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怠惰で勤勉な俺は旅に出る  作者: 渡鳥 陸
ドラコ皇国
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自覚

「色欲と純潔、嫉妬と忍耐を確認、統合します」

「色欲と純潔、嫉妬と忍耐の委譲を開始します」


 俺とレンカの両方から言葉が漏れる。


「……統合中


 ……統合中


 ……統合完了


 色欲と純潔、及びそれに付随する機能の復旧を確認しました

 復旧した各種効果についての説明を開始します


 嫉妬の大罪、出力を上げている間、相手の能力値をステータスとてして認識することができます


 色欲の大罪、出力を上げている間、魅力性能が増幅します


 忍耐の美徳、出力を上げている間、体の強度を増幅させます


 純潔の美徳、出力を上げている間、魅力耐性が増幅します



 以上で説明を終了します」


「魂の対価として魂のコピーを要求します」


「承諾、魂のコピーを譲渡します」


「受け取りを確認。適用します……適用完了」


「次いで記憶データを要求します」


「承諾、記憶データを譲渡します……副管理者(サブマスター)によって一部記憶データの譲渡が却下されました」


「『練華』時の記憶データと確認。強制的な回収は行いません」


「対価として転移前時点までの記憶データのコピーを要求します」


「承諾、記憶データのコピーを譲渡します」


「受け取りを確認」


「以上で受け渡しを終了します」

「以上で受け渡しを終了します」


「お、終わったか」


 07がベッドの上であぐらをかきつつそう呟いた。


「あぁ、こっちはな。練の方はここから(、、、、)なんだがな」


「始まる前にも頑張れって言ってたな。いったい、なんだったんだ、ありゃ」


「見ていれば分かる」


 話し始める二人の会話を横目に俺の体は以前動かず、それはまだシステムが続いているということを表していた。


「復旧した機能を、機能していない記憶へ適用します」


 その言葉とともに、走馬灯のようにこちらに来た記憶が次々と掘り返され、体中を駆け巡る。それはまるで、煮えたぎったお湯が血管を通って四肢の全てを走り回るようで、一瞬にして体温が上がっていくことを知覚していく。


「おいおい、大丈夫か?踞っちまったが」


「大丈夫だ、多分な」


 二人のやりとりで、自分がいつの間にか踞ってしまっていたのだと気づいた。


 縮こまった所で体で暴れる熱は変わらない。


 メリッサとの出会いが、二人で何とかして遺跡を出た時のことが、フォレストウルフの異常種に会った時のことが、二人での特訓が、遺跡に連れていってもらうための勝負が、記憶の再生から目を覚ました俺をメリッサが抱き締めた時のことが、花火と出会った時のことが、二人で同じベッドに入った時のことが、フロアマスター戦で無茶した俺を心配してメリッサが涙を流した時のことが、メリッサを置いていった俺に対してメリッサが怒った時のことが、メリッサとともにメリッサの故郷へ帰った時のことが、メリッサがプレゼントの首飾りを嬉々として着けてくれた時のことが、メリッサが俺を抱きしめて止めてくれた時のことが、本体から俺を守る為に立ち塞がってくれた時のことが、メリッサの為に人を殺した俺をメリッサが思ってくれた時のことが、俺が戦え無くなって安堵したとメリッサが言ってくれた時のことが。


 様々な感情が記憶の中に付け足されていく。


 初めて会った時の記憶は恥ずかしくて、

 異常種から助けてくれた時のメリッサは格好よくて、

 やりすぎで花火に怖がられていたメリッサは面白くて、

 同じベッドに入った時の記憶はドキドキして、

 メリッサが心配してくれるのは嬉しくて、

 メリッサがプレゼントを着けて喜ぶ姿が可愛らしくて、


 どんな時のメリッサも愛しくて。

 いつの間にか、メリッサを好きになっていたんだとそう理解するのに時間はかからなかった。


「適用が完了しました」


 その言葉とともに、体の自由が戻る。


「ふふ、どうだったんだ?パートナーとの裸の出会いは」


「恥ずかしかったに決まっているだろう。こうなることを知っていて黙っていたな?」


「いや?頑張れとは言ったろ?」


「分かるか、そんなもの」


「覚悟しててもしなくても、味わうものは変わりないだろうに。それで魂を引き取らないなんて言われても困るしな」


「ちっ」


「ははは」


 レンカの笑い声に混じって、ドアをノックする音が響いた。

 扉を開けると、メリッサが立っていた。


「レンー、そろそろ話終わった?」


「あ、あぁ」


 さっきまでの記憶のせいで、顔を見ることができない。顔が熱くなっているのが分かる。


「レン、大丈夫!?顔赤いよ!?熱があるんじゃ!」


「大丈夫、問題ない」


 俺とメリッサのやりとりを聞いていた、レンカの笑い声が部屋から聞こえてくる。


「嘘だ!顔真っ赤だもん!ちょっと熱測らせて!」


「いい!大丈夫だ!話も終わってない!ちょっと待っててくれ!」


「話は終わったろ、俺は帰るぞ。ふふ」


 確実に嫌がらせとしか思えないタイミングでレンカが部屋から出ていく。


「おい!」


「レン!何か隠してない!?」


「ははは!」


 レンカの笑い声が廊下から聞こえてきた。


「大丈夫だ、大丈夫だから!」


 そこからメリッサの誤解を解くのに結構な時間かかった。

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