痴漢に注意!
《痴漢に注意》赤字で張り紙が三、四枚張られてる、こんな昼中から痴漢なんて出るのかな?。
三階建ての木造建築だ、白塗りの壁が綺麗、もっとこう襤褸屋をイメージしてたんだけど、期待を裏切ってムッチャ綺麗な建物。
大きな観音開き扉を開けて中に入った。
吹き抜けだ、三階からシャンデリアが吊るされているが、私は小部屋の壁に何故か視線を向けていた。
「すごい、すごいよ真歩姉」
「うん、すごいね……」
「何て豪華な造りなんだ」
「本当に、高級リゾートホテルみたいね」
家族は話しながら奥に進んで行くのに、私は小部屋の壁に矢印で《此処を見ろ》書かれているのから目線が外せない。
矢印の先に三㎝位の穴が空いている、どうしてか解らないけど、見に行かないといけない? 引寄せられて行く。
あぁ駄目、一歩また一歩と穴に近付いて行く連れ、見たい、覗き込みたい。
感情が沸騰してくる、穴の手前で立ち止まり矢印を指でいやらしく撫で回すように触りながら穴えと近付けていく、はぁ、はぁ、もうたまんない。
調度穴は女性の腰当たりに空いているクノ字に曲げないと覗き込めない。
もう、ダメ、齧り付く様に覗き込んで、お尻を後ろに突きだした。
その瞬間、お尻を撫で回され、はっと我に返った、なに?どうしてこんな穴なんて覗いているの私、お尻の間隔が一気に全身を駆け巡る、鳥肌が立ち悪寒が全身を走り回る……。
「い、いやぁーーーーー!!」もう無我夢中で振り向きざまに拳を突きだした。
メリバリゴゴゴォーグシャ、ん? 何処に当たったのか分かんないけど変な音してるよ。
数秒の出来事なのに音がスゴ。
ガ、ゴン、ガラガラガッシャン、ズザザザーードッゴーーン。
多分、こっち側はラウンジぽいけど、居酒屋にしかみえないな、並べられた机や椅子が綺麗に凪ぎ払われている、あ、壁に減り込んでヒクヒクしてるよ、生きてんのかな?自業自得だから私は悪くありませんよ。
「ちょっと貴女、フードが肌蹴て、肩まで出ちゃってるじゃないですか!」
「はぁ、はぁ……」え?!。
膨大な魔力が冒険者ギルト内に充満するのに数分も掛からなかった。
反対側のギルトカウンターに並んでいた、家族も此方を見ていたがコロラとユカが何か説明しているのが見てとれる。
煩かったのが嘘のよう、静寂が辺りを包んでいる、数秒が長い、時計の秒針が時を刻むのを躊躇っているの? 錯覚してしまいそう。
そんな静寂を一人のおっさんが打ち破った。
「うひぉー、すげぇ、すげぇぞおい」
「こんなすげぇ魔力は神聖魔王に違いない、にしても偉いベッピンだな、たまんねぇぜ」
「本当だな、こんだけすげぇ魔力なんざぁ、初めてだ!」
「こりゃ間違いなく、あの噂に違わぬ神聖魔王に違いない」
「しかし、可愛いな」
「それにいい体してんぜぇ」
「神聖魔王なら、なにしても許されるんだよなぁ」
「おう、なにしてもゆるされっぞ」
「やっほぉー、一番は俺だ!」
「いや! 俺様だ!」
「ゆずれねぇな、それにしても美味そうだ!」
え?! ちょ、ちょっと、ムッサイおっさん達に囲まれてるって……い、やー! キモイ気持ち悪いすぎる。
身に迫る危険を産まれて初めての感じて、恐怖が全身を駆け巡る、こんな、こんなの嫌だ! ……初めては好きな人と、て、ちがぁう! 駄目だ、恐怖心で動かない……青ざめて硬直する私にルルリナが蹴りをいれた。
いたぁ! こんなチッコイのになんつう蹴りをブチかますんだ、しかも眉間に。
「なぁに! 固まってるんですか!」
いあ、私を正常に戻すのに十分だったみたい、動くよ、身体が動きますよ。
「ほら! 走って逃げますよ!」
髪を引っ張るルルリナに「痛いんじゃ! ぼけぇ!」暴言を覇気ながらも、心では≪ありがとう、ルルリナ≫感謝していた。
出口に向けて全力で走り始めた。
軽い、なんて軽い身体なの……。