3.前練習
いつものように家族四人で夕食をとり、もうすぐデザートが来るといった頃、
「ディアナ。夕食後、私の部屋に来るように。」
父が少し真剣な顔でディアナに告げた。
ディアナは、何か問題を起こしてしまったのかしら、と思ったが心当たりがない。
「はい。」
不安そうな表情で返事をすると、父は困ったように笑って何か言いたそうにしていたが、黙ってスープに口をつけた。
詳しいことはお父様の部屋で、ってことなのかしら。
ディアナもそれ以上は何も言わずデザートが来るのを待った。
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デザートも食べ終えたディアナは、先ほど父に言われたように父の部屋へと向かった。
コンコン
「お父様、ディアナです。失礼します。」
部屋に入るとソファに座るよう言われたため、大人しくソファに座る。
「ディアナ、今日呼んだのは叱るためではないよ。社交界デビューについて少し話があるんだ。」
父は穏やかな表情で話し始めた。
「いきなり社交界デビューというのはディアナも少し不安だろう?だからその前練習をしたらどうかと思ってね。」
「前練習、ですか?」
「ああ、そうだ。お母様の付き添いでとある公爵家のお茶会に参加しておいで。」
「こ、公爵家で、、」
今までにも母主催のお茶会には何度か参加したことがあるディアナだが、他家のものには参加したことがなかった。ましてや公爵家などもってのほかだ。
さすがに前練習といってもハードルが高いのではないかと思ったが、父の優しさを無下にするわけにはいかない。
「わかりましたわ、お父様。まだマナーなどは完璧とは言えませんが、、できるかぎり頑張ります。」
「ディアナ、そんな身構えずに。お茶を飲むだけと思えばいいんだよ。」
父は安心させるように微笑みながら、
「詳しいことは明日お母様から聞くように。もう部屋へ戻って休みなさい。」
とディアナに告げた。
「はい。失礼致します。」
なんだか重要なことを聞きそびれたような気がしたディアナだったが、少し疲れてもいたので部屋に戻ることにしたのだった。