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同じ村で育ち、同じ学校に通う修三と晃は、まだ日の出前の早朝4時に村のはずれで落ち合った。
大きな荷物を背負った二人は、暗い道を甲斐山に向けて歩いて行った。
「なあ、本当に大丈夫なのか?」
晃は隣を歩く修三に問いかけた。
「おう!俺の方は完璧だ。お前の方は大丈夫なのかよ?」
「いや俺の方っつっても、俺の用意するもんは普通のだから何の心配もないけどな。」
二人は少し緊張して話ながら、白んできた空の明かりを頼りに甲斐山に踏み入った。
しばらく歩いた後、晃が修三に話しかけた。
「あてもなく彷徨う羽目になるかと思ったけど、獣道っつーの?一応道っぽいのがあって良かったな。」
「これがどこに続いてる道か分かんないけどな~、まぁこの山で用のある所なんてひとつぐらいだろ。」
「おい、道から逸れるなよ!帰って来れなくなるぞ。」
修三は晃に言われて初めて自分が獣道から逸れている事に気づいた。獣道はまっすぐ伸びておらず、更に山深くなるにつれ周りの雑草に隠され分かりづらくなっていた。地図も何も持っていない二人は、少しでも道をそれれば遭難の可能性が高くなり、修三はヒヤリとして足元を見回した。
「お!キノコじゃん。」
修三は、傘が大きく広がった茶色いキノコを無造作にむしり取って、バックパックに入れた。
「いやいや、流れるように何してんだ?それ毒キノコだったらどうすんだよ。」
「これが食えるか食えないかは持って帰ってじいちゃんに見てもらうから大丈夫だ。」
「お前のじいちゃんこの前犬に小遣い渡そうとしてたぞ!本当に大丈夫なのか?」
「それは知らねえけどキノコの事なら大丈夫だろ。あっそこにもキノコあるぞ!もう俺のバックパックに入んねえからお前のポケットに入れといてくれよ。」
「このジーパン尻ポケットに穴開いてるから無理。」
「え?なんでそんなもん穿いてくんだよ。」
二人は下らない話をしつつ、道を進んだ。途中獣道を見失う等の危険もあったが、なんとか道に戻り、そしてついに目的の場所まで辿り着いた。
「おぉ、本当に洞窟があったぞ!」
「寛治のおっさんが言ってたのは本当だったんだな!」
二人がこの山に踏み入った理由は、頭がおかしくなったとされている寛治の言葉が原因だった。