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偶然と必然の魔法  作者: 亀の甲羅
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二人の姉妹

「魔法」——―――それは科学では証明出来ない、或いは人間の力では到底成し得ない不思議な力。または、ごく一部の人間が生まれながらにして使える特殊な能力のことを言うのだとか。

そんな能力を持ってる人間なんていないと思っている。実在したとしてもファンタジーやSFの世界の話じゃないのかと俺、土見(つちみ) 光介(こうすけ)は思っていた。


—――とある日。やけに教室内がザワザワしている。今日は特に変わった日でもないはずだが、今日はなぜか違っていた。



「なぁ、今日なんかやけにザワついてないか?」


「おお!土見殿!おはようであります!」


「おはよう。んで?何でこんなにザワついてんだ?」


「どうやら転校生が来るらしいんでありますよ…」


「転校生?何だそんなことか。そんなんでみんなザワついてんのか?」


「それが…普通の転校生とはちょっとワケが違うらしいんでありますよ」


「どういうことだ?」


「小生も詳しくは知らないであります。ただ、普通とはちょっと違う転校生が来るとしか聞いてないであります」



独特の喋り方をしているこいつは、佐久間(さくま) 英輔(えいすけ)。俺の同級生であり、昔からの友達だ。本人曰く"オタク"というやつらしく、こういう独特な喋り方をしているらしい。

転校生がワケありがどういうことなのか話していると、教室の扉が勢いよく開いた。



「よぉし。みんな席に着け~。ホームルーム始めるぞ」



———梅野(うめの) 静香(しずか)先生



普段から口調が強く男勝りな先生。どうやら過去に女番長やってたとかなんとか…そういう噂はあるようだが本人は否定も肯定もしていない。



「先生、転校生は男子ですか女子ですか?」



1人の男子がそんな事を聞く。確かにそこは俺も気になるところだが。



「女だ。…だからと言って変な考えは起こすなよ?私の前で変な妄想は許さないからな?誰がどんな妄想してるかは顔見りゃすーぐ分かんだからな!」



恐ろしい能力だ…。梅野先生に逆らって無傷で帰ってきた者はいないと言われているが、そう言われるのがよくわかる気がする…



「ま、そんなことは置いといてだな。…入れ。」



2人の女子が入って来る。1人は背が高くて、大人しそうだ。しかも結構デカイ…正直、目のやり場に困る。

もう1人はオドオドしている。背は俺よりちょっと低いぐらいか。

本人には悪いが…ぺったんこだ…


おぉ〜という歓声が上がる。それもそのはすだ。みんなの視線は一貫して「それ」を見てるのだから。




「あのなあ…お前ら……まあいい。2人共、簡単に自己紹介して。」


「私は佐伯(さえき) 美弥花(みやか)。よろしく頼む。」




口調がどことなく梅野先生に似てる気がする。

大人しそうに見えたのは俺の勘違いだったか…?




「わ、私は佐伯(さえき) 悠花(ゆうか)です…。よろしくお願い…します。」




ピタリと男子達の歓声が止む。お前ら単純過ぎやしないか…。





「お前ら…どこ見てんだ…全く…。」


「…梅野先生。私達の席はどこでしょうか」


「ん?ああそうだな。えーっと…」



必然なのか偶然なのかは知らない。

ただ俺の隣の席が1つ。更に俺の前に不登校で学校に来なくなったやつの席が空いていた。

恐らくこれは出来過ぎた偶然なのだろう。



「お、つっちーの近くの席が"偶然"空いてるな。じゃあそこで。」


「はい」


「…はい」



梅野先生は俺の事をつっちーと呼ぶ。いや俺だけではなく、他の生徒に対してもそうだ。

本人曰く、あだ名で呼んだ方が呼びやすいから。だそうだ。


…それにしても男子達の視線が痛い。いや男子だけじゃなくて女子からの視線も痛い。

男子からは羨望の目。女子からは軽蔑の目で見られている。そんな感じだ。

別に俺が自主的にここの席空いてますよ、とか言ったわけでもないのに。

全くもって不憫だ。




「仲良くしろよ〜?つっちー」


梅野先生が少しニヤニヤしながらそんな事を言う。…絶対確信犯だなありゃ。



「…よろしく頼む。」


「よ、よろしくお願いしますね…」


「は、はあ。よろしく…」





佐伯美弥花(妹)が俺の隣。佐伯悠花(姉)が俺の前、という席順になった。…まだみんなの視線が痛い…決定事項だ。諦めろ。


苗字が2人とも同じ。ということは姉妹なのか。と、そのぐらいは考えずともわかることだ。


「よし、2人の紹介も終わったことだし。つっちー…。HRが終わったら、その2人に学校ん中を色々案内してやれ。」


「ぅええ!?俺がですか!?」


「ぅええ!?じゃない!案内してやるんだぞ!分かったな?」


「はい…」



梅野先生に逆らうとろくなことがない。ここは素直に従っておくべきだ。



「よし。じゃあ早速今日の連絡だ。まず、先に言ったように今日は2人の転校生が来た。それはお前らもわかっているな。では次だが…今日の1限目から3限目までは全て自習とする。」



周りがざわつく。そらそうだ。なぜそうなるのか言われなくても大体わかる。"俺にこの2人を案内させるための時間"と言う意味での自習時間なのだろう。


「理由はわかるな?…つっちー。」


「大体察しはつきます…」


「よし!それならば話は早い。他の者は絶対につっちーの邪魔をしないように。もし邪魔をしたら…分かってるよな?」



冗談に聞こえない威圧感で俺以外の人を舐め回すように睨む。…いやきっと冗談じゃないのかもしれないが…


「他の先生達には私から話をつけておく。だから安心するがいい。つっちー。…と、そろそろHR終わりだな。んじゃ、そゆことだから、よろしく頼むぞつっちー。」


そう言って梅野先生は教室を出て行く。無責任にも程がある。いや無責任というか、全部俺に投げただけにも思う。



「…つっちーとか言ったな」


「は、はい!?」


急に声をかけられて驚いたのもあったが、まさかあだ名で呼ばれるとは思わなかったという驚きもあってダブルで驚いてる。


「私達にこの学校を案内すると梅野先生からは聞いたが」


「あぁ…ええっと…。」


「…まずどこから案内してくれるのだ?つっちー殿。私はどこからでも構わんぞ」


「えぇ…」


「どうする?美弥花。まずは昇降口から順番に———」


「わ、私はどこからでもいい…です…」


「だそうだ。ではつっちー殿。早速案内をして貰いたい。」


「…分かりました。あと、俺はつっちーって名前じゃなく、土見光介って名前がちゃんとあるから」


「む?梅野先生はつっちーと呼んでいたが?

違うのか?つっちーが名前なのではないのか?ならば失礼した。ふむ。土見光介、と言う名前なのだな?覚えておく。」


「ありがとうございます…」


「では早速校内の案内を頼むぞ。」



こうして、俺はクラスの男子達に疎まれながら教室を後にし、この姉妹を案内することになった。

だが、なんだか嫌な予感がする、のは気のせいなのだろうか…?





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