第103話 怠惰……?
「ぷぷぷ! 驚いた? ドッキドキした?」
「え、えーっと……そりゃあ驚いたけど…………君がこの状態を作り出したのか?」
「ピンポンピンポーン!! その通り! いわゆる、黒幕とかってヤツ!? うぷぷ!」
なんというか……元気な鳥だな。
油断してはいけないはずの場面のはずなのだが……不思議と警戒心が緩んでしまう。
「さて、ここで問題です。ででん! わたしはなぜあなたたちの前に出てきたでしょうか?」
「いきなりのクイズ!?」
『な、なんだかついていけないのだ……』
えーっと…………この謎の鳥、どこかで会ったことがあるのか?
少なくとも喋る謎の鳥が知り合いにいたら記憶に残っているはずだが…………
全く記憶に残っていない。
つまりあの謎の鳥だけが俺を知っているということか?
「ぶっぶー、時間切れです。正解はー……どぅるるるるるるるる…………ダンッ! …………えーっと…………………………」
…………………………………………………………。
「正解を決めてからクイズを出してくれないか!?」
「うぷぷ、冗談冗談! 冗談だってぇー」
『なんというか、相手してると疲れるのだ……』
「正解はねー、君たちが暖かい心の持ち主だったから!」
暖かい…………心?
「わたしはあなたたちのような暖かい心の持ち主を探していたの! シガーのために!」
「シガー?」
「うん! ついてきて! あ、そこの三人の術は解除しとくから!」
謎の鳥が「キラリン!」と言いながらウィンクすると、三人はぱちぱちと瞬きしながらゆっくりと謎の鳥の方へ顔を向ける。
「「「なにその鳥!!?」」」
予想と全く同じの反応ありがとう三人とも。
「とりあえず…………ついていってみよう」
よく分からないが、この鳥は悪いやつじゃない気がする。
メアリスじゃないが、外道という感じはしない。
俺たちは柔らかい砂に足を取られながら鳥についていく。
しばらく歩いていると、鳥が海に入る直前で止まったので、俺たちもそこで止まる。
「シガー、出ておいでー!」
「あー? めんどうくせぇな。そもそもてめぇが魔法を解除しねーと出てこれねーよ」
「あ! そうだった!」
な、なんだ?
姿が見えないのに声が…………
「ほい! これで見えるんじゃない?」
「え……!?」
思わず俺は我が目を疑った。
なにせ、目の前に無防備にぷかぷかと仰向けに浮いている海獣が目の前に現れたのだから。
「海獣…………だよな?」
「なんだよこいつら。あー、まためんどうなことになりそうだな」
腕から生えているヒレ、特徴的な魚のような尻尾…………間違いなく海獣だ。
だけど…………
「こ……こんな無防備なことあるか…………?」
「うんうん、もっともな疑問だね。なぜこんなところに原初の種がいて、しかも人間の前にいるのにこの様、不思議だよねー。その理由があなたたちに助けを求めたことに繋がるんだけどね!」
「…………もしかして……先天的な……?」
「え?」
「そこのお姉さん、大正解。シガーは産まれた時から不自由な身体で過ごしてきたの」
「「『なっ…………』」」
人間にあるのは知っていたが…………原初の種にもそんなことが…………
「…………あの、さっきはごめん」
「なにがだよ」
「そういうの知らないで…………無防備とか言って、嫌な思いをしただろう…………?」
「うるせぇやつだな。そんなので謝んなくていいんだよ」
「でも……」
「めんどうくせぇ。もう黙れ」
「うっ……ごめん……」
「あー、もう謝んな。うぜぇ」
言葉には棘があるものの、その声に怒気や呆れは含まれていない。
むしろ、暖かい。
「……助けたい」
思わずそうつぶやいてしまった。
「せやね。流石にこの状況を放置するんは薬師としてあり得へんわ」
「私も! 絶対助ける!」
「魔法の根底。それは困っている人を助けること。今使わないでいつ使う。」
『フハハハハハ! わがはいたちが必ずや貴様を救ってみせるのだ! 海賊船に乗ったつもりでいいのだ!』
「違う。大船。なんで海賊船なの。」
「…………」
シガーは俺たちを呆れた目で見つめている。
「やっぱりあなたたちに頼んで正解だった! シガーのこと、頼んでもいいかな?」
俺たちは顔を見合わせ、頷いた。
それだけで俺たちの心は繋がる。
「「「『合点承知の助!!』」」」
「なんかかっこいい! ずどぉぉおん!!」
「なんでお前まで乗ってんだよ……」




