神聖魔王とコボルド
「なに、チンタラしてんですか」
何言ってんの、こんなにも早く……あれ? 手足がわらってる、うそぉ、さっきのは私の妄想ですか?!……力が入んないよ、恐い、恐い、誰か助けて、視界が段々見えなくなっていくし。
「何泣いてんですか! もう仕方ないですね、ホント世話が焼けるんですから」
私、泣いてるの? 「あれ?! あれ?!……動いてよ」股をなんども、なんども叩いた。
崩れ落ちてヘタリ込んでしまった。
「あ! 少し目を閉じてください」
閃光が辺りを包み込んでいく。
「くそぉ、見えじゃねえか!」
「おい! 誰でもいいから、突っ込め」
「逃がすんじゃねえぞ!」
むっさいおっさん達の必死な声が木魂した。
どんだけ私が欲しいんだ、嫌! 嫌! 襲われる恐怖心、逃げれない不甲斐なさに怯えることしかできない。
視界も儘ならない、溢れ出てくるのは生暖かい雫たち、決して諦めた訳じゃないのに、自分ではどうすることもできない。
助けて、お願い誰でもいいから助けて、助けて、声にならない、口をパクパク動かしているのにも気がついていない。
光が更に強さを増していく、一瞬、秒針が動くよりも早く闇に覆われた。
私はそれにすら気が付いていない…数秒が数分にも感じられる時間を恐怖心と闘っていた。
ほのかに漂う臭いにゆっくりと目を開けた、草の香り、土の臭い、平原を漂うそよ風に髪を靡かせ、大きな巨木のしたでヘタリ込んでいた。
え? どこ? ここ?……恐怖心でまだ想う様に動けない、た、助かったの? 安堵に落ち着く間も無く、太鼓と地響きで空気が張り詰めた。
ドン! ドン! ズン! ズン! 全身に伝わる太鼓と足音の様な音……。
「折角、ゲート使ってここまで来たのに意味無いじゃないですか」
ルルリナの声だ、なんだろうこの安心感は、さっきまでの気持ちが嘘のよう、私、助かったんだよね、あのむっさいおっさん達から逃げてこれたんだよね。
「ちょっとレイラさんや、動けますか?」
「ん? ……あ、ちょっと、まって……ゴメン、まだ駄目みたい」
「そうですか、困りましたね」
「なにか来てるの?」
「うんそうなんです、最悪なのが此方に向かって来てるんですよ」
「え?!」私の前には腰位の草で見えない。
「ルルリナ、で、なにが来てるの?」
「ん~あの何て言えばいいんでしょう、コボルドってお分かりになりますか?」
「コボルド? 二足歩行で歩く犬みたいなの?」
「ちょっと違いますけど、略正解ですね、ん~そうですね、地球でいうなら見た目はハイエナですね、とても獰猛で他種族を餌としか思わない種族で、非常に面倒くさいんですよ」
面倒くさいの意味が解んないけど?
「君達、何かお困りかい?」
背後からいきなり声をかけられた。
「び、びっくりしますね!」
「これは失礼いたしました、真人様、女性に背後から声を掛けるのは失礼ですよ」
「いやすまん、俺は神聖魔王と呼ばれている真人ってもんだ」
「真人様なに、おっしゃてるんですか、自称なくせに」
「な! 真実には違いないのだから良いではないか!」
「でも、まだ皆様に認めてもらってはいませんよ」
「わ、解っておるわ」
なんだろう? この人達……それより、ルルリナが意味深な笑みを浮かべているんだけど、ものすっごく嫌な予感しかしません。