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怠惰で勤勉な俺は旅に出る  作者: 渡鳥 陸
ドラコ皇国
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情報

 メリッサに告白した次の日、俺達はザンのもとを訪れていた。


「おお、来てくれたか。いやぁ、助かった」


「いったいどうした?」


「詳しく話を聞かないまま解放しちまったから上からお小言くらっちまってなぁ。すまないが知ってること全部教えてくんねぇか?」


「構わない。というより、元よりそのつもりで来た」


「本当か!?ありがてぇ。ギルドの部屋を準備してある、ついてきてくれ」


 通された先では、テーブルの周りにレンカとシャラ、そして二人の向かいに白髪に同じ色の立派な髭を蓄えたおじいさんが座っていた。


「おう、じいさん。来てくれたぜ」


「そうか。よくきたのぉ、ほれ。ここに座りなさい」


 指示された通りに、レンカ達の横に用意されていた椅子に腰かける。


「さて、お初にお目にかかります。私がギルドマスターのエンです」


 俺達が席につくと、おじいさんはそう名乗った。


「ギルドマスター……そっちのザンがトップ的なものではなかったのか?」


「いえ、こやつはギルドマスター補佐といったところで、老いぼれた私の代わりに色々な業務を代行してくれているのです」


「けっ、おめぇのどこが老いぼれだよ。タヌキじじい」


 ザンが微かに聞こえるか聞こえないかの声量でそう言ったとたん、何も無いところから石ころが現れ、ザンの頭をはたき飛ばすとどこかへ消えていってしまった。


「いって!?このっ」


「ほほほ、なんのことじゃ?」


「とぼけんな!」


「これ、客人の前じゃぞ。静かにせんかい」


「ちっ」


「お見苦しいものをすみませぬ。それで話を戻しますが、貴殿方が持っているタリア神国の情報を買いたいのです」


「買う?」


「えぇ。フレットのあのルクレスの要塞が落ちたとあって、上は今大慌てしております。フレットとの間にはろくな関所や砦等を作っていなかったこともあって、タリア神国に対応する手がかりは少しでも必要なのです」


「貴重な情報だから買い取る、と?」


「えぇ」


「なるほど、理解した」


「分かっていただけたところで、まず昨日の情報の分の金貨12枚です」


 エンは、服の袖口から袋を一つ取り出すと、テーブルに置いた。


 一番近かつたレンカが袋を受け取り、一枚ずつ机に出していく。


「確かに12枚だな」


 そう言うと、レンカは金貨を袋に戻し、その袋をこちらに渡してきた。


「いいのか?」


「どうしてだ?元々お前達の情報だろ、俺達が受けとっていい分はない筈だ?」


「それもそうだが」


「恵まれなくても十分生きていけるさ」


「分かった。しかし、そちらもいいのか?既に07を見逃してもらうという対価を貰っていたつもりだったのだが」


「えぇ、構いませぬ。情報を得るための投資ですので」


「なるほど」


「それでは確認といきましょう。まず、昨日の情報から。タリア神国はトビカゼレンという人物を異世界から召喚、その人物の魂を抜き取り、残った体を兵器として利用していると。ここまでよいか?」


「あぁ。問題ない」


「そして魂の方は7つに分けられ、ホムンクルスの体に閉じ込められた上で各地の大遺跡に封印されていたと。そして、貴殿方がその内の二人だと」


「そうだ」


「そして、レンさんの方はルクレスの砦前で山脈を一人で越えてきた本体と一度戦闘、相手が逃走。状況から見てその本体が砦陥落の要因とみられると」


「多分な」


「分かりました。ではその本体の強さを詳しく教えてくれませぬか?」


「分かった。俺が戦った時の装備は、真っ白のローブに直剣の二刀流、基本的には同時に振り回すのみで剣術はそれほどでもないが、単純に速いうえに恐ろしい程の持久力でスピードが落ちない。魔法を使おうとすると、体内の魔力を放出して周囲とこちらの魔力を吹き飛ばして妨害してくる」


「なるほど……」


「斬撃はザンの一撃位のスピードだったな。魔力と持久力に至っては底が分からん」


「俺位の剣かぁ、一度やってみてぇな!」


「剣技は大した腕じゃないと言ったはずだ、絶対ザンの求めるレベルじゃないぞ」


「ほれ、だまっておれ」


 また石がどこからともなく現れるとザンを叩いて消えていった。


「本体に関してはそんなところだ」


「貴重な情報ありがとうございます。他にも何かありますかな?」


「後は、魔力の抜ける香だな」


「はい?魔力の抜ける香、ですか?」


「あぁ、無色透明で甘い香りのする香のようなものだ。嗅ぐと肺で体内の魔力と勝手に結び付き、奪っていってしまうと思われる」


「なんだぁ?そのおぞましい兵器は。嗅いだ時点でほぼアウトじゃねぇか」


「すみませんが、それを知った経緯を教えていただけませんか?」


「もちろんだ。

 それは、フレットから逃げてくる際にタリア神国の兵士と戦闘になり、その時使われたもの。相手はマスクで口を覆っていたため、マスク等で口を覆えば影響を少なくできる可能性がある」


「可能性とは……では、貴殿方はどう対処なさったんですか?」


「すまない、そもそも俺は魔力で動いていなくてな。魔力が空になったとしても生きていられるんだ。だから、剣で何とかした」


「なるほど、そうでしたか。他には?」


「もしかしたら、モンスターを使役してくるかもしれないな」


「テイムですか。まぁ、それは砦を建てればなんとかなりますね」


「知ってるのはこれくらいだ」


「ありがとうございます、そちらのお二人はその他に追加の情報などは?」


「いや、無い」


「そうですか、貴重な情報をありがとうございました。情報が3つとして金貨36枚、それに加えてとても有益な情報でしたのでさらに16枚でいかがでしょう」


 おじいちゃんは、袋を四袋と金貨四枚を取り出し、テーブルの上へと乗せた。


 レンカは、また受けとると再度数えていく。


「一つ、いいか」


「えぇ」


「タリア神国はその内攻めてくる筈だろう?その時の本体を止める役割をやらせてくれないか?」


「ふむ……それは少し考えさせて頂きたい」


「そうか」


「なに、悪いようにはせぬ。あぁ、それと、我が国にあるもう一つの大遺跡に封印されているであろうホムンクルスをギルドで探しておる、数日すれば見つかると思うぞ」


「それは、ありがとうございます」


「なに、情報の礼の一つじゃ、気にするな。それじゃあ今日はこれでおしまいかの。上と話しておくで、また明日来てくれんか?」


「分かった」


「ほれ、ザン。お客様を案内して差し上げい」


「お、おお。こっちだぜ」


 レンカから金貨の入った袋を受け取り、ザンに案内されてギルドを出る。


 真昼の青い空に、なんとなく旅の終わりの気配を感じていた。

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