資格
「レン!ここも宿屋みたい!」
人ごみに揉まれながら探した宿屋はどこも満員で、なんとか泊まれるところを探そうと路地裏なども歩いていたところ、メリッサが一つの宿を、見つけた。
「えっと、名前は……あれ?『止まり木亭』ってどこかで……」
「セカンダ遺跡のあった町で俺たちが泊まった宿の名前だ」
「あ、そっか……って、え?ここドラコ皇国だよね!?なんでこんなところに!?」
「メリッサが知らなかっただけで実は有名な宿屋だったのかもしれないな」
「うー、そうなのかなぁ」
「それより、空き部屋があるか早く確認しないか?」
「うん」
扉を押し開けて中に入ると
「いらっしゃいませ」
と可愛らしい声がかかった。
「え?」
「は?」
さすがに、これには俺もメリッサも事態を飲み込めずに固まった。なぜなら、カウンターに座っていたのは、前回カウンターで店番をしていた少女だったから。
「おや?お客様方は、以前フリットの町の方にご宿泊なさいませんでしたか?」
「あ、ああ、そうだ。あー、なぜドラコ皇国にこの宿が?」
「ここは止まり木亭のドラコ皇国店で、家の叔母さんが経営している系列店です」
「なるほど。君はなんでここにいるんだ?」
「今回は遊びに来ました。ただ、フレット商業国家からの避難民で治安があまりよくなくなってるので、外で遊ぶことができず、結果ここでこうしてお店の手伝いをしてるのです」
「なるほど」
「理解いただけたようで何よりです、それでお客様はお部屋をお探しで?」
「あぁ、大通りの宿は全部満室だったからな」
「かしこまりました、ではダブルベッドのお部屋を一室ご用意いたします」
少女の言葉にメリッサがむせた。
「な、なんでそうなるの!二部屋お願いします!」
「ふふ、冗談ですよ。今回は空いてますので二部屋ご案内できます」
「じゃあ二部屋をまず三日分」
「かしこまりました、前金で銀貨2枚です。銀貨一枚はチェックアウト時にお返しします。……あ、コルド王国の貨幣でもいいですよ」
「それは助かる、ここの貨幣は持っていなかったんだ」
巾着から銀貨2枚を取り出して少女に渡す。
「確かに、では305号室と306号室になります。花火君は以前の通り中庭にお願いします」
少女から305号室と306号室の鍵を受け取り、探索に使わない荷物だけ置いてすぐにロビーに集合した。
「おや、もう出発ですか」
「あぁ、下調べくらいはしておきたくてな」
少女に聞かれたので、鍵を返しつつ答える。
「お客様方はたしか七大遺跡に挑戦していらっしゃいましたよね、でしたらここから右に行って大通りに出ていただき、右に進んだ先にある堅牢な石造りの施設が一番近い遺跡への出入りを管理する施設ですよ」
「なるほど、ありがとう」
「いえいえ」
「ということで、そこに行こうと思うんだが、メリッサはここで休んでいるか?」
「いや、行く。あの娘にまた襲われるかもしれないでしょ、警戒はしておかないと」
「そうか」
「ワウ?(花火はー?)」
「花火も一緒に行くぞ。何か事前に申請しておくこともあるかもしれないしな」
ということで、三人で件の施設を目指すことになった。
途中の道は、さすがにここまで避難民は来ていないのか、比較的空いていた。
しばらく歩いていたところ、少女の言った通り、石造りで二階建ての堅牢な建物と、その建物の端から伸びる長い壁が見えてきた。
「この国は遺跡を壁で囲んでいるのか」
「出入りはあの建物だけ、魔物が出てきてもそこで閉じ込めて処理する感じかな」
「ワウ(おっきーねぇ)」
「そうだな」
一通り眺めた後で、建物の中へ入る。建物の中は、沢山のカウンターとそれに並ぶ人でごった返していた。その中で一列、「初めて来られた方はこちらにお並び下さい」と書かれた窓口へ向かう。
「ようこそ、初めての方ですね。ご依頼ですか?それとも、遺跡への挑戦ですか?」
「遺跡への挑戦で」
「なるほど、分かりました。では、冒険者の方への説明をさせていただきます。まず始めに、大変申し訳ないのですが今のあなた方に遺跡へ挑戦する資格はございません」
「え?それってどういうこと?」
「我が国のギルドのルールとして、ギルドランクというものが存在します。これは、その冒険者がいかに戦えるか、依頼をこなせるか、ということを表すものです。ランク5から始まるこれは、遺跡への資格にもなっていまして、ランクが2以上の方でないと大遺跡へは挑戦できないのです」
「つまり、依頼をこなしてランクを上げなければ遺跡に挑戦できないと?」
「はい」
「すぐに挑めるような方法はないのか?」
「二つほど、いずれもあなた方次第ですが」
「その方法は?」
「まず一つはコルド王国のギルドカードの提示です、これによって、最初の時点でブロンズならランク4、シルバーならランク3、ゴールドならランク2への昇格が認められます」
「コルド王国のギルドカードか……」
「私はシルバーだけど……レンはアイアンだったよね」
「でしたらすぐにというわけにはいかないですね。地道にランクアップしていただく必要があります」
「もう一つの方法ってのはなんなんだ?」
「もう一つは、試練みたいなものですよ」
「試練?」
「それはですね」
「それは俺と一戦やって強さを示すことだ」
職員の声を遮り、背後から急に声が聞こえた。
振り向くとそこには、とても大きく、がっしりとした男が背中に長剣を担いで立っていた。




