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洞窟前で騒いでいた二人だったが、その後修三から手作りガスマスクの詳しい作りを聞いた晃は、意外にしっかりと調べて本格的に作ってある事を知りった。材料のソーダ石灰とかどこで手に入れたんだよと内心思いながらも、赤い唐辛子のあまり可愛くないキャラクターを尻のポケットに入れ、修三の作った手作りガスマスクを着けて洞窟に入る事を決めた。
洞窟の中へ入ると、ひんやりとした水気のある空気に変わった。まだ5月の早朝で、山登りでかいた汗が張り付く体には肌寒く感じた。
地図など持っていない二人は、懐中電灯で暗い洞窟をそれぞれ照らしながら歩いた。
晃は、まだ少し信じ切れていないガスマスクの事もあり、長くいるとまずいという思いで修三を急かして、早歩きで洞窟を進んでいた。
この洞窟がどこまで続いているのか分からない、というより、本当にこのガスマスクを信用する事が出来ないし、そろそろ引き返して戻った方がいいのでは?と晃が思っていた時、急に懐中電灯の明かりに地面ではなく壁が映し出された。
「行き止まりか、なんもないただの一本道の洞窟だったな。ほら、さっさと帰ろうぜ。」
晃がさっきから静かな修三の腕をつかんで引き返そうとしたところ、
「うぅ、なんか気持ち悪ぃ。」
「え?!マジかよ!毒ガスの影響か?!早く外出るぞ!」
うつむいてヨロヨロしている修三の腕をつかみ、急いで出口に向かった晃だったが、自身も気持ち悪さと息苦しさを感じ這いつくばるように真っ暗闇の洞窟の中を進んだ。
これ以上はもうヤバい、と思った時、晃は洞窟に入る前の修三の言葉を思いだした。
「…そうだ、酸素缶!お前持ってるって言ってたやつ!」
修三と晃はヨロヨロになりながらも修三のバックパックから急いで酸素缶を取り出した。
そして暗い中手探りの状態で手にした酸素缶を口元に持っていき、勢いよく中身を吸い込んだ。
「ッハァ~~、アレ?ナンカマダクルシイナ…ってこれボイスチェンジャーじゃねぇか!」
「エ?アレ?ホントダ!」
「って他のも全部ボイスチェンジャーじゃねぇかよ!」
二人はまた急いで洞窟の外を目指した。
少し進むとまだ気持ち悪さは残っていたが、二人とも息苦しさは段々なくなってきていた。きっともうすぐ外が近いから毒ガスが薄まってきているんだろう、と二人は先に進む足を速めた。