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怠惰で勤勉な俺は旅に出る  作者: 渡鳥 陸
ドラコ皇国
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発現

 〈side:練〉


 メリッサ達が出ていってから暫くが経った。しかし、07はいまだ目を覚ましていない。


 なにも出来ない辛さが身を刺す。


 俺は、このままでいいのだろうか。

 このまま、なにもしないままでいて、もしメリッサが傷ついて帰って来たら、俺は自らを許せるのだろうか。


「許せる訳ないよな……」


 傍らに置いた剣を掴む。手はそれを拒むかのように震え始めた。


「五月蝿い、黙って従え」


 左手で右手首を押さえつけながら壁に背を預けてゆっくりと立ち上がる。

 なんとか立ち上がったはいいものの、両足が鉛を溶かし込まれたかのように重く動かない。


「今更、恐怖心が、邪魔をするな!」


 重い重い一歩を強引に踏み出したその瞬間。


「嫉妬と忍耐が発現(、、)しました。それに付随する機能の復旧を開始します」


 という自分の声が漏れたのだった。


  ▽ ▽ ▽


 〈side:メリッサ〉


 フレイブレスライオンは最初から起きたままで、私達を見つけた瞬間に大きく吼えた。


 私と花火は、フレイブレスライオンの前で左右に回り込むように分かれる。しかし、フレイブレスライオンは私達を一瞥しただけで直ぐにレンカに向き直る。


「くるよ、レンカ!」


「分かっている」


 フレイブレスライオンは踏み潰そうとするかのように大きく飛びかかる。


 それは、レンカちゃんの予想そのままの行動だった。


「氷よ『氷雨』」


 細かで鋭い氷の雨がフレイブレスライオンの顔へと殺到する。


「ぐるっあ!?」


 カウンター気味に撃ち落とされたフレイブレスライオンは、右前足で顔を覆いつつ、残った左前足でレンカを狙って引っ掻いた。


 ただ、その爪はがつりという音とともにシャラが盾で受け止める。


「はっ」


 シャラは、軽く息を吐きつつ止めた手を切りつける。


「たぁ!」


 私は、フレイブレスライオンの左脇腹側からお腹を蹴りあげる。

 フレイブレスライオンの体が軽く浮き上がるも、体勢は崩すことなく着地した。


「がる!」


 花火は顔を覆っている右前足に噛みつくと、そのまま電気を流し始める。


「ぐるるる!?」


 流れる電気はフレイブレスライオンの体の操作を乱し、顔を守っていた前足が外れた瞬間から、またレンカの氷魔法が殺到していく。


「がぁ!」


 フレイブレスライオンは強引に体を動かすと、花火を振り払うと、薙ぎ払うように炎を吐いた。


 その炎は、レンカの無詠唱の水魔法で誰一人に届く事なく相殺された。


 もう一度炎を吐こうと息を吸い込んでいるのが分かったので、腹を蹴りあげて中断させる。


「ぐぅ……がぁ!!」


 すると、苛ついたような声をあげるとともに、フレイブレスライオンが全身に炎を纏った。


「えぇっ!?火を吐くだけじゃ無かったの!?」


 フレイブレスライオンは、近くにいた私に向けてタックルを放つ。左前足の傷や腹への二回の攻撃の為か動きは鈍く、避けることはできた。しかし、


「熱っつい!?」


 掠めただけで熱気がやってくる、肌が焼かれる。


 フレイブレスライオンは、流れのままレンカ達に飛びかかる。


 二人は左右に飛び分かれながらレンカが、水魔法で火を消そうと試みてみたようだったが、焼け石に水だった。


「これは……どうするか。もっと燃やしてみるか?」


「それは……こっちがきつくなりそうだね」


 レンカの提案をシャラが否定する。


「でも、このままだと皆なにも出来ないよ!?」


 再度の体当たりを避けつつ私は声をだす。


「がう!(止まれ!)」


 花火の雷が、フレイブレスライオンの動きを妨害するかのように撒き散らされる。それにより、花火とフレイブレスライオンが睨み合って場が膠着する。


「近寄れないなぁ……長物があれば対応できると思うんだけど」


「長物はないな、土魔法なら作れるか?」


「ぐるるるる」

「がう!」


 二匹の吼え合う音が響く。


「なんにしても、花火君が時間を稼いでくれてる間に対応策を考えないと」


 花火が雷を放つ音とフレイブレスライオンが火を吹き合う音に混じって、


「走れ『雷』」


 という声が響いた。


 私達の後ろから雷が迸り、フレイブレスライオンをうつ。


「レン!」


 気づけば、私の口からは彼の名が漏れだしていた。


「長物が必要そうだな……メリッサ、これを」


 そう言って、巾着から一本の武器を取り出した。

 それは、持ち手が焦げ茶色の薙刀。


「これは?」


「かまさそちゃんズサイズだ。刃の部分を交換することでさそちゃん薙刀になるらしい」


 なんともいえない武器の名前が場の空気を緩めてくれる。


「それで、すまないがさすがに正面で戦える程には立ち直れてはいない。後方からメリッサを助ける位しか出来ない」


「うん……それで十分だよ」


 その形が、私にとっては一番嬉しい。


「さぁ、行こうか」


 この戦いを終わらせに。

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