表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/133

第114話 希望と涙

「うっし、ほんじゃあ始めるで。準備はええか?」

「あぁ」


俺たちは一度シガーの診察をするために一度マリエスタの宿をとった。

ベルの魔法で扉が開くこともないので、完全なるプライベート空間だ。

メディアスの脚も、ベルの羽も、見られたら正体がバレてしまうからな。


「ベルもサポートする。前みたいに良くないものが入ってる可能性もある。」

「せやね、正直あれは二度とやりたくあらへんわ」


メディアスは深呼吸をして一度肩の力を抜き、背中の脚を展開する。


「おお……ずばばばって出てきた……かっこいい……」


メディアスは少し顔を赤らめながらシガーの口に糸を挿入していき、喉から体内に侵入する。


両手の指十本、背中の脚六本、合計十六本の糸がシガーの体内を駆け回る。


「うえ……気持ちわりぃ…………」

「すまんな、ちょいとだけ我慢してや」

「それとも。魔法で寝る?」

「……いや、いい。めんどうくせぇし」


シガーはそう言って目を閉じる。


「キツかったら無理せんで言ってや。こっから長いで」

「分かった」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



それからしばらく経ち、ベルとメディアスは苦い表情を浮かべる。


「────…………完全に先天的なものらしいな。呪いとかの痕跡は見つからへん」

「うん。ベルにも見つからなかった。解呪だけで済ませられればまだ楽だったけど。」

「そんな……! それじゃあシガーは……!」

「大丈夫や。治す方法がないわけやない。ただその道はごっつ厳しいもんになるがな」

「……うん。多分メディアスとは違うけど。ベルも治す方法思いついた。」


二人の言葉を聞いてクティの顔が輝く。


「おお、二通りも助け方があるってことだね! 大丈夫だよシガー、クティ! 私たちが絶対になんとかしてみせる!」

『そうなのだ! 誇り高き神獣であるわがはいも約束してやるのだ!』

「みんなの言う通り、俺たちに任せてくれ」


どんなに厳しいものであろうと、俺たちはやりたいことをやるだけだ。

シガーを助けたいと思ったから助ける。

みんな、その想いを胸に抱いているからこその発言だ。


「お前ら……ありがとう」

「わたしも! 出来ることはなんでもやるよ!」

「あぁ、その時はよろしく頼む。それで……二人の解決案を聞かせてくれるか?」

「ほんじゃうちの案から挙げさせてもらうで。端的に言ってしまえば、特別な薬を作る。これや」


特別な薬……毒蜘蛛種(ポイズンスパイダー)で薬のエキスパートのメディアスがそう言うくらいなのだから、シガーの身体異常が治せてもおかしくはない。


「どうやって作ればいいの?」

「せやね……ある程度の材料はうちが持っとるか、メアリスのブローチに入っとる魔物の素材を使えば揃っとるはずや」

「なら……!」

「ただ、ここからが問題や。今そんな薬が作れるならもうやっとる。シガーを治療するための薬にはある特別な材料が足りないんよ」

「それってなに?」

神の涙(ゴッドティアーズ)っちゅーごっつレアな代物や」


神の涙……


「神の涙……聞いたことある。どんな病も根本から治し。死以外の状態からなら元気百億パーセントになれる。そんな言い伝えがあった。気がする。」

「おー! これがあればシガーが助けられるね! やったー!」

「メアリス、残念ながらそう簡単にいくもんやないんや。さっき言った通り、神の涙はごっつレアな素材。おとぎ話にもなるくらいの伝説級な素材なんや」

『大事なことだから二回言ったのだ』


神の涙……確か俺も聞いたことがある。

お母さんが読んでくれた物語に出てきたはずだ。

その物語では…………どうやって神の涙を入手したんだろう…………


頭の中を必死に掻き回すが、てんで思い出せない。

今思い出さなくていつ思い出すんだ…………!


「……そういえば。アナは知らないの? 神の涙って言うくらいなら。神獣のアナは知ってそうだけど。」

『……心当たりがないわけではないのだ。だが、現時点でそこに行くことは不可能なのだ』

「方法があるの!? 教えて!! わたしにどっかんばちこり教えて!!」


クティが凄まじい形相でアナに詰め寄る。

思わずアナは後ずさりしてしまうが、クティの真剣な眼差しを見て話すことを決めた。


『……天界なのだ。神の涙は文字通り、神様の涙なのだ。この神の涙というのは神の子……つまりは天使族のみが作り出すことのできるものなのだ』

「天使族か……」


原初の種(オリジン)の一種、天使族。

彼らは神の子と呼ばれ、天界の秩序を守り、神の意思を実行するため行動していると言われている。


「天使族……確かに今会うことは不可能に近い。」

「なんで会えないの?」


メアリスが首を傾けてベルの方を向く。


「天使族は天界にしか居ない。地上に降りてくることはほぼ有り得ない。天界に行く手段を持っているのは限られた者だけ。」

「限られた者……たとえば?」

「もちろん天使族。神様に認められた者と。あとは……勇者。」


……ここで出るか、勇者。


「じゃあロイドに頼めばいいってことだね! それなら行けるよ!」

「いや。恐らくロイドはまだ天界には行けない。勇者が天界に行くことができるタイミングは一回しかない。」

「そのタイミングって?」

「初代勇者から代々引き継がれてきた伝説の剣。それを受け取りに行く時だけ。」

「ほんなら今貰い行けばいいんやないの?」

「それは無理。勇者がその剣に相応しい力を身につけた時。初めて天界側からのコンタクトが来る。」


初めて聞く話だな…………。

ロイドはこのことを知っているのだろうか?


……それにしても、ベルは色んなことを知っているな。

精霊族の里で習うことなのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ