5
「はぁ、もうすぐ外かな…。」
「ああ、もう結構歩いたぞ…!」
「とりあえず気持ち悪いのも収まったみたいだけど、お前は?」
「俺も大丈夫。でもちょっと疲れた…。」
少し休憩して息を整えていた二人の耳に、突然ヂヂヂという音が前方の方から聞えた。
「ん?今なんか音したよな?」
ギヂヂ、ヂヂとまた音が聞えてきた。
「虫か?ネズミか?」
晃は不安そうに辺りを見回して、腰に下げている懐中電灯で奥を照らした。
「おい、あそこに何かいるぞ!」
同じように自分の懐中電灯で前方を照らした修三は、背を向けて這いつくばる何かの姿を見つけた。
一瞬幼児か?と思ったが違う。暗くてよく見えないが、それが普通の動物なんかではなく妖怪のような化け物のような異様な存在である事を二人とも感じた。
「よし。とりあえずあれをネズミだとして、」
「えっ何で?!どうみても違えよ!俺たち今あれは普通の存在じゃないって思ってたとこだったよな?」
「とりあえず、あのネズミを何とかしないと外に出れないよな。」
「え、無視?」
驚いた顔をする晃を無視して、修三はおもむろに自分のバックパックから先ほど山で採取したキノコを取り出した。
「…おい。」
そんなものどうするのかと晃は修三に視線で問いかけると、
「これを投げて食ってるうちに横を通る!もしこれが毒キノコだったら弱ってくれるかもしんないしな。」
「おお!いいじゃん!」
真っ暗な洞窟の中、毒で死にそうになりながらも外まで急いで、ようやく出口かと思ったら異形の化け物がおり、冷静な判断が出来ない状態だった二人はその案を最良の案だと思った。
そして、修三は化け物へ少し近づいた位置からキノコを投げた。
「いけ!キノコ!」