俺と聖教会2
聖教会で保護されるということは、ジャスミンと暫く一緒に活動しなくてはならないのだろう。
今はラウラの前だからか大人しいジャスミンだが、いつまた豹変して俺を狙ってくるかわからない。
翼竜を楽々と倒せるほどのヤンデレから、そう簡単に逃げることはできないだろう。
いくら助けられたとは言え、彼女に心を許すことなどできない。
いつか殺される、そう思いながら一緒に過ごすのも辛い。
「ちょっと、ボウヤ! アタシの話を聞いていたかい?」
考え込んでいるとラウラに声を掛けられた。考え中で聞いていなかったので首を横に振る。
ため息をつかれてしまった。
こっちは、死んで目覚めたと思ったら、異世界の別人になっていて、更に魔物に襲われるという訳のわからない展開に混乱しているんだ。
ラウラにそこまで理解は求められないけれど、少しは多めに見てほしい。
「ああ、悪かったね。いくら何でも気持ちが追い付くわけないか」
ラウラは察してくれたらしい。
翼竜に町を壊滅させられたことについてだが、それでもわかってくれたのならいい。
実際に悩んで考えているのは転生の方なのだけれど。
「でも、実際問題、壊滅した町にあんた一人をおいておけないんだよ。ええと」
「ドゥーン。ドゥーン・アントラットだ」
俺が名乗ると、ラウラは話を続ける。
「そう、ドゥーンね。街は壊滅、翼龍はジャスミンが討伐したが、血の臭いが濃くなっている。まぁ、これだけの人間が亡くなっていたら当然さね。その臭いに釣られて他の魔物も出てくるんだよ。ここも、安全じゃない」
その話を聞いて俺はゾッとした。
「生憎、アタシは戦闘向きじゃあないんでね。街の調査と住民の救出が任務だったのさ」
ラウラはそう言ってジャスミンを見た。
わざわざ同行したのだから、もしもの時はジャスミンに戦わせてラウラは後方支援に回るつもりだったのだろうか。
街を襲った翼龍の群れは、ジャスミンがナイフ一本で片付けてしまった。
どちらが魔物だかわからない。
「ジャスミンはこんなんだけど、聖教会で は“救済の聖女”なんだよ」
聖女? 聖女って聖なる乙女のことだよな? 狂戦士のことじゃなくて。
フランスのジャンヌ・ダルクが頭に思い浮かんだ。ゲームでもジャンヌをモデルにした聖女系キャラが出ていたが……。
「どの辺が、聖女?」
本音が思わず口に出てしまった。