俺と聖教会4
「そんな顔をするんじゃないよ。とりあえず、ドゥーン、お前はクレイエル教会に来てもらう。しばらくの間、アタシらと一緒に行動してもらうよ」
拒否権なんてあるわけなかった。
このままここに残っても、血の臭いを嗅ぎ付けた魔物たちの餌になってしまう。
「わかった」
そう答えると、ジャスミンは満足そうに頷いた。
ラウラも安心したようにため息をつく。
「日が傾いてきたね……今日はここで一晩明かして、明朝出発するとしよう」
ラウラはそう言って礼拝堂の奥の部屋へと歩いていく、俺とジャスミンは彼女の背中を追った。
やや上機嫌のジャスミンを警戒しながら、薄暗くなった礼拝堂から出ていく。
隣の部屋は教会に奉公する神父様たちの部屋だった。
ラウラはカーテンを締め切ると、小さな蝋燭を点す。
室内が薄明かるく照らされた。
改めて室内を見回す。
思った以上に簡素な作りだった。
「ドゥーン様! 夜はアンデット系の魔物が多いから、絶対に外に出ちゃダメですよ!」
アンデット系モンスター……霊体やゾンビなどだろうか。
本当にゲームの世界みたいだと一人頷く。
「アンデット系の魔物は切っても引き裂いても潰しても駄目なんで、私でも勝てないんですよー」
死霊系のモンスターに物理攻撃は効かないのは当たり前だ。ゲームの知識だけど。
そうなると、対抗手段がない。
「枢機卿クラスなら、祈りの力で退治できるんだけどね。アタシらじゃあ、厳しいから出会わないのが一番さ」
――枢機卿って何する人だっけ?
――祈りの力ってなんだ?
「枢機卿と言えば、アルメリアさま!」
ジャスミンが言うが、その名前に聞き覚えはない。
枢機卿猊下と関わりがないのだから当たり前だ。
「アルメリア・リラ・ロベルタ枢機卿。今、一番、力のある枢機卿さ」
アルメリアという名前から女性だと言うことはわかった。
聖女って、ジャスミンよりもその人の方が合ってるんじゃないかと思ってしまう。
「ロベルタ枢機卿は教皇聖下の異母兄妹でね。さっきも話したけれど、神の声を聞き、聖下の補佐をしているんだ」
――やっぱりその人が聖女なんじゃないのか?
ラウラの言葉を聞き、その思いが強くなる。
ジャスミンを聖女と認めたくない気持ちも大きい。