配置
本体との戦闘の件を聞くために、ギルドへやって来た。というか、連日ここに来ているな。
「で、どのような具合になったのか詳しく教えて貰おうか?」
「体を取り返したいという貴方の願いはよくわかります。そこで我々は貴方にその本体を任せることに致しました」
「有難い」
「ただし、条件が二つあります。まず、ザンを同行させること」
「条件?ザンを着けてくれることが条件なのか?」
「はい、その次の条件に関わりますから」
「その条件とは?」
「我が国の軍に被害が出そうになった場合はザンが本体を始末する事を承知すること」
「……なるほど。条件というよりは注意だな、これは。まぁ、当然か」
「それと、貴殿方が死んでしまった場合、此方は一切関与致しませんのでそのことも覚えていただきたい。それでも良いなら貴方にお願いいたします」
「元より頼み込んでいるのは此方だ。やらせてくれる以上この程度は仕方ないだろうな、よろしく頼む」
「では、作戦の説明に参りましょうか」
そういうと、エンは地図を一枚テーブルの上に広げた。
地図は、ドラコ皇国とフレット商業国家との間の詳細が描かれた地図で、道の途中に新しい一本の太線が引かれていた。
「この線が、今回対タリア神国用に急いで建てている砦の完成予想になります。そして、恐らくタリア神国は、この砦が建て終わるまでは攻撃して来ないでしょう」
「なぜそれが分かる」
「その根拠は3つあります。まず一つ目は、攻めこむ為の地盤の問題です」
「地盤?」
「今回の戦いで占領したフレットの国民に対して、捕虜にするなり、布教と称して洗脳するなり。とりあえず何らかの処置を行わなければなりません。それをしなければ背後から刺されかねませんから」
「なるほど」
「次に、補給の問題です。国一つ落とす程の軍を動かすのならば、しっかりとした補給線はかかせません。本国から持って来るにしろ、現地徴収するにしろ結構な時間はかかるでしょう」
「一ついいか?」
「どうぞ」
「その2つの理由では『攻めこんでくるまでには少し時間がある』ということは言えても、『砦が建て終わるまでは攻めこんでこない』という理由にはならないと思うんだが……」
「えぇ、そうですね」
「ならなぜそう言い切れる?」
「それが3つ目の理由でして、単純に、今回の彼らの作戦においてこちらの砦は必要不可欠なものだと思われるからです」
「こちらの砦が必要?どういうことだ?」
「前回のルクレス砦の戦闘を例に挙げて説明しますね。今まで、タリア神国はそのルクレス砦へ正面から突撃しては、さんざんな結果になっていました」
「あの位置に立つ砦ではな。あれを落とすには三倍どころではない大軍が必要そうだ」
「幾度かに渡る戦争で、我々四か国はどの程度兵力を持っていればタリア神国の進行を防げるのか把握したつもりでした。そしてフレットは、治安維持と魔物処理の兵士を除いて、その最低限の兵力しか保有していませんでした」
「その最低限の兵力全てがあの砦に居たという訳か」
「えぇ。そこで、本体の出番です。軍隊では決して通れないようなルートを通って砦の裏へ回り、逃げ場のない裏からの攻撃を行う。単体で軍と同等の戦力を持つ本体にしか出来ない作戦です」
「なるほど、身を守るはずの砦が檻になる訳か」
「砦があれば兵士はそこに集まりますから、逃げられる恐れもありませんしね」
「つまり、タリア神国は砦ができるまで待っている訳か」
「えぇ。先に挙げた2つの理由はこの理由を隠すためのカモフラージュというわけです。ですから、こちらもばれない程度に時間をかけてしっかりとした砦を建てる予定です」
「それで、俺はどこにいればいい?砦の裏の門とかか?」
「そうですね、そこがいいと思います。以前は、途中で何処かへ行ってしまったということで、作戦の方が優先されたということでしょうね。砦の裏であれば、作戦の範囲内になるでしょう」
「そうか、ならそうしよう」
「では、そういうことで。タリア神国が進軍を開始したら使いを出しますので。それまで、ザンとの特訓など、お好きなようになさっていてください」
「それはありがたい」
「今回はこれで終わりです、何か聞きたいことは?」
「大丈夫だ」
「それでは、ザンに送らせます。本日は、ありがとうございました」
エンは、立ち上がると深くお辞儀をした。
こうして、俺が作戦に参加することが決まった。




