手がたくさんあって助かった。みんなありがとう」

「ちっ、こんなことで俺たちを頼りやがって……」

「あはは、そう言わないでよアンドリュー。エルたちに頼られて嬉しいからって、素直になりなよ」

「そうそう! それにアンドリューが一番張り切ってたもんねー」

「う、うるせぇ! 俺はもう戻るぞ!」


アンドリューは頬を赤らめながらメアリスのブローチに戻った。

最初出会った時はどうかと思ったが…………仲良くできそうでよかった。


「それでみんな……それらしい情報は見つけられたか?」

「「「………………」」」


俺の問いかけに返ってきたのは、静寂。

この広い図書館で情報がこれほどまでに少ないとは、誤算だ。

みんなは情報を見つけられなかったからか、暗い表情をしている。

だが…………


「実は……一つ、有用かもしれない情報があった」


俺の一言に全員が目を輝かせる。


「シャイレーツ海のどこかにあるという秘宝…………希望の鎖ならシガーを助けられるかもしれない」

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