止められなくて
「それで、メリッサはなんで部屋に来たんだ?」
メリッサをなんとか落ち着かせて、部屋のソファーに座らせつつそう尋ねてみた。
「なんでって……えっと、レンカちゃん……くん?」
「多分、ちゃんでいいと思うぞ」
「レンカちゃんとは一時的に敵対もしたし、何かあればいけないと思って様子を見にきただけだよ」
「そうか」
「それで、なんの話をしてたの?」
「色欲と純潔、それに嫉妬と忍耐を渡す代わりに、集めた魂と記憶のコピーをくれっていう話だった」
「あれ?魂を渡したくないから敵対したんじゃなかったっけ?」
「いや、『消えたくない』が理由で、魂を渡してしまえば消えてしまう可能性があったから拒まれたんだ。消えることはないという07の話を聞いたとたんに簡単に渡してくれたな」
「へぇ。でもなんでそうだと分かったら簡単に渡してくれたんだろう?自分の物だった筈の魂を、いくらもう一人の自分だったとしてもさ」
「なんでも、あのシャラって男に惚れたらしい。だから、男だった自分の魂を手離したかったと言っていた」
「へぇ……え?えぇ!?本当に!?」
「本当のことだぜ、お嬢ちゃん」
ベッドの上から07が口を挟んできた。
「本当なんだ……」
メリッサはそう呟きながら、なんだか深刻そうな顔をした。
「メリッサ?」
「何?レン」
「いや、とくになにということはないんだが……」
どう聞けばいいか分からず、ただただ沈黙だけが流れる。
「あー、お二人さん方。俺のことはいいから、少し遊びに行ってきたらどうだ?」
「遊びに?」
「遊びにか?」
「あぁ、そんで夕飯食ってこい」
「だそうだが、どうするメリッサ」
「えっと、じゃあ行こうか」
ということで二人で出かけることになってしまった。
しかし、急に出てきた為にどこに行けばいいか分からない。
「とりあえず、歩くか」
「うん」
外は昼過ぎの柔らかい光が降っていた。
それでも、大通りは人の活気が渦巻いている。
「前のように手を繋ぐか……」
そう言ってから、その行為が普通持っている意味を思い出した。
「えっと……じゃあ、お願いします」
前のように、おずおずとメリッサが手を差し出してくる。
「あ、あぁ」
握った手は柔らかく、心地よい暖かさを持っていた。
それよりも、自分の体が物凄く熱くなっている。
そんな状態での時の流れは速く。小物屋を覗いたり、武器屋を冷やかしている内に空が赤く染まってきていた。
店を出てまた暫く歩いていると、メリッサが何かを見つけたのか立ち止まった。
その視線の先のガラスの奥にふわふわとしたベージュのワンピースがあった。
「あぁ、こうなるんだったら、あんな格好をしてきたかったなぁ」
そう呟いているメリッサの現在の格好は、探索時用のしっかりとした麻の服である。
「確かにあのワンピースは似合うだろうな。でも、その格好のメリッサも俺は好きだが」
「す、好きっ!?」
言ってから、物凄いことを口走ったと理解する。
「あー、えっと」
何か言おうとしたが言葉がでない。
「か、格好がだよね。はは」
そうこうしているうちに、メリッサは自分で納得してしまった。
「メリッサ、すまない。走るぞ」
「えっ?」
いてもたってもいられなかった。
メリッサを連れて走り回る。やがて、人気のない小さな噴水の広場にたどり着いた。
「えっと、どうしたのレン?」
「メリッサ、聞いて欲しい」
「え、うん」
「さっき、色欲と純潔が戻ってきた」
「レンカちゃんから貰ったんだよね」
「それで、それが司っていた機能が戻った」
「うん」
「さっき言っていた好きは、服のことだけじゃない」
「」
「君が好きだ。メリッサ」
「……私も。私もレンのことが好きです」
その返事が嬉しくて、強くメリッサを抱き締めていた。




