王の帰還★
カーネル城下町の北側、一郎たちがピクニックしている湖から少し離れた森の中、赤色の肌をした少女が、自分の身の丈より大きな岩に、手の平を当てている。
赤い少女が触れた岩石に亀裂が入ると、四方に広がって人の形に成す。
「Это 6-й кузов」
少女は何かを呟きながら、手にしていた魔道具を人型に押し当てると、岩肌が赤黒く溶け出して、彼女の腕を飲み込んだ。
赤い少女が岩石から腕を引き抜いた次の瞬間、岩石は四方に広げていた手足を使って四つん這いになり、彼女の後ろに立っていた五体のゴーレムの隊列に加わった。
「ガミザマ、ミガダ、オレダチ、カツ、ゼッダイ」
少女の所業を見ていたゴブリンが、カタコトの人語で話しかける。
木陰には、赤い少女に話しかけたゴブリンの他にも、数十体のゴブリンが身を隠しており、彼らは戦場に転がる兵士の遺体や、冒険者から追い剥ぎした鎧を纏っており、手には錆びた剣や片手斧で武装していた。
「Есть ли другой катализатор?」
「ゾレデ、ゼンブナイ」
赤い少女には頭にツノが、腰の辺りに尻尾が生えているものの、獣人とは異質なオーラを放っている。
ゴブリンたちが集めた魔道具を岩石に埋め込んでゴーレムを作った赤い少女は、話しかけたゴブリンの背後に視線を向けた。
「Остался еще катализатор」
「アレ、ヂガウ、ナガマ」
「Нежить сильнее гоблинов」
「ヨゼッ、ガミザマ!」
赤い少女は、眼の前に立っていたゴブリンの土手っ腹を貫手で貫くと、醜悪なモンスターから取り上げた、片手斧を体内に押し込んだ。
「ゼンイン……ニゲロ……ゴロザレル……ニゲロ」
「ヒィッ、アニギヤラレダ! ニゲロ!」
「ガミザマっ、ナンデ!?」
片手斧を体内収めたゴブリンが地面に倒れると、赤い少女は表情一つ変えずに、緑色の血に汚れた手刀を舐めた。
息を引き取ったゴブリンが、アンデッドモンスターとして復活して立ち上がると、赤い少女は、敗走している武装したゴブリンを殺すように命令する。
「Я не могу убежать」
赤い少女が背中を向けるゴブリンに手を翳すと、まるでテレポーターのように、無詠唱で空間転移魔法を発動して、彼らの進行方向に先回りした。
「ナゼ、ガミザマ、オレダチ、ゴロス?」
「Повелитель демонов вернулся на землю людей.Мы заберем Повелителя Демонов」
「ワガラ……ナイ、ガミザマ、ユルジデ」
「Нет」
赤い少女は、ゴブリンたちの首を手刀で刎ね、貫手で心臓を貫いた。
彼女は、たった一人で数十体のゴブリンを惨殺すると、彼らが纏っていた鎧や武器を触媒にして、アンデッド系のモンスター軍団に作り変える。
「Возвращение короля ……Желание дьявола наконец сбывается」
無詠唱で空間転移魔法を発動して、魔道具や武具を触媒に岩石からゴーレム、ゴブリンの遺体をアンデッドモンスターに作り変えた赤い少女こそが、あらゆる種族と戦争中の悪魔だった。
名前:???
種族:魔族
職業:悪魔
魔力:???
ここで物語は、折返しになります。
この先の展開について悩んでいるので、
感想や評価を頂けると嬉しいです。