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セクハラ反対!

 一郎はカウンターの奥にある事務所から、リエリッタとカリアナの仕事ぶりを見学している。

 受付開始時刻はそれほどでもなかった来客だが、正午近くになると、クエスト依頼者の窓口に列が出来た。

 依頼者からクエスト内容を確認するのがリエリッタだけなので、来客が重なれば対応が難しくなる。


「リエリッタさん、仕事を教えてくれたら僕も手伝います」

「普段より依頼者が多いから助かります」


 リエリッタは、やつれた顔で一郎の申し出に感謝した。


「どうすれば良いですか?」

「イチローは、列に並んでいる方に依頼書を配って、クエスト内容を記入してもらってください。私は提出されたクエスト内容を精査して、酒場に貼り出すか、ギルドメンバーに仕事を回すか仕分けします」

「僕の仕事は、それだけで良いんですか? もっと手伝えますよ」


 リエリッタは依頼書を配布しながら、依頼内容を確認して、受けられるクエスト内容ならば、それを会計のカリアナに回してクエスト料金の徴収したり、一階の掲示板に貼り出したり、ギルド長やパーティーリーダーに伝えたり、八面六臂の活躍である。


「午前中は、クエスト依頼の受付け業務だけです。午後は、書類で判断できないクエスト内容の依頼者との面談があります。依頼者との面談には、イチローにも立ち会ってもらいます」

「仕事の本番は、午後からってことですか」

「そうです」


 一郎は、列に並んでいる依頼者に用紙を配布すると、提出された書類と引換えに番号札を渡した。

 リエリッタは、提出されたクエスト内容を料金表に照らし合わせて、相場より安ければ酒場に貼り出してフリーの冒険者に、妥当なものなら冒険者ギルドに所属する冒険者に仕事を割り振っている。


「基本的には、依頼金額が安くても全部引受けるんですね」

「掲示板に貼り出すクエストは、クエストを受ける冒険者が一ヶ月間いなければキャンセルされるし、フリーの冒険者に支払う報酬でも、ギルドには三割の手数料が入ります」

「なるほど。フリーの冒険者に安過ぎると判断されたら、結果的にはキャンセル扱いなのか」

「あと金額の大小だけで判断できない依頼は、昼食後にルイズさんやパーティーリーダーにも相談したり、依頼者に面談したりするのよ」

 

 一郎はメモに取る。


「さて、とりあえず午前中の仕事が終わったから、イチローは、そこのクエスト内容を一階の掲示板に貼り出して、そのまま昼休憩しちゃって良いよ」

「了解」


 リエリッタが書き出したクエスト表を手にした一郎は、階段を下りてフードコートのような冒険者の酒場に向かう。

 彼は途中、大弓と矢を担いだエリアロスとすれ違うと、紹介状を書いてもらった礼を言った。


「イチローは、今日から二階で働くんだったよね。うちの事務員は、こき使われて大変だろう」

「はい、それはもう。エリアロスさんの紹介で、超ブラック企業に入社できて嬉しいです」

「言葉に棘があるけどさ、二階の職場は、ルイズさんの趣味で美人ばかり集まっているし、ちょっとハーレム気分が味わえて良かったな」

「はい、どうやら僕も、ルイズさんの趣味だったようです」

「マジか……、それはマジで悪かったな」


 エリアロスの後ろから、ガッチャン、ガッチャンと鎧の足音が近付いてくると、階段をルイズが鬼のような顔で上がってくる。


「イチロー、オレは貴様なんか趣味じゃねえぞ。エリアロスも事務員と立ち話している暇があるなら、もっとクエストを消化して稼ぎやがれ」


 エリアロスが『あ、急用を思い出した』と、一郎とルイズを残して逃げた。


「す、すいません……、ルイズさん、僕そんなつもりじゃなくて」

「わかってるよイチローくぅん♡ でもオレたちの仲は、みんなに秘密だって言っただろう。オレにはギルド長としての立場もあるし、次からは気を付けてくれよ」


 天使のように微笑んだルイズは、一郎に顔を寄せて甘い声で囁いた。

 女物の香水に鼻孔を擽られた一郎は『うッ』と、小さく呻いて前屈みになってしまう。

 金髪碧眼のルイズは、半陰陽なのだから紛うことなき女の子でもあった。


「イチロー、デートの約束は忘れてないだろうね? キミは、その身体を使って採用されたんだぜ」

「ルイズさんっ、まってください! ぼ、僕は、身体を使ったつもりはありません」


 ルイズは、もじもじしている一郎を鼻で笑う。


「イチローが昨日、オレにしたことを忘れたのか? オレを女にしたのは、お前なのだ」

「ぼ、僕は……、仕事に戻ります!」

「ああ、きびきび働けよ」


 階段を泣きながら駆け下りた一郎は、セクハラされる女性の気持ちが理解できたと同時に、腐女子の食い物にされている気分だった。

金髪碧眼のめちゃくちゃ可愛い姫騎士プリンセスナイトを想像してください。それがルイズです。

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