田中一郎は魔力ゼロで城から追放されたけど、超能力が使えるので異世界ライフを満喫します
紅い水銀とは、召喚士アリッサが異世界人を召喚するために使用した触媒で、カルバン国王は紅い水銀を入手するために、カーネル王国の国費を注ぎ込んでいた。
カルバン国王は異世界人の召喚を『勇者召喚』と称して、家臣団の反対を押し切って多額の予算を投じている。
なぜならカルバン国王は、隣国サザーランドで召喚された異世界人が、この世界の住人を凌駕する桁違いの魔力を秘めていたことを知っていたからだ。
しかしアリッサは貴重な紅い水銀を使用して、魔力ゼロの田中一郎を召喚してしまった。
「王様は、魔力ゼロの僕に興味がないようです。短い間でしたが、お世話になりました」
「田中様、お待ち下さい。元の世界に帰る方法が見つかるまでは、城に残って頂きたいと思います」
「わかりました……、あたしは、山田様とご一緒させて頂きたいと思います」
「ワシは、お前の望みを叶えてやろう。無能な召喚士アリッサは、魔力ゼロの無能者を連れて何処にでも行くが良い。お前は、クビだ」
「あたしのわがままをお許し下さり、ありがとうございます」
「苦しゅうない」
※ ※ ※
荷造りを終えたアリッサが部屋を出ると、一郎は革袋から金貨、銀貨を出して数えていた。
「そのお金は、どうしたのですか?」
「王様から慰謝料としてもらった。僕は異世界に身寄りがないし、当座を凌ぐ金が必要だからね」
「田中様を心配して生活費をくださるなんて、王様にも優しさが残っていたのですね」
「王様って優しいよね〜」
魔力ゼロの田中一郎は超能力者であり、遠くの物質を手元に取寄せるアポートが使えた。
一郎は王様の財布から多額の慰謝料を勝手に頂いていれば、正確を期すなら、王様ではなく、王様の財布から慰謝料をもらったのである。
本編に続きます。