表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/133

第113話 女の怒り

「……ねぇ、ロイド」

「うん? メアリス、どうしたんだい?」

「私たちを監視して、どうするの?」


俺はそれを聞き、思わず顔を歪める。


「メアリス、それは……」

「もし仮に君たちが人類に仇なす存在と発覚した場合…………容赦なく正義を執行しにいくよ」


ニコニコ顔のロイドから放たれたその言葉は、場の空気を瞬く間に重苦しいものに変えた。


「そう……私たち、負けないから」

「あはは、望むところだね」

「ちょいちょいちょーい!? ここそういうシリアスな場面じゃないっしょ!? 俺っちたちも別にメアリスちゃんたちをすごい疑ってるわけじゃないだって!」


そんな重苦しい空気の中、ジャックが手をぶんぶんと振りながらそう言う。


「そうですね……珍しくジャックの言う通りです」

「珍しく!?」

「そーそ、うちらがあんたらを警戒してんのは事実だけど、結局は困ってるやつがほっとけないだけだったりするしー。そーでしょ、リーダー?」

「…………はぁ、警戒してるからこそ圧を残して去ろうと思ってたんだけどな。……まぁ、今皆が言った通りだよ。君たちのことは警戒しているけど、逆にそれ以上のことはないよ」

「本当に? 油断させる作戦じゃないの?」

「あはは……君なら分かってるんじゃないのかな? ねぇ、ベル」


ニコニコ顔のままロイドはベルの方を見る。

ベルは無表情でロイドを見つめ返す。


「……魔眼持ち。どんな能力かは分からないけど。ベルたちのこと。なんとなく分かってるよね。」

「あぁ、そうだね。まだ憶測の域を出ないけど。でも仮に僕の予想が当たってるなら……シガーのこともなんとかなるはずだよ」

「うん。ベルたちが責任を持ってシガーを治療する。だよね。エル。」

「あぁ、そうだな。俺たちのことを信用して欲しい。シガーのことは必ず俺たちが助ける。ロイドたちは魔王討伐の旅に専念してくれ」

「そう言ってくれるとありがたいよ。それと……信用して欲しいなら一度剣を交えたいかな? あ、今じゃないよ? シガーが治って……君たちの正体が完全に分かってからね」


ロイドはどこまで見通しているのだろう。

敵か味方か、どちらになるかは分からないが、敵に回したら厄介この上ないだろうな。


「望むところだ。その時まで、この魔道具は預かっておくことにするよ」

「あぁ。それじゃあ……」


俺は腰から短剣を抜く。

ロイドも同じく剣を抜き、それらを重ねるようにクロスさせる。


「次に会う時も……今回みたいにほのぼのしてるのを祈ってるよ」

「あぁ……次も友達として会えることを望むよ」


そう一言ずつ言い、俺たちは互いに剣をしまった。


「それじゃあね、エル」

「あぁ、ロイドたちも達者でな」

「またふつーに会いたいなー」

「うちもや。無事を祈っとるで!」

「いやーところでメディアスちゃんのおっぱいちょうどいい感じで好うぎゃぁぁぁぁぁ!?」


ジャックに雷が降り注ぐ。


「悪は滅します」

「正しい判断。ぐっじょぶ。」

「えー、もっとぐしゃぐしゃに引き裂いて四肢をもぎ取ればいいのに」

「あっは、その通りだわー」


女性陣の恐ろしさを目の当たりにして思わず身体が震えてしまう。

それほどまでにデリケートな問題なのだろう…………

今後も決してその話題には触れないように心がけよう…………


ロイドがやれやれという様子でジャックのことを背負う。


「全く……キリがないよ、皆。僕たちは魔王を、エルたちはシガーをなんとかしないといけない。きっとまた会えるだろうし……」

「その通りですね。ごめんなさい、ロイド」

「もっと遊びたかったりしたかったりかったりしたんだけどなー」

「うごごごご…………」

「それじゃあね、エル、メアリス、ベル、メディアス、シガー。次に会うのを楽しみにしているよ」

「あぁ、またな」


俺はあえて簡単に別れの言葉を告げると、ロイドたちは背中を向けて去っていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「よし……それじゃあ今からシガーを治療するために動くわけだが、なにか案はあるか?」

「やっぱりうちが身体の中を調べて、それに合わせた薬を調合するのがいいんやない?」

「賛成。ベルとメディアスがいれば魔法薬が作れる。」

「魔法薬ってなに?」

「簡単に言うと、魔法が込められた薬やな。例えばキュアーの魔法が入っとる魔法薬を飲んだ場合、身体の中でキュアーが発動するんや」

「攻撃魔法を入れて投擲武器として使うことも可能。」

「へぇー、なんかすごそう!」

「どかんぼかんって感じだね!」


魔法薬という単語は初めて聞いたが、かなり用途が多そうだな。

今後のためによく覚えておこう。


「それはそうと……シガーはそれでいいか?」

「なにがだ」

「あ、ごめん、言葉足らずだったな。メディアスがシガーの体内を調べて、それに合わせた魔法薬で……」

「お前らならなんとかできるんだろ。めんどうくせぇしなんでもいい」


……シガー、完全に話を聞く気がないな……

俺たちのことを信用してくれるのは嬉しいが、自分のことなのだからもうちょっと関心を持って欲しい……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ