第1話 ケツの痛みと美少女
「ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ・・・・・・!!」
時刻は8時37分。学校の始業開始時刻まで残り7分。学校までの距離、およそ2キロメートル。
「遅刻確定じゃねえかよ・・・・・・!!」
大空高校の2年生、東山凌空は、4月6日、すなわち始業式の日に、寝坊をかまし、今まさに自慢のクロスバイクを懸命に走らせている。
「おっ! あそこのコンビニで半分! ワンチャンこれ間に合うんじゃね?」
そう思って立ちこぎの体制になり、足の回転を速めたその瞬間・・・・・・
前しか見えていなかった俺は、目の前の大きな段差に気付かなかった。
フルスピードで段差に突っ込んだクロスバイクは大きく跳ねる。
跳ねると同時に、クロスバイクのサドルが立ちこぎによって無防備となっていた俺の尻に突き刺さる。
過ぎることコンマ数秒。
俺は絶叫した。
「いや、イッテェーーーーーーーーーー!!」
今までに感じたことのないような痛みが尻中に広がる。
あぁ、痛い。これもうまじイテェよ。地獄の刑罰の一つに入れるといいわ。そんくらい痛いもん。
俺はそう思いながらふと、自分の尻を見た。
「血は、出てないよn・・・・・・? いや、ちょっと出てるし・・・・・・ あぁ、これどうすんの? 学校休むしかないか。でも何て言うの? 『すみません。お尻から血が出てるので今日休ませてもらいます。』って言うのか!? 馬鹿馬鹿しいし、恥ずかしいわ・・・・・・」
俺は現実から目をそらしたいが為か、幼き小学校生時代を思い出す。
――あれは晴れた日のことだった。5年生の総合の時間。あの日はみんなで鬼ごっこをしていた。
「バーリア!! これがあるから俺は捕まりませーん」
「うわ、お前そんなんずりぃだろ!」
「かなちゃん足早くね!? 俺男子なのに負けちゃったよー」
捕まったのにもかかわらず、いかにも小学生らしい意味不明な言い訳をする者や、気になる女の子と合法的にお近づきになれる機会だとわざと好きな女の子の所へ捕まりに行く者など、様々な生徒がいた。
そんな生徒達の溌剌とした声が飛び交う中、その叫び声に、全校生徒が注目した。
「イッターーーーーーーーーー!!」
その叫び声には気になる女の子を追っかけまわしていた俺も流石に注意を持っていかれた。
や、やめろ! その話をするな! いやあの頃の俺キモ過ぎだろ。
結局あの子、バレンタインチョコ余ってただけなんだよな・・・・・・。
そんな話はともかく、どうやらとある男子が浣腸の手加減を誤ってしまったらしい。
浣腸を受けた生徒は泣いていた。
ただ事ではないという気配を察して複数の先生が現場に駆けつける。
そして状況を把握した先生はこう言ったのだった。
「浣腸しちゃいけませんよ! 当たり所が悪かったりすると血が出るんですからね!」
――あれってホントだったんだね。後似たようなやつで、傘の柄で後ろから男の急所狙うやつあったよな。浣腸よりあれのほうが嫌だった。雨の日は絶対に友達の後ろ歩いてたまであるわ。
「はぁ、とりあえず邪魔にならないところに移動しないとな。あぁ、歩くだけでもケツ痛いわ・・・・・・」
俺はズキズキと痛む尻の痛みを我慢して人通りが少ないところにクロスバイクを移動させた。
痛さで全然気が付かなかったのだが、一連の騒ぎで俺はまぁまぁの注目を受けていた。
クロスバイクのサドルってママチャリのより尖ってるし、それが悪かったかな。
こんなんで尻から血を出すの何て、きっと世界に俺一人だろうな。
全く、嫌な気分になってきた。
せめて、同じ目にあってくれる人がいればいいのにな――
その時、大空高校の制服を着た女子生徒が猛スピードであの忌々しい段差に向かってきているのが視界に映った。
背中まで美しく伸ばされ、蝶柄のヘアアクセサリーで華々しく整えられた艶やかな黒髪に、出るとこが出ている高校生の域を逸脱したといってもよいであろう完璧な体型。目は少し切れ長で凛とした雰囲気を醸し出しているが、くりくりしていて大きな瞳は可愛さを感じさせる。
遠くから見てもわかる。
アニメや漫画でしか見たことがないような、超絶美少女だった。
お読みいただきありがとうございました!
久しぶりの投稿になります。
実はまだ書き溜めがさほどたまっていないのに、これ早く読んでもらいたいわ!!ってことで相変わらず後先考えずに突っ走ってしまいました。
おそらく1週間ほど書き溜めを書く時間になると思います。
その間、ブクマでもして気長に待っていただけると幸いです。ブクマでもしてね! ブクマね!! 1話の時点で感想くれてもいいんですよ?(何様!
今後ともよろしくお願いします。