解放された扉
勇也さんが不機嫌だ、コロラとユカが側に居るのに、あの不機嫌さはちょっと異状じゃない。
階段を降りて一階に着いた。
「勇也さん、どうかしました?」
「……台所はこっちだよ」うわぁ目が死んでる。
一階に降りた、新しいのに木の素材を生かした造りになってるなんて、超なごみます、感動のあまりしばらくぼーっと眺めていたい気分になってしまいます。
とても懐かしくて、幼い頃から知っている感じで、あぁ帰ってきたんだな~、沸々沸き上がってくる、この感覚はなに? ……私の故郷は地球の王都インベールで、間違いはない、幼い頃の記憶もあるし? ……なんだろう、この違和感、ん~わかんない……。
「なに下らない事で悩んでるんですか。
おつむの弱い貴女がいくら考えた所で無意味なのがいい加減、理解できないんですか」え? なに? なんだって、人が考えてる事が分かるのかこやつは!。
「はぁ?! そんなのなんで、わかるのさぁ
それにこの懐かしい感じはなんなんさぁ、知ってるなら教えなさいよ」
「はぁ?! なに訳の解らない事を、お喋っているのですか? 貴女は!。
無能な……似非女神がいくら悩んだところで、答なんて出るわきゃないでしょ」こいつ、適当に言いやがったな! 腹立つなぁもう!。
「似非! 似非! 煩いはね。
もしかして、もしかしなくても、私に喧嘩売ってるでしょ」
「はぁ?? 売るほどの物なんてあるんですか?」
「………」噛み合ってない気がするんだけど。
「また、黙りですか。
都合が悪いと何時もそうですね」
「まて! 長年付き合った、みたいに言わないでくれますか」
「なにいってんですか?!。
産まれて時からずーーーっと一緒に居る、私に対して酷くないですか。
私は妖精、あんたは女神じゃない、そんな事も覚えてられないくらい、お馬鹿になってしまったのですか」は? いや、まてまて、お待ちになってください……そんな筈……その時、私は気付いた、気がついてしまった、ルルリナが切っ掛けを繰れなければ、私は想いもしなかった記憶が差し替えられている事に。
幼い日の想い出がどんどん、どんどん、塗り替えられて幾様を、自転車が木製のオモチャに、車に乗っているのが馬車の内に、お風呂の入浴シーンが面白かった増えた、増殖しましたよ、まりな、ユカ、真歩、愛実、ルルリナが、大浴場に変わった瞬間、浮き出て来るなんてさぁ、あ、定着した、自覚したものは消えないのか。
施錠された部屋の扉が解放していく、私の記憶の組解きが始まった。
淡い光に包まれて身体が宙に浮かび上がり、周囲に暖かく居心地よい空間を広げて、触れてはいけないと諭すかの要に……。
「始まりましたね、これで少しは私の気持ちが御理解いただけるでしょう」誰にも聞こえない小さな声で耳元で囁いた、ルルリナだった。




