安堵
<side:メリッサ>
「ねぇ、レンカ。良かったの?」
扉から出たとたん、シャラがそう言った。
「良かったとは?」
「だって、レンカに攻撃が集中するでしょ、これ。気づかなかったとは言わせないよ?」
シャラは、真剣な面持ちでレンカを見つめつつ、問い詰める。
「あぁ、そのことか。なら大丈夫だろ」
「理由は?」
「『いつでも君を守る』って言って貰ったからな。信じてるぞ、パートナー」
「えぇ!?えっと、それは、あの、えっと」
カウンターを食らったように、シャラが慌てだした。それを見てレンカは悪戯を仕掛けようとする少女のような満面の笑顔をする。
「おや、言った本人が忘れてたのか?私は君にこの言葉を貰ったから、危ない橋でも安心して渡れていたのに……」
「覚えてるよ!?でもさ……って、あれ?レンカって僕がそれ言う前から危ない橋渡って無かった?」
「ふふっ、正解。さて、シャラをからかうのはここまでにしようか」
「ちょっとお!?」
「ははっ」
そんなやり取りを見ていたら、自然と笑いが溢れていた。
「……二人を置いてきたことを気に病んで足を引っ張られるのもあれかと思って、気をそらす為にふざけてみたんだが、必要無かったか?」
「えっと、どういうこと?」
必要無かった、とはどういうことなのだろうか。
「自分で気づいてなかったのか?さっき笑う前から落ち着いた……そうだな、正確に表すなら『安堵した』とでもいうべき顔をしてたんだが」
そのレンカの言葉が、すとんと今の自分の心の内に入り込んだ。
「そうか、今私は安堵してるんだ」
レンが戦えなくなった事に安堵してるんだ。
そう、感覚で理解してから、なぜ安堵しているかの理由が川のように流れ出てくる。
まず最初はリビングアーマーの時だった。彼は私の為に自分の身を守る唯一の盾を投げて、自らの身を囮に使った。
次はレッドドラグーンの時、私を守るために自ら炎の中に突っ込んでいった。
ブラックマンティスの時も、タリア神国の追っ手の時も、レンは自分を省みずに戦っていた。
いつ死んでもおかしくは無かった。
きっと、戦えてしまうからレンは無理をする。
だから、私は、レンが戦えなくなった事に、安堵したのだ。
「メリッサ、大丈夫か?」
「大丈夫ですか?」
「ワウ?(大丈夫?)」
「うん、大丈夫。ありがとうレンカ、お陰で今の自分の気持ちを整理できたよ」
「……そうか」
深い詮索のない、ただの容認が心地よく感じられる。
「なら、一区切り着いたことにしてフレイブレスライオンの作戦会議をはじめてもいいか?」
その上、話を切り換えてくれた。
「うん」
「そうだね」
「じゃあはじめよう。まず、あいつに氷魔法が効かなかった事からだ」
「あれは多分、火魔法を体内で使ったか、火魔法の応用で熱を発生させて体温を高温にしたんだと思うんだけど」
「つまり、体がそれほどの高温になっても問題がないということだな。となるとやはり火魔法は効かないか」
「いや、でも限界は分からないよね。自分で生み出す熱の分には耐えられるかも知れないけど、その上で火魔法を食らったらキャパオーバーするかも知れないよ?」
「そうでなくても、火を吐いたり出来なくなる……か?」
「試してみる価値はあるかもね」
「でも、炎で丸焼きにしてる間は私や花火が攻撃出来なくなるよ」
「あぁ……そうか。二人も余らせておくのは勿体ないな」
「でも、炎を撒き散らして手がつけられなくなりそうな時の対策案としては良さそうだね」
「なら、その時はそうしよう」
そんな風に話し合いつつ、フレイブレスライオンのいる広場前まで戻って来た。
レンの為にも、貴方は私が倒す。
「準備はいいか?じゃあ行こう」
レンカの号令で、私達はフレイブレスライオンへと向かって行った。




