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第1話 崩壊、そして始まり

◇……視点変化

◆……過去、回想

------……場面変化、時間飛ばし


「故郷を失った少年、最強絵画の少女とともに冒険者をする~故郷の謎を解明する旅~」

をお楽しみください。

◆◆◆◆◆


「いや! いや! なんで…………! 母さん……! 父さん……!! おきてよ……! ねぇ……!!」


とある村に、一人の少年がいた。

少年は囂々と燃える村を前にして、ただただ両親を揺さぶることしかできない。

耳を傾けずとも人々の悲鳴が鼓膜を殴り、地獄の怨霊が飛び回るように火の粉が舞い、肉と血の焼ける臭いが鼻に這い寄り……まさに阿鼻叫喚と言うべき惨状が少年の前に広がっていた。


「おい、ガキ!! そこでなにしてんだ!? さっさと逃げねぇと死ぬ……ぞ……」


青髪の男が腹から声を張り上げて少年にぶん投げる。

それでも動く気配のない少年を見て、男は少年を抱えようと乱暴に腕を伸ばそうとした。

しかし、男はその少年の両親だったであろうそれを見て、数舜動きを止めて目を滲ませる。

男はゴシゴシと音が鳴るくらい大仰に目を擦り、少年を強引に抱え込んだ。


「や、やだ……!! やめて……!! おれは……!!」


この少年は辛いだろう、悲しいだろう、胸が張り裂けるような気持ちだろう。

この少年の両親も無念だっただろう、子どもの成長を見守ることもできず、さぞ無念だろう。


男は手のひらに爪が食い込む程拳を握りしめ、プルプルと体を震わせる。


……今は怒りに身を支配されている場合ではない。

早く、この少年を連れて逃げなければ……!

身を賭して我が子を守ったであろうこの二人のためにも……


「……行くぞっ!!」

「いやだぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


少年は男に抱えられたまま叫んだ。

そうすることしかできないから。

自分の力全てを使っても、それ以上にできることはないから。

しかし無情にも、その力が込められた慟哭は、なにも齎さない。


(本当は遺体を回収してやりたい……!! が、そんな暇はねぇ……。ごめんな……ごめんな……!)


この男もまた、無力感に苛まれていた。

自分にもっと力があれば。

誰もが抱くその普遍的な願望は、やはり叶うことはないのだ。

しかし、男はそんなことは分かっていた。

だからこそ、少年の慟哭を受け止めながら頭をわしゃわしゃと掻き混ぜるように撫でた。


「今は逃げるしかねぇ!!」


男は走った。

走り続けた。

こうして逃げることしかできない自分に苛立ちを覚えながら、ただただ走り続けた。

走り続け、やがて橙色の光が背中に届かなくなった。



◆◆◆◆◆



「エル、おはよう」

「あ、アクス。おはよう」


ぴちぴちな服で眠そうな目を擦りながら出てきた青髪の男……アクスはそのままイスに腰を降ろした。

腕は丸太のように太く、大地を踏みしめる足は熊を思わせる程に逞しい。

そのガッチリとした体型から鍛え抜かれ、数多の戦場を駆けたことが一目で察せられ、まさに歴戦の戦士という言葉が相応しい風貌である。


「エル、毎朝すまねぇな」

「これくらいお易い御用だよ」


エルと呼ばれた青年は、やや幼さが残りながらも大人を香らせるようなくっきりとした顔立ちで、人によっては大人と見間違える。

そんな容姿だ。


エルはフライパンを揺すり、オムレツを皿に盛り付ける。

そして、その皿に先程洗った葉野菜を綺麗に乗せる。

金と遜色ない輝きを放つ卵と、自らが新鮮であると主張するように鮮やかな葉野菜は、白い無地の皿を背景に踊っているようだった。


「特製オムレツ! 召し上がれ!」


エルは皿をテーブルに乗せ、アクスの目の前までスライドさせる。

もうひとつの皿も乗せ、フォークを取りに行く。


アクスは目を輝かせ、手掴みで食べ始めてしまいそうなくらいに身を乗り出すが、まだ手をつけない。


「おまたせ」


エルはフォークをアクスに手渡し、自分もフォークを持つ。

そうしてイスに腰掛けて手を合わせ、それを見てアクスも手を合わせる。


「「いただきます!!」」


食材に感謝の声を届け、いざ食べ始める。


まずはアクスがフォークでオムレツを一口大に切り分ける。

オムレツは抵抗なく切られ、美しく層になった断面を覗かせた。

それをそのまま口に運び、噛み締めた。


「ん~~!! やっぱりうめぇな!」


アクスは気持ちの良い笑顔を浮かべ、飢えた獣が如き勢いで喰らう。


「あはは、いつも美味しそうに食べてくれるな」


エルもオムレツをフォークで切り分け、噛み締める。

オムレツに含まれた油がじゅわっと、そう音が鳴ったと錯覚するくらいに染み出て、それが卵の甘味をこれ以上ない程引き立てる。


「~! うまいな!!」


二頭の飢えた獣は無心でオムレツを喰らい続けた。

刹那に空になってしまった皿を洗い、水に漬けたまま扉を開けて外に足を踏み出した。



--------------------



「さて、食後の運動といくか。」

「あぁ、よろしく頼む」


俺とアクスは朝ごはんを食べた後、平原に移動した。

太陽の光を遮るものがない、見晴らしの良い平原だ。


俺は短剣、アクスは大剣だ。

事故を防ぐため、互いに木剣である。


両雄向かい合い、剣を正眼に構える。


「準備はいいか? エル」

「ばっちりだ!」

「それじゃあ……いくぞっ!!」

あらすじにある通り、現在1話から推敲作業中です。

タイトルの話数が正しく更新されている話までは推敲が完了しております。

大きく展開を変えることは考えていませんが、戦闘シーンやキャラクターの能力などは結構いじりたいなと考えています。

また、キャラの掘り下げのために大きく加筆しようと思っています。

それに伴い、一部キャラクターのデザイン(描写)、性格、口調を変更しています。

以上のことを許容してこの先の話を読んでいただけたら幸いです……

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