第115話 勇者日記……？
「それじゃあ次はベルの案。ベルの案はメディアスの案よりも簡単かもしれない。」
「おお！ それはごっつ期待できるわ！」
「やっぱり精霊族らしく、魔法でどっかん治療！？」
「しない。ベルの案。それは最強の精霊族に助けを求めること。」
「最強の精霊族……？」
「うん。今までなら普通に里に行けば居たと思うんだけど。ベルが脱走したから辺りを探し回ってるかも。多分待ってれば来る。」
「待ってれば来る……のか……？」
「うん。それに。ベルのお願いごとなら断られることはない。」
……親しい仲、ということだろうか？
しかし、最強の精霊族か…………。
同じ精霊族のベルでさえあんなに強いのに、その中で最強と言われる精霊族…………一体どれほどの化け物なんだ？
「…………ということは、今わたしたちにできることは……？」
「……待つ。それしかねぇんじゃねえか？」
「えー、それはちょっと…………こんな広い世界の中、最強ゴゴゴゴゴォ精霊族を待つのは時間がかかり過ぎちゃうと思う……」
「クティの言う通りだと俺も思う。ベルを追ってくるならいずれ会うことになるだろうし……今は天界に行く手段を模索して行動した方がいいと思うんだが、皆はどうだ？」
俺は皆を軽く見回す。
「私はいいと思うよ？ 待つのってすっごい退屈だし……私は胸躍る冒険がしたいな！」
「うちもそれでええと思うで。ただ待つよりはそっちのがうちは好きや」
「あたしはお前らに任せる」
「わたしは……うーん、いても立ってもいられないから天界に行ってみたい！ なんだかポカポカな感じがするし！」
「せっかく案を挙げてくれたんだけど……ベル、今回はそれでいいか？」
探している間にその最強の精霊族とやらがベルに接触してくる可能性もあるしな。
ベルの意見も取り入れた上での考えだ。
「うん。大丈夫。あの人なら絶対にベルを追ってくるはずだし。それに広い視点から見て。最適解を導き出したリーダーに逆らうことは無い。」
「ありがとう。それじゃあ天界のことを調べるために……資料館でも行ってみるか。さっきベルが言ってた勇者と天界に関するものがあるかもしれない」
「さんせーい！ いってみよう！」
--------------------
俺たちはマリエスタの宿から一度出て、図書館に向かった。
隅々まで調べるため、目立たない人型の作品たちにも手伝ってもらった。
その結果…………
「うーん…………これも違う、これも違う、これも……うん？」
俺は一つの本を見つけた。
「勇者日記第四巻…………この印は……おとぎ話に分類されているな」
勇者、天界、天使族などのワードがある本は中身をある程度見るようにしている。
おとぎ話だとしても実際に起きて語り継がれているものもあるので、こちらも読む。
それと、神の涙以外の治療の選択肢を探すため、医療系の本も一応見ている。
それ以外も見ていたら正直時間がいくらあっても足りない。
この本に手がかりがあることを祈りつつ、俺は表紙をめくる。
『さて、遂にぼくの日記も四冊目だね！
見てくれている人はどれくらいいるのかな？
とと、そんなことはいいんだ！
今回はすごい！ シャイレーツ海というとても綺麗な場所で冒険したんだ！
ぼくは海というものを初めて見たけれど、あまりの衝撃にこの世を破壊するところだったよ！ ハハ！
…………おい、そこの読んでいる君！
そこは、勇者なのに魔王みたいなこと言うな！
っていうツッコミをしてくれないと困るよ！ 全く、これだから最近の若者は…………』
…………話が逸れまくっている。
早く本題のシャイレーツの話をしてくれないだろうか。
読み飛ばしてもいいが、大事なところを見逃すかもしれない……そもそもこれはおとぎ話なのか？
日記じゃないか。
文面から見るに、この本は勇者が書いたみたいだが……ロイドではなさそうだな。
何代か前の勇者が書いたのか、はたまたいたずらのなりすましか。
…………とりあえず続きを読んでみるか。
--------------------
「うーん、所々掠れていて読めないところがあったな。ページが破られていたところもあった。でも……」
希望の鎖…………勇者の力が込められた魔道具。
おそらくこれがシャイレーツ海に伝わる秘宝なのだろう。
その宝を守る番人としてこの日記に出てきたのは、カイン船長、そしてトレドラ。
トレドラ……こちらは全く聞いたことがないな。
船長ということは、なにかの船の操縦者か？
もし人間ならすでに亡くなっているだろうし……今のところ番人は一人しかいないのかもしれない。
この希望の鎖があれば、シガーを助けることができるだろうか？
勇者の力は無限の力と記述されていたし……何が起こってもおかしくない。
手がかりがほぼゼロの状態だし……この秘宝を探してもいいかもしれない。
この日記の著者は希望の鎖を勇者か、魔王討伐を目指す者に手に入れて欲しかったようだが……シガーを助けるために利用させてもらう。
魔王討伐についてはまだ考えていないが…………火の粉が降りかかるなら払うまでだ。
「エルー、どうどう？ キラリンと目を光らせて見つけられた？」
