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甲斐山のうわさ  作者: ハム
S—part
6/16

6



 男が事態についていけず驚いているうちに、二人は男の元から離れていった。


 一方、和男の声が聞えた村の大人達は、二人に声をかけ続けた。



「お前たち無事だったか!」


「それ以上そっちに行っちゃいかんぞ!」


「早くこっちに戻ってこい!」


「春子ー!」



 村の大人達の一団の中には春子の父もいた。

 ガスマスクを被ってはいたが、すぐに父親を認識した春子は走って父の元に行った。



「お父さん!」



 無事二人を発見した大人達はすぐに道を引き返して足早に洞窟を出た。

 そして、洞窟から十分な距離をとったところで一行はようやく足を止め、ガスマスクを外した。一息ついていたところで、洞窟には入らず一行を待ち受けるように立っていた男が和男と春子を見つけ、話かけてきた。



「おい!最初から二人だけだよな!?誰もいなくなってないよな?!あいつらはいなかったか?!」



 二人はいきなり見知らぬ大人に詰め寄られ、唖然としていた。



「寛治!何で着いてきた!」


「また訳の分からない事を言うんじゃない!」


「訳の分からない事じゃない!また誰かを忘れたかも知れないんだぞ!」



 二人を助けに来てくれたのは、唯一この山に立ち入る事を許されている調査隊の大人達だった。その大人達と寛治と呼ばれた男は何やら二人の分からない事で言い争いを始めてしまった。

 そんな一行を眺めながら、娘を見つけた安堵で少し気の抜けた春子の父が二人に説明をしてくれた。



「あいつぁ30年前に、ここの毒ガスを吸って頭がおかしくなっちまったやつだ。」


「おかしくって、どういう…?」


「あいつは、あの洞窟に入ったのは俺だけじゃなくて他に二人いて、雄三と源太っていう村で育った幼馴染みと一緒に入ったんだ、って言ってな。」


「それのどこが頭がおかしいの?」


「村にはな、そんな名前のやついねぇんだよ。でも寛治は雄三は田村んとこの三男で、源太は土屋のとこの長男だ!って言ってな、もちろん2家ともそんな名前の子供産んだ覚えもねぇし、知らねぇつってな。でもそれを聞いても寛治はそんなはずねぇ、俺は二人と一緒に育ったんだつっていもしねぇ二人との妄想の思い出を話しだしてなぁ、…だから、あいつは毒ガス吸って気が狂っちまったんだってなったんだよ。」


「でもな、そんなあいつのおかげでおめぇ達が山に入った事を知ったんだよ。」



 和男と春子が春子の父の話に聞き入っていると、横から他の調査隊の大人達が話かけてきた。



 

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