第94話 闇のゲーム・2
「始め!!」
その一言で、空気が変わった。
「最初から全力でいく。守護者形態。起動。」
『ボコボコのボコなのだ!』
アナの身体が輝きだし、徐々にその身体が変化していく。
いきなり切った、ベルとアナの切り札。
「フハハハハハハハ!! これが! わがはいの真の姿、究極アルティメットウルトがはぁ」
「こんな時までふざけない。」
アナが上半身だけの鎧のような姿に変化した。
その輝きはお世辞抜きに、神のような輝きだ。
「イグニートフレア・チェイン・インパクトフラッシュ。」
「ゴッドブロウ・ラッシュなのだ!」
ベルの放つ火炎、光、アナの拳から放たれる気弾。
全てが合わさりとんでもないエネルギーとなる。
「流石にまともに受けていられませんわね! 来たれ! ブラッドサイズ!」
シャーロットがそう叫ぶと同時に、シャーロットの手に真紅の鎌が出現した。
「宵闇の輪舞曲・序曲」
シャーロットが独特なステップで華麗に踊り出すと、真紅の鎌から美しい音が鳴り響く。
するとどこからかその音通りの五線譜が現れ、ベルとアナの連鎖魔法を包み込み、離散してしまった。
「なっ……。」
「うふふ、ご馳走様ですわ♪」
「ど、どういうことなのだ!? わがはいたちの連鎖魔法が……」
何が起きた?
分からない。
迂闊に動くのは危険?
今の魔法は全力だった。
いとも簡単に相殺…………消された……違う。
そういうのじゃない。
「アナ。もう一回いくよ」
「が、合点承知之助なのだ!」
ベルが魔法を唱え始め、アナもそれに合わせて構える。
こんな隙だらけで魔法を唱え始めたら。攻めてくる。
もしかしたら。魔法攻撃だけを無効化するのかも。
攻めてきたらアナに迎撃してもらって。至近距離で魔法を打ち込む。
そう考えていたベルだったが…………
「うふふ♪ あー、怖い怖いですわ♪」
攻めて……こない…………。
いや。それなら逆に好都合。
無条件にこちらがアドバンテージを得れる。
「クリスタルエッジ・チェイン・チェインボルト・チェイン・イグニートフレア。」
「セイクリッドハートなのだ!」
蒼色で透き通った岩がシャーロットを囲い、そこをベルの雷魔法が伝う。
炎と雷の灼熱がアナの繰り出したハート弾と合わさり、シャーロットに襲いかかる。
「先程よりも練られた攻撃……しかし! 無駄ですわー! 宵闇の輪舞曲・終曲!」
またシャーロットがその場で独特なステップを踏む。
そしてリプレイを見ているかのようにまた五線譜がどこからか飛び出す。
しかし、そのリプレイのようなものの違いを見つけた者が居た。
「さっきとステップが違う。五線譜も。なら。アナ。軽くていいから。とにかく速い一撃。合わせるよ。」
「わかったのだ!」
アナとベルは手早く詠唱を済ませ、シャーロットに手のひらを向ける。
その間に五線譜は徐々に先程放った魔法を包み込み始めていた。
「「チェインストライク・ファスト!!」」
しかし、それが終わる前にアナとベルの合体攻撃。
二人の手のひらから放たれた弾は小さいが、数が多くとにかく素早い。
「あらあら、もう攻略法に気づきましたの? 流石はあの血筋ですわね」
そんなことを言いながらシャーロットはステップを途中で中断し、弾を避けることに専念する。
すると五線譜がみるみる消え始め、なんと止まっていた先程の連鎖魔法が動き出した!
「やっぱり。そんな反則技。制限もなしに使えるわけない。」
「フハハハハハ! わがはいたちの勝ちなのだ! その血筋がなんたらとかいう話も聞かせてもらうのだ!」
「あら?あらあらあら? それは早計というものではないですの?」
「なんだと? なのだ?」
「時に激しく、異文化も取り入れ…………カースドブラック・ロックンロール!」
シャーロットがそう叫ぶと、鎌の形状が変わる。
弦楽器のような形状に変わった。
「イェェエエイですわー!!」
シャーロットはそれを長い爪で弾きまくる。
「うぅ……。」
「う、うるさいのだ……!」
「ロックンロォォォォル!!」
シャーロットが叫びながらフィニッシュすると、形の変化した鎌からギザギザの音符の弾が大量に飛び出した。
音符とベルたちの連鎖魔法がぶつかり合い、ものすごい衝撃波が辺りに飛び散る。
「…………。アナ。迎撃。」
「了解なのだ!」
この魔法と音のぶつかり合い、もしここでシャーロットの攻撃がベルたちの合体魔法を打ち破られてしまった場合、ベルたちが勝つのは困難を極めるだろう。
「…………来た。」
「セイクリッドフィスト・連打! なのだ!」
それはなぜなのか。
ベルの使える連鎖魔法は最大同時に三つまでであり、これ以上の威力の魔法を放ちたければ更に詠唱時間を伸ばさなければならない。
「なのなのなのなのなの!! っだぁ!」
しかし、そんな時間をシャーロットが作らせてくれるわけがない。
いや、例えそんな時間があったとしても通用するかは分からない。
通用しなかった場合……その時は…………
「あら、これも防いでしまうんですの? 思ったよりもやりますわね」
「…………詰み。」




