表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怠惰で勤勉な俺は旅に出る  作者: 渡鳥 陸
ドラコ皇国
95/106

傲慢と謙譲

「練習はじめて二日目でこれとか、お前らすげぇな。交代に関してはほぼ完璧だ」


 倒れ伏した俺達を見てザンはそう言った。


「ただなぁ、やっぱ殺気に弱ぇのが気になんな。嬢ちゃん、本当にあいつの娘か?」


 三割程と言った殺気を抑えつつ、ザンが尋ねる。


「私はちゃんとメリー母さんの子どもだよ……」


「まぁ、筋の良さやら、癖やら見てればそうなのは分かるんだが……あの恐怖なんて知らねぇって顔して突っ込んで来やがる化け物の娘がこんな常識人だとはどうにも繋がらなくてな。多分、父親がいいんだな」


「もちろん。お父さんは最高の人だよ!」


「そうかそうか。よし、その元気があればもう一戦できるな」


「いや、あははー……今日はもう十分だと思うんだけど……」


「なら、お前はどうだ?もう一戦」


「はしご酒を勧める感じで聞くな。もう、まともに動けん」


「歩けるだろ?」


「歩けるだけだ」


「魔法使えるんだろ?」


「確かに魔力切れは俺には関係ないが」


「ならやれるな」


「無理だ」


「なんて、冗談は置いておいて。明日以降もあるしな、今日はここまでだ。なんか、動き足りねぇし遺跡潜って何匹か狩ってくるかな」


 そう言うとザンは、大剣とは名ばかりの鉄の塊を担いで練武場の階段を上がっていった。


「レンー、立てる?」


「大丈夫だ」


 力の入らない腕に力を込めて立ち上がる。と、同時に俺のお腹が鳴った。


「よっと。お腹空いたねー」


「そうだな」


「どうする?宿に戻る?何処かでお店探す?」


「外で食べるか」


「了解」


 体についた砂を軽く払うと、練武場を出る。上がっていった先のギルドは、なぜか何時もより人が多い印象を受けた。


「あれ?なんだか人が多い?」


「あっちで人が集っているな」


「有名人が来たとか?」


 俺もメリッサも他人と比べて特段大きいというわけではないので、人だかりの中心がどうなっているか確認は出来ない。


「まぁ、多分関係無いだろう。行こうか、メリッサ」


「うん」


「おーちょっと待て」


 俺達を呼び止めたのは先に上がっていった筈のザンだった。


「どうした?遺跡に潜るんじゃなかったのか?」


「そりゃ、後回しだ。あの人だかり、お前さんの客だ」


「俺の客?どんなやつだ?何しに俺を訪ねてきた?」


「見りゃわかるさ」


 ザンと話しているうちに、人だかりがこっちに近づいてきていた。


「おう、嬢ちゃん。こっちだ」


 ザンが人だかりに手を振る。


 すると、人だかりが2つに別れ、黒く長い髪をゆったりと揺らしながら一人の女性が出てきた。


「綺麗な女性(ひと)……ってあれ、黒髪ってもしかして?」


「多分そうだろうな」


 女性が俺をじっと見つめる。


「なるほど、俺が何人も居るってのは確からしい」


「間違いないな。傲慢と謙譲の魂の俺か」


「そのとおりだ。断定できるってことは、俺が最後の一人か」


「あぁ」


「あー、ここは人がいるからな。話すんならギルドの奥の部屋でやってくれないか?」


「すまない、抜けていた。No.12(トゥエルブ)、じゃないな。もう一人の俺、着いてきてくれ」


「分かった」


「あ、ザン?ギルドにお昼ご飯の出前とか頼める?お金なら出すんだけど」


「んー、どうだろうな。ジジイに聞いてくる。一応、あんたらは優遇しとけって言われてっから、金もこっちが払うかも知れんしな」


「分かった」


 メリッサの確認が終わったことを確認して、何時もの部屋に移る。


「早速だが、どこまで教えて貰っている?」


「どこまで?まぁ……」


 もう一人の俺が話した内容は、ギルドに伝えた情報そのままだった。


「そうか、情報の抜けはないな」


「それはよかった。で?ここからどうするんだ?」


「魂をどっちかの体に集める」


「魂ってのは渡せるのか。魂を抜かれた方はどうなるんだ?」


「俺の魂のコピーを入れるか、ホムンクルスの魂が表出するかの2つだ」


「コピーになれば男の体になったりするのか?」


「確実にではないが多分無い」


「つまり、女の俺が生まれるという訳か」


「あぁ」


「……言い切るってことはそういうことなのか?」


「そうだ」


「マジか……」


 もう一人の俺が頭を抱えだす。


「レンー、出前届いたよー」


 扉を開けてお盆を持ったメリッサが入ってくる。


「まぁ、こっちが食べ終わるまで考えていてくれ」


「お、おう」


  ▽ ▽ ▽


「「御馳走様でした」」


「そうか」


「それで、決まったか?」


「二人目とかそれこそ頭抱えたくなるだろうからな、俺はいいよ」


「コピーはいらないと?」


「あぁ。いらない」


「分かった」


「で、どうするんだ?」


「俺がお前に手を当てればいい」


「分かった。大罪、美徳の説明は要るか?」


「必要ない、委譲時に確認が入る」


「なら、いいか。さっさと始めてくれ」


 もう一人の俺の胸の辺りに手を当てる。


「傲慢と謙譲を確認、統合します」

「傲慢と謙譲の委譲を開始します」


「……統合中


 ……統合中


 ……統合完了


 傲慢と謙譲、及びそれに付随する機能の復旧を確認しました

 復旧した各種効果についての説明を開始します


 傲慢の大罪、出力を上げている間、魔力への思考の伝達が向上します


 謙譲の美徳、出力を上げている間、他者への魔力の受け渡しが行えるようになります



 以上で説明を終了します


 続けて、記憶データを要求します」


「承諾、記憶データを譲渡します」


「受け取りを確認」


「以上で受け渡しを終了します」

「以上で受け渡しを終了します」


 受け渡しが終わると直ぐに、No.12は床に倒れこんだ。それを途中で受け止める。


「終わったか」


「終わったか……じゃないよ!レン!」


「どうかしたか?」


 なぜかは分からないがメリッサ頬を膨らませていた。


「いくらホムンクルスで、中身が自分だからって女の人の胸は触らないの!」


「そういえばそうか」


「それとも、触りたくて触ったの?」


「いや、そんなことはないが」


「やっぱり、胸は大きい方がいいの!?」


「メリッサ?」


「レンもそうなの!?」


「落ち着け」


「ひゃっ!?」


 軽い雷を放つ。自分の魔力も相まって静電気のような威力だろう。ただ、衝撃を与えるには十分である。


「パチッって、今パチッって……」


「落ち着いたか?」


「まぁ、それは……うん」


「心配するな、俺はメリッサの全部が好きだ」


「うん?」


「帰るか」


「え?ちょっと待って!?え?」


 真っ赤になったメリッサを置いて、12を担いで帰るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ