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その男の様子に若干落ち着きを取り戻した和男は、
「ネ、ネ、ネズミってもしかしてそれ、それの事ですか?」
「?ああ、ネズミつったらこいつの事だんべ?こいつの耳さ切り落とそうと思ったらよ、遠くに明かりが見えたから誰かいんのかと思ってよ、毒の手前だけんどこっちさきただよ。」
「み、みみを切り落とす?」
「ああ、こいつの討伐部位は耳だかんなぁ、ギルドで金さ貰うんに必要だかんな。」
「とうばつぶい?ぎ、ギルド?」
二人はパニックになった直後に聞きなれない言葉を聞き混乱していた。
「ああ、そんでよ、オラは暗視のスキル持ちだけんど、ちゃんとした明かりがあるならそっちの方が見やすいからよぉ、ちっと明かりを分けてもらおうと思ってこっちさ来ただよ。」
二人は最初男が何をいっているのか理解できなかった。こんないい歳をしたおっさんが、ギルドやらスキルやらゲームか漫画のような事を言っているのが衝撃で、でも二人はすぐに男のもつ異形のものの頭部を思い出し、男の言った事を反芻して理解しようと努めた。
「えーっとその、あの、ギルド?とかその化けも、いやネズミ?とかスキル?とかって、何なんですか?」
「こ、ここは、どこなんですか?」
「はぁ?何っつわれても、」
男が二人の問に答えていたとき、二人の後方からガヤガヤと複数人の話声が聞えてきた。
「これ以上は危ない!」
「でも道が開いているぞ!」
「もう渡ってしまったんじゃないか?!」
「春子!和男!」
その声にはじけたように振り向いた二人は、遠くにいくつもの白い光を見た。
「!ここ…」
すぐに後方に向けて声をあげようとした二人だが、男のいぶかしむ声に遮られた。
「なんだぁ?!ここは一本道であっちは毒の行き止まりのはずだで、何で向こうから声がすんだ?おめえ達より先に奥さ行ってたのか?」
「あっちにはもう一本道があって、俺たちは向こうから来たんだよ!村の大人達が俺たちを迎えに来てくれたんだ!」
「何言ってんだ?そっちは毒があって危ねぇんだぞ?」
「ガスマスクを付けてるから大丈夫だよ!おじさん俺たち帰るよ!春子、立てるか?」
「うん、うん!」
「おーい!!俺たちはここだ!春子も無事だ!じゃあおじさん俺たちは帰るね!」
「がすます?あっ!おめえ達!」